11月10日(金)公開の映画『花腐し』の先行上映舞台挨拶が24日名古屋の伏見ミリオン座で行われ、主演の綾野剛さんと荒井晴彦監督が舞台挨拶に登壇。満員の観客が見守る中、ふたりの顔合わせ秘話や雨のシーンの撮影裏話などを明かしました。※以下敬称略
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ふたりの男とひとりの女が織りなす、切なくも純粋な愛の物語
本作は、第123回芥川賞を受賞した松浦寿輝氏の同名小説「花腐し」もとにしたストーリー。綾野演じるピンク映画業界で生きる映画監督・栩谷(くたに)と柄本佑演じる脚本家志望の男・伊関が、梅雨のある日に出会い、自分たちが愛した女優・祥子(さとうほなみ)について語り始め、切なくも純粋な愛の物語が展開していきます。
この日、満席の会場から大きな歓声と拍手を受けて登場したふたり。綾野が「素敵な劇場に来られてとても嬉しい」と笑顔を見せ、ふたりの男とひとりの女が織りなす、濃密な愛の物語である作品の「ムードを壊さないようにしたいんですが」と前置きしつつ、「映画とこの時間の寒暖差を感じてもらうのも一つの醍醐味だと思います。みなさんにとっていい時間になれば」と挨拶。
誕生日が同じだと知った監督
「よし、これで口説こう!」と
荒井は客席を見渡し「18歳未満お断りの映画なんだけど、(18歳未満の人が)いそうな感じがするね(笑)」と笑いを誘いました。また、岐阜県出身の綾野には「おかえりなさい」という声援も飛び、「帰る場所があるっていいですね。ただいまです」と、温かな雰囲気の中で舞台挨拶がスタート。
脚本家として数々の名作を生み出し、監督としても高い評価を受ける荒井は、綾野にとって「実際に存在しているのかすらわからない。都市伝説化していた」というほど偉大な映画界の大先輩。『火口のふたり』(19)に続く、監督4作目となる本作のオファーを「本当に嬉しかったです。役者を始めて20年経ちますが、継続していく理由を見つけるのがどんどん大変になっていく。その中で続けているとこんなご褒美があるんだなと感じました」。そして「ぜひやりたいです!」と即答し、顔合わせに臨んだという。
ところが、当の荒井はそれを知らず、「誕生日が同じだということをネットで見つけて、よし、これで口説こう!と。“誕生日一緒だね”って。それで断られたらどうしようかと思っていた(笑)」と、ドキドキしていた初対面の心境を明かすと、綾野は「口説かれましたね(笑)」と笑顔に。「最初は緊張しましたが、本当にチャーミングで愛情深い方でした」と、撮影を通して感じた荒井の魅力を教えてくれました。
ピンク業界に生きる映画監督の栩谷を演じた綾野は、脚本家志望だった伊関との出会いをきっかけに、かつて同棲していた女優に思いを巡らせていく。お互いが愛した女について語り合う伊関役の柄本佑について「同じ作品に出演したことはありますけど、ここまで会話を交わす役は初めて。個人的に佑くんのファンだったので嬉しかったです」と共演を喜び、「佑くんの芳醇な声を聞いていると、ついうっとりしてしまうので別の集中力が必要でしたけど、僕が演じた栩谷も同じ状態でしたからね」と、役との親和性の高さを語りました。また「本格的に役者を始めたのが同じ2003年。同期だとわかって驚きました」と、意外な共通点も明かす。一方、柄本を5歳の頃から知る荒井は「あいつは天才肌だからね。説明風なセリフがあると棒読みしたり、飛ばしたりするし(笑)」と暴露し、会場を笑わせました。
雨降らしチームが素晴らしくて
嵐のような雨に3秒でずぶ濡れでした(笑)
続いて、本作の情緒を生み出している雨のシーンについて質問が及ぶと、綾野は「実は映像に映るようにするためには普通の雨じゃダメなんです。イメージで言うなら、雨粒の大きさが一円玉ぐらい。ホースをグニュって潰すとビューッとなるじゃないですか?それが何本も降ってくる感じ。雨降しチームが本当に素晴らしかったんですが、本当に嵐のようで。3秒でずぶ濡れでした(笑)」と、映像ではわからない現場の壮絶さを語り、「予告にもある雨の中で倒れるシーンでは、変な倒れ方をすると呼吸ができないぐらい。本当に溺れるよう。そんな雨の中で(祥子役の)ほなみさんも僕も佑くんも平然とやってました」と、雨のシーンを振り返った。
また荒井も「しかもモノクロですからね。普通の量では映らないから、さらに雨の量を増やしたんです」と、モノクロームとカラーの映像が交錯する、本作ならではの裏話を披露。綾野は「冒頭の方の雨のシーンはマックスに雨量が多いので、ここか!と思って見てもらえたら。ある意味ではちょっとほくそ笑んでいいシーンだと思います」と注目ポイントをアピールしました。
「ものすごく体力が必要な映画だから、見る前に少しでも楽しい時間を過ごして欲しい」という綾野の気遣いと、ユーモアあふれる荒井のトークによって、終始笑いが絶えない和やかな雰囲気で行われた舞台挨拶。
僕にとって大切な作品(綾野)
最後まで見てくれたら、おまけが(荒井監督)
最後に綾野が「僕にとってとても大切な作品になりました。ここまで見方を決めることができない作品に出会ったことはありません。これはみなさんに見ていただいて完成される作品。見終わった後にそれぞれの中で育んでいただくことで、映画が育っていく。ぜひよろしくお願いいたします!」と、観客に呼びかけ。そして荒井が「意図していた訳ではないんですけど、結果として綾野ファンに大サービスの映画になりました。映画の最後まで見てくれたら、おまけがついています」と言うと、すかさず「あっ、エンドロールの後にまだ映像がありますからね」と綾野がフォロー。さらに「そこまで言うの?」と荒井がツッコミを入れ、最後まで息の合ったやり取りで会場を盛り上げました。
そして舞台挨拶は終了…と思いきや、綾野が観客との写真撮影を提案!思わぬサプライズに会場内から喜びの声と大きな拍手が起こりました。綾野は客席全体が入るよう自らアングルを試行錯誤しながら撮影。観客は大いに盛り上がり、映画を見る前の最高の時間を楽しんでいました。
映画『花腐し』は11月10日(金)より伏見ミリオン座ほかで公開です。
※タイトルの「花腐し」(はなくたし)とは、きれいに咲いた卯木(うつぎ)の花をも腐らせてしまうという、じっとりと降りしきる長雨のこと。
シネピーでは、舞台挨拶前にふたりにインタビュー。その模様は後日掲載します。
舞台挨拶MC 松岡ひとみ/取材 にしおあおい( シネマピープルプレス編集部 )
作品紹介
監督:荒井晴彦
原作:松浦寿輝『花腐し』(講談社文庫)
脚本:荒井晴彦 中野 太
出演:綾野剛 柄本佑 さとうほなみ
吉岡睦雄 川瀬陽太 MINAMO Nia
マキタスポーツ 山崎ハコ 赤座美代子
/奥田瑛二
2023年製作/日本/137分/【R18+】
配給:東映ビデオ
公式サイト:https://hanakutashi.com/
©2023「花腐し」製作委員会