One Frame Theater Vol.15 『ハケンアニメ!』想いと情熱がほとばしる

2022年9月28日 追記

2022年9月28日(水)に Blu-ray&DVD が発売、同時にDVDレンタルもスタートするということで、『ハケンアニメ!』の記事を追記しています。

『ハケンアニメ!』本当に多くの人に届いて欲しい作品なんです。

9月28日発売のBlu-rayには約100分に及ぶ映像特典を収録

ちなみに9月28日発売のBlu-rayには、約100分に及ぶ映像特典を収録!キャスト陣の魅力に迫る撮影現場に密着したメイキング映像や舞台挨拶の模様を収録するほか、劇中作「サウンドバック 奏の石」「運命戦線リデルライト」のコンテ撮映像や劇中用アニメーション部分を完全収録!さらに、初回特典にティザービジュアル仕様のスペシャルパッケージ、そして劇中アニメの「サウンドバック 奏の石」「運命戦線リデルライト」の番組宣伝ポスターと、吉岡里帆・中村倫也・柄本佑・尾野真千子のキャラクターポスターデザインをポストカードセットとして封入!

詳細は https://www.toei-video.co.jp/special/haken-anime/ でご確認下さい。

欲しいですね。

『ハケンアニメ!』の見どころ

吉岡里帆さん演じる新人女性監督、斎藤瞳。好物は銀座コージーコーナーのチョコエクレア。

大手アニメ会社で働く斎藤瞳は、数々のヒット作を世に送り出してきたプロデューサー行城に抜擢され「サウンドバック 奏の石(通称”サバク”)」で念願の監督デビューが決まり、このチャンスに勝負をかけています。

公務員からアニメ業界に飛び込んだ異色の経歴の持ち主の瞳は、熱意と作品への思いが強すぎるあまり、職人気質のスタッフたちともぶつかり気味。気持ちばかりが空回りして、アイドル出身声優たちとのコミュニケーションも苦戦気味。ただでさえ時間のない中、やれ取材、ほら打ち合わせとプロデューサーの行城は、瞳の気持ちなどお構いなしに振り回し、寝る間を惜しんで制作に没頭する瞳はどんどん追い詰められていきます。物語は、そんな彼女が作品の制作を通して、成長する姿が描かれます。

そして瞳たちの前に、ライバルとして立ちはだかるのが、瞳がアニメを志すきっかけにもなった天才アニメ監督の王子千晴。デビュー作が社会現象になったあと半ば引退状態の彼が「運命戦線リデルライト(通称”リデル”)」という新作で再起をかけるドラマも一方で描かれます。

新人監督と天才監督のプライドと才能が、仲間やライバルたちの想いをものせて、スクリーンに躍動するのも見どころです。

中村倫也さん演じる天才監督・王子千晴。ドS系ツンデレ王子ですが不意打ちでみせる表情にキュンです。

それにしても、モノづくりの現場は、ドラマがいっぱい。敏腕だけど、クセものプロデューサーがみせる顔。才能を守りたいプロデューサーの戦い。天才と注目を集めたがゆえの重圧。不器用な新人監督の奮闘。推しの作品への愛。書き出したらとまりませんが、本作にはたくさんのドラマがあります。

監督やプロデューサーだけでなく、脚本家、演出、声優、制作進行、デスク、美術、色彩設計、作画、撮影監督、キャラクターデザイン、アニメーター、聖地巡礼を盛り上げる市の観光職員、フィギュア会社、ショップ店員etc

本当にたくさんの人がひとつのアニメーションに関わっています。

今でこそいろんな名前を発見しては、ひとりニヤニヤするエンドロールも、昔は「長いなぁ~」「まだ終わらないのか…」と思ってました。でも、考えてみたら、映画もアニメもそれだけ多くの人が関わっているってこと。そのことをこの映画は教えてくれます。

