King Gnu 井口理「人にちゃんと伝えたり、聞いたりしないと…」映画『ひとりぼっちじゃない』で得た気づき

3月10日に公開初日を迎えた映画『ひとりぼっちじゃない』の舞台挨拶が12日、名古屋センチュリーシネマで行われ、主演の井口理さん(King Gnu)と伊藤ちひろ監督が登壇。終わったあと、役がしばらく抜けなかったというエピソードやコミュニケーション論を繰り広げました。

本作は『世界の中心で、愛をさけぶ』など、数多くの映画脚本を手掛けてきた伊藤ちひろさんが、10年かけて書き上げた、自分を主人公ではないと認識する主人公ススメの日記形式の小説が原作。行定勲監督のプロデュースにより、伊藤自身が初監督を務め、恋をすることで少しづつ変化を帯びていく不器用な男の純愛と狂気を、圧倒的な世界観と行間で撮りあげました。

僕が抱えている自意識や感じていたことを素直に表現として落とし込んだ

今回、井口をアテガキしたと明かした伊藤監督

この日は公開3日目ということで、SNSに投稿された映画の感想や考察を「すごいね!この読解力!」「こんな感想もあるよ!」と監督とふたりで「楽しんでます」と明かしたのは、映画初主演となる井口理さん。SNSはマメにチェックしてるそう。

自身が演じたコミュニケーションを取るのが苦手な主人公・ススメとの共通点を聞かれると「全てが一緒ってことはないんですけど、ススメには共通するものを感じている」と答え、撮影前に台本を読みこみ長い時間をかけて準備したことも言及。「自分の芝居をほめる訳ではないですけど、こういう向き合い方をしたらちゃんと結果がついてくるんだとわかったので、これからもマイペースに作品を作っていけたら…」と次作映画への意欲も滲ませました。

役へのアプローチについては「ススメは『存在を誰にも気づかれたくない』と思っていて、人に見られることをすごく気にする人物なので、肩をすぼめて歩いてみたり、台本を読んで感じたことが自然と所作へと現れました。普段、僕が抱えている自意識や感じていたことを素直に表現として落とし込みたいなと思って…見ていただくとわかるんですけど、ススメは普段の僕の歩き方とは全然違う歩き方で、目の動きだったり所作みたいなものもススメのものになっていたので終わってからもしばらくは元に戻れないような感覚がありました」と明かしました。

これには伊藤監督も「撮影初日から、違う歩き方で現れたのでビックリしました!普段の井口くんの歩き方は、ほんとにカッコイイ King Gnu のサトルとしての歩き方なんですけど、ススメの歩き方は、その歩き方ひとつで、その人となりがわかるような歩き方だったので…(彼がススメとして)意識していた感情が、自然と体に滲み出てたんだと思う」とコメントし、井口さんの演技に太鼓判を押しました。

ススメが恋をするアロマ店を営む宮子に、馬場ふみか、友達である蓉子に河合優実が扮する本作。共演した感想を問われると「今回、登場人物が相手の気持ちをわからないまま突き進んでいくお話だったので、共演者の馬場さんや河合さんとはあまり話しませんでしたね。現場中は。特に、河合さんとは(それを)心がけてやっていました、映画にかける思いもあったし、内容にもあってたんじゃないかなと思っています」

友達が元気なかったら『どうしたの?』って聞く?それとも…

今回、ススメの物語を行間で語りあげる本作。早くもSNSなどで観た人の「考察」が繰り広げられるなど、話題となっています。

それについて井口さんは「表面的にはこういう会話をしているけど、実は全く違うことをテーマにふたりが話をしているといった、台詞の妙みたいなものがあったり、暗喩的なものがすごく多い作品。説明するのは難しいんですけど…」と口にすると

監督が「恋愛相手を知るとか、もっと知りたいと思った相手に対して「知る」ということをそのまま映画にしているようなカタチで撮っているので、自分が理解していることで合っているのか、合ってないのか、何が正解なのかわからないっていうことでは、相手を知ることと同じことなのかなって」

