伊藤さとりの映画で人間力UP!映画「ウェディング・ハイ」

「この世の中、誰もが『主人公』だ」

この言葉が大好きだ。

あえて本年度アカデミー賞ノミネート作に例えるならば、デンゼル・ワシントンが主演男優賞にノミネートされたシェイクスピアの戯曲を映画化したジョエル・コーエン監督の『マクベス』のように「私を称えよ!」と豪語するような人間は悪役として描かれるし、作品賞ノミネートの『ドント・ルック・アップ』のジェニファー・ローレンス演じる地球に衝突する彗星を発見する大学院生のように、自己顕示欲よりも人類の救済に身を投じる人間は魅力的に描かれる。じゃぁ、伝道師でも成功者でもないパッとしない人生を歩んできた人が主人公の映画ってあるのかと言われると、それもしっかりと存在するのが映画の面白さなのです。

その映画とは、主人公はウェディング・プランナー役の篠原涼子かと思いきや、物語が進むにつれ、新郎役の中村倫也?いや、新婦役の関水渚?いやいや元カレ役の岩田剛典?と出て来る人々の視点に次から次へと変わるバカリズム脚本・大九明子監督の『ウェディング・ハイ』。これはまさに全員が主人公となる物語でした。

 

 

 

 

 

確かに「結婚式」という人生の大イベントには様々な人の思惑が渦巻き、新婦が思い描く理想像と新郎が頭を抱える参列者選び、スピーチを頼まれた人はいかに良いことを言うかに囚われ、余興を頼まれた人も多くの人の心に残る演出を考えようとする。それこそ会場に集まった人達の「見せ場」にもなるのが結婚披露宴の裏テーマという考えは斬新であり、ごもっともなシチュエーションなのです。けれど登場人物の誰もが大物でもなければ、際立った個性を持っているわけでもなく、他者と関わることで味わいが出てくるキャラクターというのも地に足がついていて隣人的。そして皆、愛すべきキャラに見えてくるのも人とのコミュニケーションが為せる技だと伝えてくる脚本はお見事。

 

 

 

 

 

中でも興味深かったのは、岩田剛典演じる元カレのキャラクター設定。自分のプライドから別れてしまった元カノに対して、悪友との会話の勢いからダスティン・ホフマン主演、マイク・ニコルズ監督の『卒業』さながらに、結婚式に乗り込んで逃避行まで考える展開はドラマティック。そんな身勝手なと思いきや、あの“がんちゃん”をまさかの描き方でどこまでもカッコ悪いヒーローとして昇華させた大九監督の演出から逆に今まで以上に親近感が湧いたほど。そうよ、見た目がカッコ良くなくても、大業を成し遂げなくても魅力的な主人公になれる。結局は、一生懸命な思いと行動が人を輝かせ、そんな姿を自分に投影させた誰かのハートを射抜くのだから。

 

3月12日(土)<大安吉日>全国ロードショー
『ウェディング・ハイ』

 

作品情報

脚本:バカリズム(『架空OL日記』『地獄の花園』)

 監督:大九明子(『勝手にふるえてろ』『私をくいとめて』)

出演:篠原涼子 中村倫也 関水渚 岩田剛典 向井理 高橋克実 

主題歌:東京スカパラダイスオーケストラ「君にサチアレ」(cutting edge / JUSTA RECORD) 

配給:松竹

 クレジット:(c)2022「ウェディング・ハイ」製作委員会

【公式HP】 https://movies.shochiku.co.jp/wedding-high-movie/ 【Twitter】 https://twitter.com/wedding_high
【Instagram】 https://www.instagram.com/wedding_high_movie/

映画パーソナリティ 伊藤さとり

ハリウッドスターから日本の演技派俳優まで、記者会見や舞台挨拶MCも担当する。全国のTSUTAYA店舗で流れる店内放送wave−C3「シネマmagDJ、俳優対談番組『新・伊藤さとりと映画な仲間たち』(YouTubeでも配信)、東映チャンネル×シネマクエスト、映画人対談番組『シネマの世界』など。NTVZIP!」、CX「めざまし土曜日」TOKYO-FMJFN、インターFMにもゲスト出演。雑誌「ブルータス」「Pen」「anan」「AERA」にて映画寄稿。日刊スポーツ映画大賞審査員、日本映画プロフェッショナル大賞審査員。

 

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