日本時間で13日に行われた第95回アカデミー賞。終わってみれば新進気鋭の製作・配給スタジオA24の『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』が、作品賞、監督賞、脚本賞、主演女優賞、助演女優賞、助演男優賞、編集賞の最多7部門受賞するという結果に。前哨戦となる主要な映画賞でも話題をかっさらい、映画界に“カオス旋風”を巻き起こしつつある異色作を紹介。受賞コメントも紹介します。プレゼントもあるよ!
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トリプル受賞の快挙!監督・脚本家コンビ「ダニエルズ」
作品賞、監督賞、脚本賞のトリプル受賞の快挙を果たしたダニエルズは「監督には沢山の人々の協力が必要です。全てをかけてこの作品に尽くしてくれたキャスト、映画のすばらしさを教えてくれた移民だった両親、兄弟、友人、僕たちの仕事をサポートしてくれる全ての人達、一人一人の才能が天才的な存在になりうる。アカデミーの皆さん、我々にとって素晴らしい賞をありがとうございます!」と興奮で息を切らしながら喜びを爆発させました。
「ダニエルズ」という名前を初めて聞く方もいると思うので紹介すると、1988年生まれのダニエル・クワンと1987年生まれのダニエル・シャイナートによるコンビ。ふたりは、大学在学中に出会い、コンビを結成。CM、MV、短編、TVドラマなど多くの作品を手掛け、2016年ダニエル・ラドクリフとポール・ダノが主演した『スイス・アーミー・マン』で長編映画デビュー。無人島に漂着した男が、同じく流れ着いた死体と友情を育むという奇想天外なサバイバル劇は、サンダンス映画祭最優秀監督賞を受賞したほか、数多くの映画賞にノミネートされ注目を集めました。ダニエル・ラドクリフがまさかの死体役、しかも死体なのになかなか万能という、ユニークな設定は日本でも話題になりました。その後、ダニエル・シャイナートは、2019年にミステリー仕立てのダークコメディ『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』を監督しています。
ふたりは、『犬王』の湯浅政明監督の撮った『マインド・ゲーム』や今敏監督の『 パプリカ』、宮崎駿監督の『もののけ姫』など、日本のアニメやカルチャーからインスピレーションを受けたことを明かしていて、本作にも「日本のカルチャーが反映されているので発見して欲しい」と語っています。日本のファンアートも楽しみにしているそうですよ。
ミシェル・ヨーがついに…
アカデミー賞の会場が見守る中、主演女優賞の名前を呼ばれ壇上に上がったのは、ミシェル・ヨー。問題を抱えた普通の女性が、ひょんなことからマルチバースに巻き込まれ、活躍する主人公を演じたミシェルは、アジア人史上初となる主演女優賞を受賞し偉業を達成!スピーチでは「これを見ている全ての子供たちへ、このアカデミー像は希望の証です。夢は実現するということの証です。この映画を私の母、そして世界中のお母さんたちに捧げます。あなたたちはスーパーヒーローです!」と力強いメッセージを語り「そして女性の皆さん、自分はもう旬が過ぎただなんて、誰にもそんなことを言わせてはなりません、あきらめないで」と続けると、大きな歓声に包まれました。
ミシェル・ヨーは1962年生まれの60歳。香港を代表するアクション・スターとして活躍後、ハリウッドに進出。1997年公開の『007/トゥモロー・ネバー・ダイ』でボンドガールを務めたほか、『グリーン・デスティニー』や『SAYURI』、近年だと『クレイジー・リッチ!』や『シャン・チー/テン・リングスの伝説』で印象を残す彼女。本作では、異次元の自分とリンクすることで、別の自分が持つ能力にアクセスできるバース・ジャンプという能力を使い巨大な悪と戦うエヴリンという女性を熱演。カンフーの特訓を受けアクションスターとして送る人生や、歌手やシェフなど、実人生のような華々しい世界も体現しつつ、家族の問題や税金の催促に頭を悩ませる、たくさんの問題を抱える普通の女性の哀愁も体現し共感を呼びます。そんな変幻自在なミシェル・ヨーの魅力に出会えるのが、本作『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』なのです。
