[劇中で気になるリアルさ]
最近、気になることが増えまして。
例えば、『STAND BY ME ドラえもん2』では、3歳ののび太がスネ夫やジャイアン達と子供達だけで公園で遊んでいることが、今ならあり得ないよなと思い始めたら、気になってしまって、以降、物語に入り込めなくなってしまったり。
じゃぁ、自分たちが小さい頃はどうだったんだろう?ネットで調べようにも昭和の子育ては出てこない。けれど記憶が正しければ、小学校に上がってから子供だけで公園へ遊びに行っていたような。
例えば、『アンダードッグ』では、夫婦関係や同棲している者同士での夜の営みは、終わったらすぐパジャマ着て〜!と現実的に考えながらも、いやいや、人によってはこんなロマンチックもあるかもしれない、とその後は映画に没入しておりました。
よく言われる、歳を取って気になることが増えたのか?だけどそこで気付かされたのは、“経験を重ねて現実を知ったから”でありました。映画から学ぶことは多くても、現実には敵わない、けれど自分の経験や知識が全て正しいというわけではない。2020年の世界人口は77億9500万人だそうなので、十人十色の経験があるのだもの。ここは作り物の世界、寛容に。
[ザ・チャイルドに共感を求めるのか?]
例えば、「マンダロリアン」シーズン2で、ザ・チャイルドが、一緒に旅をしていたエイリアンの女性の子供である卵を食べてしまうシーンには、「可愛いと思っていたのに」「虐殺」などの賛否両論が集まったそうだけれど、いやいや、好奇心旺盛な子供ならやる。大人に食べちゃダメだと言われても間違いなくやる。物分かりの良い子ばかりを映画で観ていたら、現実で親になった途端に逃げ出したくなるよ、と思うのです。実際、うちはその連続であり、ドラマや映画に出てくる子供たちの良い子ぶりに今は不信感さえ抱いております(笑)
現実を知っていると更に発見が生まれる映画やドラマたち。
映画やドラマは夢を生み出し、時に現実に立ち戻らせてくれる不思議な娯楽なのです。
[少ない情報量が感性を育てる]
そんな中、アニメ界の最高峰といわれるアヌシー国際映画祭で、実験的かつ革新的な長編に贈られるコントルシャン賞を受賞した『Away』は、セリフが無い現実と非現実的な世界の狭間で、生命の誕生の素晴らしさに気付かされ、人間は自然の一部だと再認識出来る映画だったのです。しかも、「かわいい子には旅をさせよ」的な物語の中に、五感を研ぎ澄ませ、自分なりに考える力を培うギミックが詰まっておりました。
音が多くて情報に溢れた現実の世界から非現実の世界へ。
そりゃぁ『鬼滅の刃』は確かにスゴイし、ドラマティックで好きだけれど、画から湧き上がる感情を探し出すという、子どもの知育に役立つ『Away』も見せて欲しい。
今やネットが身近になったことで非現実と現実の境目を見失い、理想が覆された時のショックを書き込んだり、“共感”することが大事だと思ってしまう子供たちが多い時代。
自分で考え、感じ取り、味わうことで、物事は多角的に見えてくる。映画やドラマは、あくまでも作り物の世界。共感するしないなんて重要じゃない。何を感じて、何に気付くか、色んな視点で考えられる脳を作り、心を成長させるのが映画体験であり、人生なのだから。
「Away]
2019年製作/81分/G/ラトビア
原題:Away
配給:キングレコード
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映画パーソナリティ/心理カウンセラー:伊藤さとり
年間500本以上は映画を見る映画コメンテーター。
ハリウッドスターから日本の演技派俳優まで、記者会見や舞台挨拶MCも担当する。全国のTSUTAYA店舗で流れる店内放送wave−C3「シネマmag」DJ、俳優対談番組『新・伊藤さとりと映画な仲間たち』(YouTubeでも配信)、東映チャンネル×シネマクエスト、映画人対談番組『シネマの世界』など。NTV「ZIP!」、CX「めざまし土曜日」TOKYO-FM、JFN、インターFMにもゲスト出演。雑誌「ブルータス」「Pen」「anan」「AERA」にて映画寄稿。日刊スポーツ映画大賞審査員、日本映画プロフェッショナル大賞審査員。
心理カウンセリングも学んだことから「ぴあ」などで恋愛心理分析や映画心理テストも作成。
著書「2分で距離を縮める魔法の話術」(ワニブックス) 伊藤さとり公式HP itosatori.net