One Frame Theater Vol.15 『ハケンアニメ!』想いと情熱がほとばしる

届け、観る人の心へ
刺され、誰かの胸に
お仕事応援ムービー『ハケンアニメ!』

突然ですが「みなさん仕事は好きですか?」

「はい!」って手を挙げたそこのあなた…に質問です。

「好き」を仕事にと「好き」なことだけはイコールですか?

たぶん、だいたいの人の答えはノー。

できることなら「好き」なこと「だけ」していたいけど、

現実はそんなに甘いものではなく

「好き」なことを仕事にすると

だいたい「好き」じゃないこともセットになってついてきます。

今回は、そんな壁にぶちあたり、もがきながらも成長していく新人女性監督がアニメの頂点を目指して奮闘する『ハケンアニメ!』をOne Frame Theater 第15回目の作品として取り上げたいと思います。

ところで「ハケンアニメ」って?

タイトル「ハケンアニメ」みなさんは、どんな物語を想像しますか? 初めて、このタイトルを耳にした時、私はてっきり「フリーのアニメーション監督が派遣先で奮闘するお話」だと思っていました。この業界では、フリーの監督も珍しくないですし、ほら行く先々で「私、失敗し…」いえ、騒動を巻き起こしながら新風を吹きいれるって物語として面白いじゃないですか…だからね、タイトルで敬遠してる人は、早く映画館に行ってください!いますぐ!ほんと!損してますから。

ハケン…漢字で書くと「覇権」と書きます。

えっ?「覇権アニメ」東映の作品だし、あれかな「スーパーヒーロー」とかでちゃう系?「おめぇつえ~なぁ」とか言っちゃったりして…そんな妄想を膨らませながら、ファーストコンタクトを果たすことに。そしてエンドロールが流れた後、私はある変化に気づきました。

このサイトをずっと見てきている方なら、お気づきかもしれませんが。変わったんです明らかに仕事の取り組み方が、それも劇的レベルで。観終わった後すぐ、イラストレーターののらくらさんに連絡して「早く観て!」「とにかく絶対観て!」「いいから観て!」興奮気味に連絡したことを覚えています。

そして気づいたら本屋に直行し「ハケンアニメ!」と「レジェンドアニメ!」を手にしていました。

たぶん私は、もっと知りたくなったんです。この映画に登場する登場人物たちのストーリーを。だから本音を言うなら、続編観たいし、スピンオフとか作ってもらいたいって思ってます。

アニメの頂点”覇権”を目指し想いと情熱がぶつかりあう

舞台となるのは、市場規模約2.5兆円、毎クール50本以上の新作が生みだされるアニメ業界。期待の新人監督・斎藤瞳と崖っぷち状態の天才監督・王子千晴が、アニメの頂点である”覇権”を目指し想いと情熱をぶつけあいながら突き進んでいく物語です。

公務員からアニメ業界へ異色の新人監督・斎藤瞳に吉岡里帆

吉岡里帆さん演じる主人公、斎藤瞳は公務員からアニメ業界に転身するという異色の経歴を持つアニメーターで「サウンドバック 奏の石(通称”サバク”)」という作品で、ついに念願の監督デビューを果たすことになります。好物はチョコエクレア。劇中にも、銀座コージーコーナーがガッツリ登場します。

そんな彼女ですが、監督になったとはいえ新人、パートナーを組むプロデューサーの行城(柄本佑)に言われるまま、やれ取材、ほら打ち合わせと、寝る間も惜しんで作品に打ち込んでいるというのに、振り回されっぱなし。「いい作品を作りたい」という熱意だけが暴走し、職人気質のスタッフたちやアイドル出身声優たちとのコミュニケーションにも苦戦します。はたから見ると「もう少しうまくやんなよ」と思わなくもないですが、振り返ってみると「初めての企画を任された時、自分も似たような壁にぶつかったなぁ」と。不器用すぎるぐらいに不器用。真面目過ぎるぐらいに真面目。だからこそ、彼女がいろんなことに気づいた時の変化へとつながっていくのです。