井口さん「皆さんも経験あると思うんですけど、例えば、友達が元気がなかったら『どうしたの?』って聞きますか?聞ける時と聞けない時があると思うんですよね。そういうのが、たくさん出てくる映画で」

「知りたい相手に対して、一歩踏み込んで一言ちゃんと聞いていれば、あの時言っていればこんなにモヤモヤしないのになって。『あの時、言った言葉ってどういう意味だったんだろう?』とかってあるじゃないですか、後でずっと気になってて、だけど時間が経って今更聞けないみたいな。そういうもどかしい瞬間がこの映画の中で描かれていて、目の当たりにして、意味を考える。それが、この映画が持つコミュニケーションに繋がるのかなって…」と監督。

映画を通して、ちゃんと伝えることの大切さを実感したという井口さん「人にちゃんと伝えたり、聞いたりしないと、コミュニケーションは進んでいかないし、構築できないんだってことが映画を通してよくわかって、ススメ自身の自分に対するコミュニケーションについてもすごく考えたんですけど、自分を理解するには、自分に対しても問いを投げたりとか、そこに気づきました」

最後に「この映画は、登場人物があまり語らない、音だったり、小道具や美術が意味を持っているような映画なので、五感を働かせて感じて、たくさんのものを持ち帰って考えていただけたら…。この作品は、僕にとってのコミュニケーションでもあるので、映画を通して会話できたら嬉しいです。映画で感じた疑問や考察をぜひSNSで書いて下さい。楽しみにしています」と言葉を結びました。

映画『ひとりぼっちじゃない』はセンチュリーシネマほかで公開中です。

舞台挨拶こぼれ話

名古屋には「King Gnu」のライブなどで、何度も訪れている井口理さん。名古屋の印象を聞かれ「最初に食べたご飯とかすごい覚えてますね、ひつまぶしとか矢場とんとか」と答えると「移動中にも、矢場とんの味噌カツ弁当を食べたんですけど、疲れ切ってる時に食べてカツの味が僕の心にすごくしみわたって、元気もらえました」と明かしてくれました。

本作を通して「ちひろ監督とは共通言語が生まれた」と明かす井口さんは再タッグにも意欲的。監督が「次はすごいキレのいいアクションで!」と会場を沸かせると、井口さんも「乗馬とかね(練習)しとかないといけないですね」と言うと「いま、ちょうど馬乗ってる姿を頭に浮かべてました」と監督が続け、息の合ったところをみせました。

左から伊藤ちひろ監督、主演の井口理、舞台挨拶の司会を務めた松岡ひとみさん

【動画】伊藤ちひろ監督インタビュー

伊藤ちひろ監督作『サイド バイ サイド 隣にいる人』舞台挨拶レポート

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作品情報

不器用な歯科医 ススメのナナメでまっすぐな、純愛と狂気の物語

人とうまくコミュニケーションのとれない、歯科医のススメが恋をしたのは、アロマ店を営む宮子。
宮子は、部屋に鍵をかけず、突如連絡が取れなくなったりする、つかみどころがない女性だった。
それでも、彼女と抱き合っていると、ススメは自分を縛っている自意識から解放される気がしていた。
自分でも理解できない自分を宮子は理解してくれている、ススメはそれがうれしかった。
けれど、謎の多い宮子を前に、自分は彼女のことを理解できていない、と思い悩むススメ。
ある日、宮子の友達である蓉子が、ススメに宮子の身に起きた驚きの事実を告げる      

監督・脚本:伊藤ちひろ
企画・プロデュース:行定 勲
原作:伊藤ちひろ『ひとりぼっちじゃない』(KADOKAWA刊)
出演:井口 理(King Gnu)、馬場ふみか、河合優実
相島一之、高良健吾、浅香航大、長塚健斗(WONK)、
じろう(シソンヌ)、盛 隆二 森下 創、千葉雅子、峯村リエ
配給:パルコ
公式:https://hitoribocchijanai.com/
公式Twitter:@hitori_movie
(c)2023「ひとりぼっちじゃない」製作委員会

 

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