興行収入37億円を突破し、大ヒット上映中の映画『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』公開一カ月たった今なお、10代を中心に戦争を知らない世代の共感を呼んでいます。Vol.19となる「One Frame Theater」では、先に行われた原作者・汐見夏衛さんによるティーチインを取材。彼女の口から語られる作品への反響や、観客からの質問を通して、共感ポイントに注目。その魅力に迫ります。
本作の主人公は
親にも学校にも不満を抱え
やり場のない苛立ちを抱える
女子高校生の百合
母親とケンカし
家を飛び出した彼女は
防空壕跡で一夜を過ごします。
見たことのない景色
スマホも通じない世界
困惑する百合ですが
そこに通う
彰と同じ隊の仲間たちと交流する中で
いつしか彰と心を通わせるように
そんな彰には特攻隊員としての運命が…
- いまの時代に生まれ変わったら、彰には自分の気持ちに正直に生きて欲しい…
- 彰の目線から見た世界をイメージし追記した原作のエピローグ
- 「聞き流していた戦争の話、彰たちのことを思い出し…」という感想に
- 福山雅治さんと対談した原作者が感動した言葉とは?
- 【動画】名古屋ティーチイン舞台挨拶
1月27日名古屋で行われたティーチインに登壇した汐見先生は「もし、いまの時代に彰が生まれ変わったら、どんな風に生きて欲しい?」という観客の質問に「いまは、やりたいことをやれる、言いたいことを言える、自分が一緒にいたい人と一緒にいられる、彰が一番欲しかったものが揃っている世界で、生まれ変わったとしたら、自分の気持ちに正直に生きて欲しい」と答えると、
「でも、きっと彰は現代にいても、周りに気を使っていろいろ我慢しちゃう性格だと思うので、そんな時は百合に『そんなの気にしなくていいよ』『好きなことやればいいよ』って励ましてもらって、ふたりがずっと一緒にいられる限り、一緒にいられる未来があればいいなと思います」と言葉を続けました。
「空爆の映像を見て、そこに暮らす市民のことを考えるようになった」という感想も
映画では、いくつか原作と異なる設定で彰と百合の物語が描かれているのですが、実は原作には彰のその後の物語がエピローグとして描かれています。このエピローグ、最初にネット小説で書いた段階では入っておらず、書籍化する際に加えたのだそう「書籍化する際に、彰の目線から見た世界をイメージしてエピローグに追加しました。書くならこの話だと思って…この話初めてしたかもしれない」と汐見先生は振り返ります。
映画では、福山雅治さんの主題歌「想望」に彰の気持ちがのせられ、物語を深い余韻で包みます。筆者もあらためて映画館で観て、深い余韻に包まれました。
そんな作品を書くきっかけとなったのは、汐見先生自身の教師時代の体験があります。
▶ 原作者が語る『あの花~』誕生秘話 ← 執筆のきっかけなどお話されています。
戦争に興味のなかった生徒たちに向けて書いた彰と百合の物語は、TikTokで話題となり映画化、そして1か月以上経ったいまも若者を中心に幅広い世代に受け入れられ大ヒット。その反響に驚きつつも、感想の一部を紹介してくれました。
小説を読んでくれた方々の感想
「今まで授業で聞き流していた戦争の話を、彰たちのことを思い出しながら、聞けるようになった」
「知覧に修学旅行で行って、平和会館で見たことを思い出した」
「修学旅行で(知覧に)行く予定になってて、その前に読んで良かったです」
汐見先生「そんな感想をいただくことが本当に多くて…
もちろん映画になってからも同じような感想をいただくんですけど、最近は、海外で起きている戦争のニュースが話題になることも多いので、『ニュースで空爆の映像を見た時に、空爆されている市民の方々はどんな気持ちなんだろう、実際はどんな状況なんだろうと考えるようになった』という声をいただくようになりました。物語を通して、戦争や戦争で戦ってる人たちに対する感じ方の変化があるといいなと思いながら書いていたので、そういう感想を聞けて嬉しいです」と話しました。
福山雅治さんと対談「エンタメの仕事ができているのは平和だから」という言葉に
