One Frame Theater Vol.14 『流浪の月』心震える…愛の物語

流浪の月

2020年本屋大賞を受賞した凪良ゆうの傑作小説を
『悪人』『怒り』の李相日監督が映画化した『流浪の月』

みなさんお久しぶりです!気づけば、もう5月初夏。そこで、しばらく休止していた「One Frame Theater」も再始動。14回目の作品は、広瀬すずちゃんと松坂桃李くん主演の話題の映画『流浪の月』。映画を観終わったあと、しばらく立ち上がれない深い余韻とショックに襲われ、いまもまだ、ふと夜空を見上げては「ふたりは元気かな?」とぼんやり思うのです。

「家に帰りたくない…」事情を抱えた10歳の少女、更紗は、公園でひとり本を読んでいます。雨が降り始めても、帰る気持ちになれない彼女に傘をさしかけたのは、19歳の大学生、文でした。「うち、来る?」そんな一言から始まった、ふたりの共同生活。文が「ひくほど自由」と表現する更紗は、夕食にアイスクリームを食べ、目玉焼きにはたっぷりケチャップ、ピザを食べて寝ころびながらアニメをみる、子ども目線ではパラダイスのような世界を文の部屋で満喫します。その姿に、文も救われていきます。ところが、そんな時間は長くは続かず、夏の終わりに突然終わりを迎えます。

当然、世間から見たふたりは「少女誘拐・監禁事件」の被害女児と加害者

更紗がどんなに「違う」と訴えたところで

更紗は事件の被害女児として、文は世間を大いに騒がせた加害者として…その後の人生を過ごすことになります。

そして、15年後…偶然の再会を遂げるふたり…。許されないふたりの物語がスクリーンに映し出されます。

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10歳の更紗を演じるのは、白鳥玉季ちゃん。ドラマ「テセウスの船」や映画『ステップ』に出演し、『極主夫道 ザ・シネマ』の公開が控える俳優で、文と暮らすことで、叔母の家から解放され自由を取り戻す更紗を、のびのびと演じています。その時間は、映像もポップで柔らかく、ひだまりのような温かさを感じます。そして、劇中に登場する、エドガー・アラン・ポーの「ポー詩集」の一篇が、「他の子とは違う」ふたりが置かれている立場や未来を暗示しているのも印象的です。

そして成長した更紗を体当たりで演じきったのが、広瀬すずちゃん。私たちには、想像できないような時間をたくさん過ごしてきただろう日々を感じさせる繊細な演技で、運命に立ち向かっていきます。それを受け止める文を演じるのは、松坂桃李くん。徹底した身体作りでビジュアルを作りこみ、難しい役どころに光と影を交錯させながら、運命から目を背けず生きていこうとする文を体現しています。

更紗と文。ふたりを待ち受けるのは、世間という冷たい風や視線です。更紗には、亮という横浜流星さん演じる恋人がいます。一流企業に勤める彼は、一見とても素敵なナイスガイに見えますが、その内にあるのは脆さと危うさです。文にも多部未華子さん演じる看護師の恋人がいます。15年前の事件が、白昼にさらされた時。その関係が、どう変化していくのかも、見どころです。

さて、この作品を「心震える…愛の物語」と書きました。

純愛、求める愛、ひとりよがりな愛、慈愛、愛情、母親の愛、愛にはいろいろなカタチがありますが、このふたりにとって愛は、もっと大きなものに思えます。一緒に居ることで、お互い緊張感から解きほぐされ、自分らしくいられるようにも見えます。だから、文から引き離された更紗は、感情を一生懸命閉じ込めているのかもしれません。でも、文に再会して、少しずつだけど、更紗らしさが戻ってくる。最後、彼女が見せる愛のカタチは、少しだけ希望を感じさせます。これから先、たくさん大変なことがあって、辛い立場に立たされるかもしれないけど、それでも、ふたりには幸せになって欲しい。そんなことを思いながら映画館を後にする映画でした。

だから、ぜひ映画館で、大きなスクリーンで繊細に揺れ動く、更紗と文の物語を感じて欲しいです。

『流浪の月』は5月13日(金)よりミッドランドスクエアシネマほかにて公開中!

企画・構成 にしおあおい イラスト のらくら

作品紹介

帰れない事情を抱えた少女・更紗(さらさ)と、彼女を家に招き入れた孤独な大学生・文(ふみ)。居場所を見つけた幸せを噛みしめたその夏の終わり、文は「誘拐犯」、更紗は「被害女児」となった。15年後。偶然の再会を遂げたふたり。それぞれの隣には現在の恋人、亮と谷がいた。

『流浪の月』
監督・脚本:李 相日 原作:凪良ゆう
撮影監督:ホン・ギョンピョ
音楽:原 摩利彦
出演:広瀬すず 松坂桃李 
横浜流星 多部未華子 
趣里 三浦貴大 白鳥玉季 増田光桜
内田也哉子/柄本明
配給:ギャガ 上映時間:150分
公式サイト https://gaga.ne.jp/rurounotsuki/
公式Twitter @rurounotsuki
©2022「流浪の月」製作委員会
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