堤幸彦監督50作品目のハイクオリティインディーズ映画『truth〜姦しき弔いの果て〜』単独インタビュー

『truth〜姦しき弔いの果て〜』はコロナ禍、表現の場を失った3人の俳優たち

本作は、広山詞葉、福宮あやの、河野知美が立ち上がってつくった自主映画である。「文化芸術活動の継続支援事業」の助成金によってできている。

 

 

 

 

監督は堤幸彦。1988年に『バカヤロー!私、怒ってます「英語がなんだ!」』で映画監督デビュー以後、『「SPEC」サーガ』、『トリック』、『ファーストラヴ』など多くの作品を手掛け、2022年で34年め。『truth〜姦しき弔いの果て〜』はちょうど監督作50作に当たる。その記念すべき作品が初めての自主制作映画であることに必然を見出すとしたら、創作の原点に立ち返り、予算約700万円(助成金)、撮影2日間と低予算で物理的な制約のなかで精神的には自由な作品づくりを行うことであろうか。

テーマは精子バンク。3人の女性の俳優が集まって“女性”をテーマにした映画を作ろうと考えたとき、河野が以前から興味をもっていたテーマである“精子バンク”を提案した。広山から相談を持ちかけられた堤はそのテーマに賛同し、脚本を三浦有為子に依頼した。三浦は『明日の記憶』他、多くの堤作品の脚本を手掛け、堤が信頼を寄せる人物である。

3人の主演俳優たちは、メジャー映画やプライムタイムのテレビドラマで主役を担うタイプではないながら、それぞれのフィールドで着実に仕事をしている演技巧者たちである。彼女たちがひとりの男をめぐってマウントし合う芝居はじつにユーモラスでアクチュアル。コロナ禍で打ち合わせもままならない中、3人の俳優たちはZoomでコミュニケーションをとり、事前に4日間のリハーサルを経てわずか2日間で堤演出を体現した。

俳優は通常、演じたらその仕事は終わり。あとは公開時に宣伝協力するくらいだが、今回の3人は違う。企画を立ち上げたプロデューサーとして映画公開まで様々な仕事も担う。SNSを中心に自ら発信し作品を広く伝えていく。何かと規制が厳しい世の中で、俳優たちが能動的に活動する自主制作映画『truth〜姦しき弔いの果て〜』は俳優の活動の場や新たな作品が誕生する可能性を広げていく。

 

 

 

 

 

公開後、センチュリーシネマにて堤監督、広山詞菜、河野智美、福宮あやのさんが登壇しました。

公開前の12月21日。堤幸彦監督の「上映会」がシネマスコーレで開催され、その直前に堤幸彦監督にインタビューさせていただきました。

堤 幸彦 TSUTSUMI YUKIHIKO [原案・監督]

1955年生まれ 愛知県出身。88年、森田芳光総監督のオムニバス映画『バカヤロー! 私、怒ってます』の「英語がなんだ!」で映画監督デビュー。90年『![ai-ou]』で長編映画デビュー。テレビドラマ『金田一少年の事件簿』、『ケイゾク』、『SPEC』シリーズ、『TRICK』シリーズは映画化もされ、ドラマと映画それぞれでヒットさせた。2015年には『イニシエーション・ラブ』、『天空の蜂』で第40回記念報知映画賞、監督賞を受賞。舞台演出にも意欲的で『悼む人』、『真田十勇士』は映画版と舞台版を共に演出。18年に好評を博した『魔界転生』は21年に再演した。

主な監督作品に『TRICK』シリーズ(02〜14)、『明日の記憶』(06)、『20世紀少年 三部作』(08〜09)、『まぼろしの邪馬台国』(08)、『はやぶさ/HAYABUSA 』(11)、『SPEC』シリーズ(12〜13)、『人魚の眠る家』(18)、『十二人の死にたい子どもたち』(19)、『望み』(20)、『ファーストラヴ』(21)、『Trinity』などがある。最新作Huluオリジナルドラマ『死神さん』が9月より配信されている。のコンサートを記録・映画化したライブフィルム『ARASHI Anniversary Tour 5×20 FILM “Record of Memories”』が11月3日から公開。

2021年製作/71分/PG12/日本
配給:ラビットハウス

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