“感動シネマアワード”大賞受賞作を宮沢氷魚主演で映画化した『はざまに生きる、春』
映画コンペティション“感動シネマアワード”で大賞を受賞した企画を、宮沢氷魚主演で映画化した『はざまに生きる、春』。感性豊かで嘘がつけない画家、透に惹かれた雑誌編集者の春が、運命の恋の “はざま”で揺れる姿が描かれます。恋をしたら一度は感じる、すれ違いの切なさ、もどかしさ、ただわかり合いたいという願い。そんな物語を紡いだのは、本作が商業映画初となる葛里華(かつ りか)監督。出版社で漫画編集者として数々のドラマ化作品を⼿掛けつつ、自身も自主映画を制作し続けている監督と、本作で青しか描かない画家・屋内透役を演じた宮沢氷魚さんに、作品との出会いや役への向き合い方について聞きました。
「葛里華監督の作品や登場人物に対する愛情が文面から伝わってきて…」宮沢
宮沢さんは「感動シネマアワードグランプリ」審査員だったそうですね?
宮沢「このプロジェクトが僕の所属するレプロエンタテインメントに所属している若手俳優たちに向けたあてがき作品を募集させていただいて、その中から我々が映画にしたい作品を選ぶというところから始まっているんですけど、本当にたくさんの方が素晴らしい脚本(ほん)を書いてくれて、僕はそれに一通り目を通して、最終的に3作品ぐらい残った時に、改めて全部読み直して、その中でも葛さんが書かれた「はざまに生きる、春」という作品が1番印象に残っていて、中でも登場人物の透くんと春ちゃんに対する監督の愛情が文面から伝わってくるような作品で、これを書かれた葛さんのことは信頼できるなと思ったので、僕たちの力で映画化できたらいいなっていうところで選ばさせていただきました。」
葛監督「ありがとうございます(笑顔)」
アワードに出す時点で、監督は宮沢氷魚さんに当て書きされたと思うのですが?自分の作品が選ばれた時は?
監督「嬉しかったです!この作品を考えた時に、透役は、澄み渡った透明感があって、それでいて少年のような無邪気なところを演じてもらえる役者さんにお願いしたいと思っていて、それをできるのは宮沢さんしかいないと思っていたので、本当に嬉しいです。夢が叶いました!」
「役作りは結局どの役でも大変なもの」宮沢
透役は難しい役どころだと思うのですが?演じるにあたって相当に覚悟がいったのでは?
宮沢「そうですね。過去にも『エゴイスト』というLGBTを題材にした作品で龍太というゲイの男性を演じたことがあるんですけど、その時に僕が感じたのは、自分の演じ方、表現の仕方をひとつ間違えてしまうと、たくさんの方を傷つけてしまう可能性があるということ。今回でいうとアスペルガー症候群の特性を持つ青年を演じているんですけど、『はざまに生きる、春』という作品を通して初めて発達障がいやアスペルガー症候群を知る人がいるかもしれない中で、できるだけリアリティをもって、嘘のない表現をしないと間違った第一印象をたくさんの人に与えてしまう可能性があるので、そこは特に気をつけました。
この作品の取材を受けていると「大変な役ですね」って言われるんですけど、ふと思ったのは確かに「大変」ではあったんですが、役作りって、自分じゃない人物や、まったく知らない職種やバックボーンのある方を演じるので、どの役でも結局大変なんですよね。だから、発達障がいを持っているから難しいという表現は『どうなんだろう?』と感じて…」
確かに時代劇なんて、所作とかまったく違ったりしますもんね?
宮沢「そう!どの役も「大変」だし「難しい」。今回、応募していただいた他の作品も、僕のことを一生懸命イメージして書いて下さってるので、僕らしい描写があったり、共感しやすいところもあるんです。だからといって、役作りが簡単になるかと言ったら全然なんですよ。当て書きでも、こんなに難しいんだってことは、本作を通して改めて感じましたね」
監督は、演出するにあたって、宮沢さんといろいろお話されて?
葛監督「撮影前に、発達障がいについて知る勉強会のようなものを開かせていただいて、実際に当事者の方にも会っていただいたんですけど、宮沢さん、ものすごく真摯に向き合って下さって、透の動きとかについても、相談しながら作っていきました。」
映画で小西桜子さんが演じた春のように、どんどん透のことが好きになっちゃいました!
