伊藤さとりの映画で人間力UP!「トロント日本映画祭in日比谷」

秋は映画祭シーズン。長年、映画界で仕事をしている身としてはこの時期は繁忙期で、東京の至る所で映画祭が開幕します。

 

そう、東京国際映画祭や東京フィルメックスだけでなく様々な映画祭が存在し、トークショーが繰り広げられているので、映画鑑賞が趣味な方には製作陣のリアルな声を聞いてディープな映画体験もできるチャンスなのであります。そんな中、今回は一週間司会を担当させてもらった新しい映画祭「トロント日本映画祭in日比谷」で感じた“映画の見方”を書き記すことにします。

まず「トロント日本映画祭in日比谷」は今年で3回目を迎えた映画祭で、6月にカナダで行われた「トロント日本映画祭」で上映された作品の中から人気作品をセレクトし、英語字幕付きでの上映に監督をお招きしてトークショーを展開するというものでした。

河瀬直美監督(『朝が来る』)はお仕事の都合でビデオメッセージになりましたが、それ以外の藤井道人監督(『宇宙でいちばんあかるい屋根』)、大九明子監督(『私をくいとめて』)、角川春樹監督(『みをつくし料理帖』)、沖田修一監督(『おらおらでひとりいぐも』)、黒沢清監督(『スパイの妻<劇場版>』)、三木康一郎監督(『弱虫ペダル』)が日替わりで登壇。それぞれの上映作品について、撮影当時のお話し、俳優陣について、約30分に渡り私と対談するというスタイルでした。まぁ、上映前にその作品について深掘りをするほど野暮なものは無く、全監督とも新鮮に映画を楽しんで欲しいという思いなので上映作品については内容に触れることはあまりしないでね、というのは“言わずもがな”なのです(笑)

 

 

 

 

 

そんな中で気付かされたのは、一本の作品から過去作や俳優の成長を紐解くことが出来るのも監督トークショーならではの醍醐味だということ。例えば藤井道人監督が現在放送中のドラマ「アバランチ」の演出を手掛けているのも、映画『ヤクザと家族』で綾野剛さんと仕事をしたことから主演俳優(綾野剛)指名によるものと教えてくれました。更に毎回、この監督の作品に出演する「〇〇組常連俳優」というのも存在するのですが、大九明子監督によると常連の臼田あさ美さん起用の理由の一つが、「意思疎通の出来る役者であり、毎回、面白い演技を見せてくれる」と言っていたことには納得でした。それに関しては『みをつくし料理帖』の角川映画出演者による豪華キャストは角川春樹監督の実績によるもの以外有り得ず、角川三人娘(薬師丸ひろ子、渡辺典子、原田知世)全員の出演が実現出来なかったのは、原田知世さんが朝ドラに出演していて本人から謝られたと言っていました。

 

 

 

 

更に監督という仕事は、監督のファンである俳優やスタッフの存在も欠かせないと感じたのは沖田修一監督や黒沢清監督との会話でした。例えば沖田修一監督が過去作の『キツツキと雨』での小栗旬さんとのエピソードを語ったのですが、「撮影現場で僕の真似をして終始笑っているんですよ」と言っていた通り、沖田監督は多くのスタッフに愛される監督で『モリのいる場所』では、樹木希林さんに舞台挨拶直前に「もう少しお洒落にピシッと」と言われ、ネクタイをコーディネートされていたのはよく覚えています。

 

 

 

 

 

また黒沢清監督は、多くの俳優陣が出演を切望する世界的に知られる監督の一人です。「一度仕事をしたことがある蒼井優さんと東出昌大さんは必ず役を引き受けてくれると思ったし、高橋一生さんは各方面からの噂で演技が抜群に上手いと言われていて、いつか出ていただきたいとオファーしたら快く引き受けてくれた」と舞台挨拶で監督が話していましたが、確かにその願いは叶い、『スパイの妻』のキャスティングは絶妙であり、画の全てが極上の作品でした。

 

 

 

 

 

そしてどの監督も出会いを大切にし、俳優の成長を楽しみにしているという共通点があり、映画祭最終日のゲスト、三木康一郎監督は「伊藤健太郎くんとはドラマ「東京 ラブストーリー2021」にカンチ役で出てもらっていた時に、撮影の合間に“次の映画『弱虫ペダル』に出て”と言ったら喜んでくれた」と言い、「僕は若くて本気の俳優と仕事をしたい。だって未来は若者たちにあって、若い子にも映画を見て欲しいでしょ?」と締め括りました。

 

 

 

 

 

時々思うのですが、映画は難しく解説してこそ尊敬されるようなものでは無いんですよ。確かに監督の作風やカメラワークなどを語ると“通”に見えるかもしれないですが、本来は皆で楽しむ為に生まれた娯楽。あと、女性の映画ファンによる俳優への洞察力と探究心は素晴らしいと時折思うのですが、こうやって監督の作品歴を紐解くと結局は人と人との繋がりで映画は生まれていくものだと分かるし、そこから人間関係が見えてきて、様々な映画やドラマが繋がり相関図になっていくのも“映画の面白さ”なんですよね。

ちなみに「トロント日本映画祭in日比谷」は今年からYouTube配信でトークショーの模様をアーカイブとして残していますので、よければご覧くださいませ。

映画パーソナリティ 伊藤さとり

ハリウッドスターから日本の演技派俳優まで、記者会見や舞台挨拶MCも担当する。全国のTSUTAYA店舗で流れる店内放送wave−C3「シネマmagDJ、俳優対談番組『新・伊藤さとりと映画な仲間たち』(YouTubeでも配信)、東映チャンネル×シネマクエスト、映画人対談番組『シネマの世界』など。NTVZIP!」、CX「めざまし土曜日」TOKYO-FMJFN、インターFMにもゲスト出演。雑誌「ブルータス」「Pen」「anan」「AERA」にて映画寄稿。日刊スポーツ映画大賞審査員、日本映画プロフェッショナル大賞審査員。

 

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