彼女の傍らには、柄本佑さん演じるクセ者敏腕プロデューサーの行城がいるのですが、映画を最後まで観て、もう一度最初から観ると…さらにグッときます。描かれてない部分を、ちょっとした変化とニュアンスで表現し、憎まれ役を愛らしく演じきった柄本佑さん。よ~くみると、細かい芝居をところどころに忍ばせているんです。さすが、大手アニメーションスタジオのプロデューサー。好きになりかけたのは…私だけじゃないはずです。

天才アニメ監督・王子千晴と中村倫也がみせるギャップ

一方、瞳たちの前に立ちはだかるのは、瞳がアニメ業界に入るきっかけとなった天才アニメ監督・王子千晴の「運命戦線リデルライト(通称”リデル”)」こちらも、8年のブランクを経て再起をかけた復帰作とあって気合い十分。

表舞台では涼しい顔で余裕を取り繕っていますが、背負ってる覚悟とプレッシャーは計り知れないものが…。その苦悩と彼自身の闘いと燃える想いを中村倫也さんがものすごくいいバランスで演じています。トークイベントでは、放送時にピーが入りそうな名スピーチを繰り広げ、観客のハートをガッチリ掴んだかと思えば「子どもか!」とツッコミを入れたくなるような場面も。もしかして、中村さん自身の言葉なんじゃないかと錯覚を覚えるような、刺さる言葉の数々。ぜひ、映画館でグサグサ刺されて下さい。

そんな彼を支えるプロデューサー有科に尾野真千子さん。中間管理職あるあるパートは彼女の担当。上層部のプレッシャーに耐え、王子の才能を守ろうとしたり、王子のワガママに振り回されたり、相当メンタル強くないとできないと思うのですが、そこのとこをうまく尾野さんが演じきっています。彼女と瞳がある場所で出会い意気投合するシーンがあるのですが、やっぱり同業者「通じるもの」ってあるんですね。

ふたりの監督を支える”神作画”で知られるアニメーター

本作には、本当にたくさんの登場人物が登場します。監督、プロデューサー、脚本家、演出、声優、制作進行、デスク、美術、色彩設計、作画、撮影監督、キャラクターデザイン、アニメーター、聖地巡礼を盛り上げる市の観光職員、フィギュア会社、ショップ店員etc

いつも何気なく観ているエンドロール。この仕事を始めてからは、いろんな名前を発見しては、ひとりニヤニヤする私ですが、それこそ昔は「長いなぁ~」「まだ終わらないのか…」と思ってました。でも、考えてみたら、映画もアニメもそれだけ多くの人が関わっているってこと。そのことをこの映画は教えてくれます。

きっと、この映画の登場人物たちのように、エンドロールで流れる人たちも、作品を愛してて物語ももっている。それが、この映画からは、あふれるほどに伝わってくるのです。

私が大好きなのは”サバク”と”リデル”に関わる、ファインガーデン所属のアニメーター和奈(小野花梨)のエピソード。彼女は、好きな人とのデートのため、連日徹夜して仕事をこなし、デートに駆けつけます。好きなことのために、頑張って仕事を終わらせたり、スケジュールをやりくりした経験がある人は、きっと共感してしまうはずです。和奈の場合、そのデートも邪魔されてしまうのですけどね…。

“神作画”で知られる彼女は、あるアニメ雑誌の表紙のイラストを行城からお願いされます。大好きな人と過ごしてる彼女は断ろうとするのですが…。結局、引き受けることに。そのあとの瞳とのやりとりが、ものすごくいいんです。仕事スイッチが入った途端、サラリとプロフェッショナルなところをみせる和奈。その流れがとても自然で、この作品をきっかけに、小野花梨さんの演技にひきこまれたのですが、別件で調べものをしてたら『南極料理人』で堺雅人さん演じる西村さんの娘役だったんですね。

もしかしたら、この映画に出ていた太陽くんも、数年後同じように思うかもしれませんね。

ちなみに、”サバク”の聖地巡礼企画を担当する市の職員・宗森(工藤阿須加)との凸凹コンビぶり&やりとりも楽しいです。

“リデル”VS“サバク”覇権をとるのはどちらか?