葛監督&宮沢「いちばん嬉しい!ありがとうございます!(満面の笑み)」
宮沢「透くんはとても真っすぐでピュアで、自分の思いをおもいっきりぶつけられないもどかしさとかもあるとは思うんですけど“本当に”素敵な人で、憧れました!」
葛監督「それは宮沢さんが作ってくれたから!そういう魅力的な屋内透になったんだと思います」
「透明なんだけど、深くて優しそうで秘めたる強いものがある青」葛監督
「僕も青がいちばん好きです!」宮沢
透さんは青が好きで青にこだわっていますが、監督から見て宮沢さんは何色ですか?
葛監督「この作品のイメージカラーを青にしようと思ったのは、私の中の宮沢さんのイメージが青だったからかもしれないです。なんか、すごく透明なんだけど、深くて優しそうで、だけど何か秘めたる強いものがありそうなのが、私の宮沢さんのイメージでもあり青のイメージで。前にインタビューで宮沢さんも青色が好きって…」
宮沢「そう僕も青が一番好きで…」
葛監督「答えてたのも、そのあとで知って、いろんなご縁を感じました」
宮沢「ですね!」
葛里華監督は会社員でもありながら、映画も作っていて…改めてすごいなぁと
宮沢「いやぁ、本当に思いました。監督という立場はすごく難しいし、全体を見なきゃいけない役割もあると思うんですけども、見事にそれをこなしていて、初めての商業作品とは思えないぐらい堂々としてたので、僕たちも助けられるところはこうサポートに入って、基本的には監督の演出や助言みたいなものもすごく信頼があったので、そこにやっぱ応えたいっていう思いはずっとありましたね。」
では、また2本、3本とおふたりで
葛監督「ぜひ」
宮沢「呼んで下さい」
インタビュー中、ふたりからはマイナスイオンのような、穏やかで和やかな時間が流れていたのが印象的でした。映画『はざまに生きる、春』は、5月26日よりミッドランドスクエア シネマほか全国ロードショー。ぜひ、映画館でご覧下さい。
聞き手 松岡ひとみ 構成・文 にしおあおい(シネマピープルプレス編集部)
感動シネマアワードとは?
heartwarming(心温まる)、be moved(心動かされる)、be inspired(鼓舞される)、be blown away(圧倒される)、soul-stirring(魂を揺さぶる)など、様々なニュアンスを持つ“感動”。 多種多様な“感動”を肯定し、観客の“心を揺さぶる”企画を全国から募集。レプロエンタテインメント出資のもと製作する、映画コンペティション企画。
感動シネマアワード 公式サイト
https://www.lespros.co.jp/special/kandocinema/
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作品概要
【ストーリー】出版社で雑誌編集者として働く小向春(小西桜子)は、仕事も恋もうまくいかない日々を送っていた。
ある日、春は取材で、「青い絵しか描かない」ことで有名な画家・屋内透(宮沢氷魚)と出会う。
思ったことをストレートに口にし、感情を隠すことなく嘘がつけない屋内に、戸惑いながらも惹かれていく春。
屋内が持つその純粋さは「発達障がい」の特性でもあった。ただ、人の顔色をみて、ずっと空気ばかり読んできた春にとって、そんな屋内の姿がとても新鮮で魅力的に映るのであった。
周囲が心配する中、恋人に怪しまれながらも、屋内にどんどん気持ちが傾いていく春だったが、「誰かの気持ちを汲み取る」ということができない屋内にふりまわされ、思い悩む。
さまざまな “はざま”で揺れる春は、初めて自分の心に正直に決断するー。
監督・脚本:葛里華 出演:宮沢氷魚 小西桜子 細田善彦 平井亜門 葉丸あすか 芦那すみれ 田中穂先 鈴木浩文 タカハシシンノスケ 椎名香織 黒川大聖 斉藤千穂 小倉百代 渡辺潤 ボブ鈴木/戸田昌宏 上映時間:103分 2022年/日本/カラー/アメリカンビスタ/5.1ch 配給:ラビットハウス 公式: hazama.lespros.co.jp ©2022「はざまに生きる、春」製作委員会 2023年5月26日(金)より全国順次公開
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