だから、映画をおかわりするごとに、違うキャラクターの視点でみて、楽しむことができる。味わえば、味わうほど、作品への愛や深みが増す作品になっています。深まりゆく秋にピッタリの一作ですね。

「いい作品を作りたい!」吉岡里帆がみせる情熱

吉岡里帆さん演じる新人監督の斎藤瞳は、ものすごく不器用です。「いい作品を作りたい」という熱意だけが暴走し、あっちでぶつかっては傷つき、こっちは詰められては「うぅううう」って頭を抱える、新人監督をボロボロになりながら表現しています。はたから見ると「もう少し余裕をもって」「うまくやんなよ」と思わなくもないですが、振り返ってみると、初めての企画を任された時、自分も似たような壁にぶつかったなぁと、少し懐かしい気持ちになりました。たぶん、瞳もサポートする側にいる時は、もう少し優秀だったと思うんです。自分のことだから、余裕がなくなる、その感じをとてもうまく表現されてます。だからこそ、彼女がいろんなことに気づいた時の変化へとつながっていくのです。

王子千晴と中村倫也がみせるギャップ

瞳たちの前に立ちはだかる天才アニメ監督・王子千晴を演じるのは、中村倫也さん。私はいまだに、どの中村倫也さんが正解なのかわからないのですが「もしかしてこれが本当の中村倫也さん?」と思わせるぐらい、自然体に言葉を発してるのが印象的です。よくよく考えたら演技なんですけど、初回のオンエアを前にしたイベントの場で王子が発する言葉にちょっとした錯覚を覚えました。めちゃくちゃ言葉がリアルだし、刺さるんです。あのスピーチに「王子の帰還」を感じたのは、きっと私だけじゃないはず。そしてこの作品では、天才と呼ばれてる人の、背負う覚悟とプレッシャー、その苦悩が垣間見えるシーンも登場します。ライバルが出現し、その作品を観たことで、本気スイッチが入るその感覚。クールぶってる裏で、チラチラみせる子どものような可愛さ。とくに、有科に見せる表情の数々は、キュンキュンすること必至です。たぶん。

綺麗ごとだけじゃない”ヒール“も厭わない行城の覚悟

映画を最後まで観てから、もう一度最初から観ると…評価がガラリと変わるのが、柄本佑さん演じるプロデューサーの行城理。時間のない中、一生懸命作品と向き合う瞳を、容赦なくあっちやこっちへ連れまわし振り回す彼は観ている側からすると「うん?」と思わなくもないけど、そこには彼なりの考えが…。その描かれていない「行間」のような部分を、ちょっとした変化とニュアンスで表現し、憎まれ役を愛らしく演じきった柄本佑さん。よ~くみると、細かい芝居をところどころに「敏腕っぷり」や「優しさ」を忍ばせているんです。だんだん本当のパートナーになっていく行城と瞳の関係もこの作品の楽しみどころです。

信じて守る覚悟にしびれる有科のカッコよさ

尾野真千子さんが演じるのは、チームを引っ張る頼れるプロデューサーの有科。プロデューサーでもあるけれど、中間管理職的立場でもある彼女は、上層部からプレッシャーをかけられる中、王子の才能を守ろうとします。突然いなくなる王子のワガママに振り回されたり、こだわりをぶつけられ無理難題言われたり、相当メンタル強くないとできないと思うのですが、そこのとこをうまく尾野さんが演じきっています。

ふたりの監督を支える”神作画”アニメーター

“サバク”と”リデル”に関わる、作画スタジオ「ファインガーデン」所属のアニメーター和奈を演じたのは、小野花梨さん。好きな人とのデートのため、連日徹夜して仕事をこなし、デートに駆けつける和奈に共感を覚える人も多いのでは。

