4/5(金)より公開
『オッペンハイマー』などの超大作と並び、アカデミー賞の作品賞、脚本賞にノミネートされた注目作。
12歳で離れ離れになった男女の
24年目の再会を描くラブストーリー『パスト ライブス/再会』。
惹かれ合いつつ別れることになった12歳の少女ナヨンと少年ヘソン。
12年後、カナダからNYへ渡り、ノラとなったナヨンと韓国で生きるヘソンは、オンラインで再会。
そしてまた12年後、アメリカ人の夫と暮らすノラをヘソンが訪ね、2人は24年ぶりに再び出会う。
シンプルに観れば幼なじみの男性と現在の夫、2人の間で揺れる女性を描く大人のラブストーリー。
タイトルのパストライブス=過去世や、イニョン=縁、輪廻転生といった仏教からくる考え方で語られるのが、日本人的にはしっくりくるし、選ばなかった道への未練、「もしも、あの時こうしていたらー」という気持ちにもすんなり共感。
私も過去の恋愛を思い出して、甘酸っぱい気持ちになったりして。
12年毎の3部構成で描かれない部分が多いのに、見つめ合う眼差しや表情、会話の間で、年月の流れと感情を伝える主演のグレタ・リー、ユ・テオ、ジョン・マガロの演技と、セリーヌ・ソン監督の
抑えた演出も素晴らしく。
情感あふれる映像と音楽のセンスも抜群で、静かに淡々と紡がれる物語から滲み出る、恋とか愛では語れない奥深い感情に心掴まれた。
劇中に「捨てるものがあれば得るものもある」というセリフがあったけれど、何かを捨てて何かを得る。
ノラはヘソンを通して、12歳で捨ててしまった故郷への郷愁、泣き虫の韓国人の少女ナヨンへの愛惜を感じているようで。
複雑な想いが心に沁みた。
脚本はセリーヌ・ソン監督が、12歳でソウルからカナダに移住した
自身の体験をベースに執筆したそうで、この感覚は移住を経験した人ならではだと思う。
そしてクドカンが、ドラマ『ふてほど』で高らかに歌い上げていた“寛容“が描かれている映画でもあり。
自分の感情を抑制して、相手の生き方、考え方を尊重するヘソンとノラの夫の寛容さに心打たれ。
ラストでのヘソンのセリフは、本当に切なく泣けてしまった。
さて、今回の写真は韓国、カナダ、アメリカの国旗をピックアップ。
先にも書いたようにこの映画は、多くの人が共感できると同時に、3つの国で生きた人ならではのラブストーリーでもあると思うので。
監督/脚本:セリーヌ・ソン 出演:グレタ・リー、ユ・テオ、ジョン・マガロ 2023年/アメリカ・韓国/カラー/ビスタ/5.1ch/英語、韓国語/字幕翻訳:松浦美奈/原題:Past Lives/106分/G 提供:ハピネットファントム・スタジオ、KDDI 配給:ハピネットファントム・スタジオ Copyright 2022 © Twenty Years Rights LLC. All Rights Reserved 公式サイト:https://happinet-phantom.com/pastlives 公式X:@pastlives_jp
映画ライター 尾鍋栄里子(おなべえりこ)
Twitter @onabe11
映画館バイト→雑誌映画担当→映画ライターと、人生の半分を映画業界の片隅で生きる名古屋人。
朝日新聞、中日新聞、フリーペーパーなどで映画紹介記事を執筆中。
映画フリーペーパー C2【シーツー】web版ブログ〝オー!ナイス!”不定期掲載