帰ってきた俳優 キー・ホイ・クァン
助演男優賞に輝いたのは、ミシェル・ヨー演じるエヴリンの夫ウェイモンドを演じたキー・ホイ・クァン。本作で、感動的な俳優復帰を果たし、38年ぶりのアジア系の俳優としての受賞となりました。「僕の旅は難民キャンプから出航するボートから始まりました、そして今僕はハリウッドの最大の舞台にたどり着いた。映画のような話ですが、これが僕の人生なんです。これこそがアメリカンドリームなんです。夢は信じなければ実現できない。皆さんも夢をあきらめないで!!」とキーは涙ぐみながら語りました。
そんなキー・ホイ・クァンは、1984年公開『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』で、タイトルロールの考古学者インディ・ジョーンズを演じたハリソン・フォードの若き相棒・ショート役で注目され、続く1985年公開の『グーニーズ』で一躍人気子役となり、いくつかの作品に出演。その後、俳優業を休止し、武術指導アシスタントや助監督を経て、本作で俳優に復帰しました。ミシェルもですが、不遇の時代を経て掴み取った幸運は、多くの人の胸を打つのかもしれません。
ジェイミー・リー・カーティス 45秒のスピーチ
今回の助演女優賞には、本作からふたりの女優がノミネートされていました。ひとりは、ミシェル・ヨー演じるエヴリンの娘、ジョイを演じたステファニー・スー。そして、キャリア45年目、祈願の助演女優賞を獲得したジェイミー・リー・カーティス。
「みんな黙って 45 秒しかないの。私はいい子だからちゃんと時間を守るのよ」とジョークを飛ばしたジェイミー。
「この作品に関わっているダニエルズ、ジョナサン、クルー、ミシェル、キー、スタッフ、すばらしいアーティストの方へ、ついにオスカーを獲りました。ドリームチームです!」とオスカー像の感触を確かめながら、天を仰ぎ喜びを嚙み締めていたのが印象的でした。
ジェイミー・リー・カーティスといえば、1978年の『ハロウィン』1980年の『ザ・フォッグ』『プロムナイト』といったホラー映画の絶叫クイーンのイメージもありますが、『大逆転』や『ワンダとダイヤと優しい奴ら』、『トゥルーライズ』などの良作にも出演。ひょんなことから中身が入れ替わってしまった母娘が大騒動を起こす『フォーチュン・クッキー』も面白い映画なので、機会あればぜひ。
万華鏡のようなカオスな世界を編集したのは
アカデミー賞では編集賞も受賞。受賞したのは編集のポール・ロジャース。マルチバースとカンフーの融合、12のストーリーラインからなる複雑な世界観を、テンポ巧みに理屈抜きに楽しめる作品へと昇華させたのだから、その受賞は誰もが納得するところ。
ジェイミー・リー・カーティスが語る「ドリームチーム」が紡ぎだした映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』はミッドランドスクエア シネマほか全国大ヒット公開中です!
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作品情報
新ヒーローは‘フツ―のおばさん’?!マルチバースとカンフーで世界を救え!
【ストーリー】経営するコインランドリーの税金問題、父親の介護に反抗期の娘、優しいだけで頼りにならない夫と、盛りだくさんのトラブルを抱えたエヴリン。そんな中、夫に乗り移った“別の宇宙の夫”から、「全宇宙にカオスをもたらす強大な悪を倒せるのは君だけだ」と世界の命運を託される。まさかと驚くエヴリンだが、悪の手先に襲われマルチバースにジャンプ!カンフーの達人の“別の宇宙のエヴリン”の力を得て、闘いに挑むのだが、なんと、巨悪の正体は娘のジョイだった…!
タイトル:『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』 監督:ダニエル・クワン ダニエル・シャイナート『スイス・アーミー・マン』 出演:ミシェル・ヨー、キー・ホイ・クァン、ステファニー・スー、ジェイミー・リー・カーティス 配給:ギャガ 公式サイト:https://gaga.ne.jp/eeaao/ 公式Twitter:@eeaaojp © 2022 A24 Distribution, LLC. All Rights Reserved.