【予告】映画『ハケンアニメ!』どっちのアニメ派!?

本作には2つのアニメ作品が登場するんですが、そのクオリティーが本当に高いんです。

アニメ『サウンドバック 奏の石』特報 監督:斎藤瞳

TVアニメ『サウンドバック 奏の石』公式サイト

アニメ『運命戦線 リデルライト』特報 監督:王子千晴

TVアニメ『運命戦線 リデルライト』公式サイト

両方とも12話分のプロットを原作者の辻村深月さんが自ら書き下ろしたそうです。ちなみに巨大ロボットが登場する『サウンドバック 奏の石』のメカデザインを担当したのは『機動戦士ガンダム00』や『EUREKA/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』で知られる柳瀬敬之さん。谷東監督、キャラクター原案を窪之内英策さんが担当しているのも話題です。『運命戦線 リデルライト』も大塚隆史監督、岸田隆宏さん(キャラクター原案)が関わっています。

声優陣も超豪華で、”サバク”のヒロイン、トワコ役に高野麻里佳さんほか、梶裕貴さん、潘めぐみさん、高橋李依さん、堀江由衣さん、花澤香菜さんら、本編に負けない面々が揃ってます。劇中のアニメーションも、ぜひスピンオフで作ってもらいたいです。

映画の中でもSNSの描写が登場しますが、リアルでもTwitter応援上映みたいなカタチで、映画をみながら”サバク”と”リデル”をリアルに応援するコメントをリアルタイムでよせる企画をやったら面白いのになーって思います。作品だけでなく、それぞれのキャラクターに対するコメントや「俺は瞳ちゃんの味方!」「王子降臨!」「ゆっきー最強」「香屋子負けるな」「伝説のおにぎりキター!」「並澤ちゃんガンバレ!」みたいに共感ポイントを寄せあったり、各々、作品の応援グッズを持ち込んだり、五感フル稼働で、楽しんでも面白そうですよね。

エンドロールは最後まで

そして、ぜひ、本作はエンドロールも最後までご覧下さい。最後の最後まで観た人「だけ」が到達できる風景がそこにはあります。

私は、映画館を出たあと、思わずマネしながら帰りました。

【予告】映画『ハケンアニメ!』

『ハケンアニメ!』は5月20日(金)よりミッドランドスクエアシネマほかにて公開中!

企画・構成 にしおあおい イラスト のらくら

作品紹介

連続アニメ『サウンドバック 奏の石』で夢の監督デビューが決定した瞳。だが、気合が空振りして制作現場には早くも暗雲が…。瞳を大抜擢してくれたはずのプロデューサー・行城は、ビジネス最優先で瞳にとって最大のストレスメーカー。「なんで分かってくれないの!」、だけど日本中に最高のアニメを届けたい!そんなワケで目下大奮闘中。最大のライバルは『運命戦線リデルライト』。瞳も憧れる天才・王子千晴監督の復帰作だ。王子復活に賭けるのはその才能に惚れ抜いたプロデューサーの香屋子…しかし、彼女も王子の超ワガママ、気まぐれに振り回され「お前、ほんっとーに、ふざけんな!」と、大大悪戦苦闘中だった。瞳は一筋縄じゃいかないスタッフや声優たちも巻き込んで、熱い“想い”をぶつけ合いながら“ハケン=覇権” を争う戦いを繰り広げる!!その勝負の行方は!? アニメの仕事人たちを待つのは栄冠か? 果たして、瞳の想いは人々の胸に刺さるのか?

『ハケンアニメ!』
監督:吉野耕平 脚本:政池洋佑 
原作:辻村深月「ハケンアニメ!」(マガジンハウス刊)
主題歌:ジェニーハイ「エクレール」
出演:吉岡里帆 中村倫也
工藤阿須加 小野花梨 高野麻里佳 前野朋哉
古舘寛治 徳井優 六角精児
柄本 佑 尾野真千子
配給:東映 上映時間:128分
公式サイト https://haken-anime.jp/
公式Twitter @hakenanime2022
©2022 映画「ハケンアニメ!」製作委員会

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