本作を通して、主題歌「想望」を手掛ける福山雅治さんと対談したという汐見先生。「エンターテインメントの世界でずっとトップにいらっしゃる福山さんの考え方に感激した」そう。「福山さんは『エンタメの仕事ができているのは「平和だから」』とおっしゃっていて、じゃあその世界平和のために何ができるのかって考えたら『自分ができる仕事を全力でやることが、それ(平和)に繋がっていく』という考えを話されていて、自分が作りたいとか、作りたいものを作るとか、じゃなくて、もっと深いところまで考えられてて、社会や世界のために活動を続けていらっしゃることが印象に残りました」と明かす。
ちなみに、対談時に空気が乾燥していて、喉の調子が悪かったという汐見先生。「人生でいちばん咳をしてはいけないタイミングで、咳がとまらなくなって、福山さんがとてもいい話をされてるのに止めてしまって恐縮してたら「いいのど飴あるからさしあげましょうか?」って言ってっ下さって、その優しさや気遣いに感動して、人としても勉強になりました」というエピソードも。ほか、ライブに行って感じたことや、彼の初監督作『FUKUYAMA MASAHARU LIVE FILM 言霊の幸(さき)わう夏 @NIPPON BUDOUKAN 2023』(公開中)を観て感じたことを話し「私も、少しでも読者の方々に楽しんでもらおうという気持ちを忘れずに執筆していきたいなと思いました」と感激した様子で話しました。
最後に「ここまでたくさんの方に読んでもらえる作品になるとは思わず書いていましたし、映画化が決まった段階でも「(観た人に)何か感じてもらえる作品になるのかな?」ってわからない中でやってきました。本当にここまで大きな作品になったのは、ここにいるみなさんひとりひとりのおかげ。これからも、よろしくお願いします」と笑顔でティーチインを締めくくりました。
【動画】名古屋ティーチイン舞台挨拶 原作者・汐見夏衛が主題歌・福山雅治とのエピ明かす!
映画『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』はミッドランドスクエア シネマほか大ヒット上映中です。
取材・文 にしおあおい(シネマピープルプレス編集部) イラスト のらくら
作品紹介
目が覚めると、そこは1945年の日本
初めて愛した人は、特攻隊員でした
親や学校、すべてにイライラして不満ばかりの高校生の百合(福原遥)。
ある日、進路をめぐって母親の幸恵(中嶋朋子)とぶつかり家出をし、近所の防空壕跡に逃げ込むが、
朝目が覚めると
そこは1945年の6月…戦時中の日本だった。
偶然通りかかった彰(水上恒司)に助けられ、軍の指定食堂に連れていかれる百合。そこで女将のツル(松坂慶子)や勤労学生の千代(出口夏希)、石丸(伊藤健太郎)、板倉(嶋﨑斗亜)、寺岡(上川周作)、加藤(小野塚勇人)たちと出会い、日々を過ごす中で、彰に何度も助けられ、その誠実さや優しさにどんどん惹かれていく百合。
だが彰は特攻隊員で、程なく命がけで戦地に飛ぶ運命だった…。
タイトル『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』
監督:成田洋一
脚本:山浦雅大 成田洋一 音楽:ノグチリョウ
原作:汐見夏衛『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』(スターツ出版文庫)
主題歌:「想望」福山雅治(アミューズ/Polydor Records)
出演:福原遥、水上恒司
伊藤健太郎、嶋﨑斗亜、上川周作、小野塚勇人、出口夏希
坪倉由幸、津田寛治、天寿光希、中嶋朋子 / 松坂慶子
配給:松竹
© 2023映画「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」製作委員会
公式サイト : https://movies.shochiku.co.jp/ano-hana-movie/
公式 twitter : @ano_hana_movie
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