好きなことのために、頑張って仕事を終わらせたり、スケジュールをやりくりした経験がある人なら、きっと共感してしまうはず。

“神作画”で知られる彼女はデートの最中に、あるアニメ雑誌の表紙のイラストを行城からお願いされます。大好きな人と過ごしてる彼女は断ろうとするのですが…。結局、引き受けることに。そのあとの瞳とのやりとりが、とてもいいんです。仕事スイッチが入った途端、サラリとプロフェッショナルなところをみせる和奈。”神作画”爆誕の瞬間を感じさせる流れがあまりに自然で、小野花梨さんの演技にひきこまれたのですが、別件で調べものをしてたら『南極料理人』で堺雅人さん演じる西村さんの娘役だったんですね。

もしかしたら、この映画に出ていた太陽くんも、数年後同じように思うかもしれませんね。

ちなみに、”サバク”の聖地巡礼企画を担当する工藤阿須加さん演じる市の職員・宗森との凸凹コンビぶり&やりとりも楽しいです。

“リデル”VS“サバク”覇権をとるのはどちらか?

本作には2つのアニメ作品が登場するんですが、そのクオリティーが本当に高いんです。

TVアニメ『サウンドバック 奏の石』公式サイト

TVアニメ『運命戦線 リデルライト』公式サイト

両方とも12話分のプロットを原作者の辻村深月さんが自ら書き下ろしたそうです。ちなみに巨大ロボットが登場する『サウンドバック 奏の石』のメカデザインを担当したのは『機動戦士ガンダム00』や『EUREKA/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』で知られる柳瀬敬之さん。谷東監督、キャラクター原案を窪之内英策さんが担当しているのも話題です。『運命戦線 リデルライト』も大塚隆史監督、岸田隆宏さん(キャラクター原案)が関わっています。

声優陣も超豪華で、”サバク”のヒロイン、トワコ役に高野麻里佳さんほか、梶裕貴さん、潘めぐみさん、高橋李依さん、堀江由衣さん、花澤香菜さんら、本編に負けない面々が揃ってます。劇中のアニメーションも、ぜひスピンオフで作ってもらいたいです。

エンドロールは最後まで

そして、ぜひ、本作はエンドロールも最後までご覧下さい。最後の最後まで観た人「だけ」が到達できる風景がそこにはあります。

私は、映画館を出たあと、思わずマネしながら帰りました。

企画・構成 にしおあおい イラスト のらくら

作品紹介

連続アニメ『サウンドバック 奏の石』で夢の監督デビューが決定した瞳。だが、気合が空振りして制作現場には早くも暗雲が…。瞳を大抜擢してくれたはずのプロデューサー・行城は、ビジネス最優先で瞳にとって最大のストレスメーカー。「なんで分かってくれないの!」、だけど日本中に最高のアニメを届けたい!そんなワケで目下大奮闘中。最大のライバルは『運命戦線リデルライト』。瞳も憧れる天才・王子千晴監督の復帰作だ。王子復活に賭けるのはその才能に惚れ抜いたプロデューサーの香屋子…しかし、彼女も王子の超ワガママ、気まぐれに振り回され「お前、ほんっとーに、ふざけんな!」と、大大悪戦苦闘中だった。瞳は一筋縄じゃいかないスタッフや声優たちも巻き込んで、熱い“想い”をぶつけ合いながら“ハケン=覇権” を争う戦いを繰り広げる!!その勝負の行方は!? アニメの仕事人たちを待つのは栄冠か? 果たして、瞳の想いは人々の胸に刺さるのか?

『ハケンアニメ!』
監督:吉野耕平 脚本:政池洋佑 
原作:辻村深月「ハケンアニメ!」(マガジンハウス刊)
主題歌:ジェニーハイ「エクレール」
出演:吉岡里帆 中村倫也
工藤阿須加 小野花梨 高野麻里佳 前野朋哉
古舘寛治 徳井優 六角精児
柄本 佑 尾野真千子
配給:東映 上映時間:128分
公式サイト https://haken-anime.jp/
公式Twitter @hakenanime2022
©2022 映画「ハケンアニメ!」製作委員会

関連記事

おいしい映画祭

アーカイブ