エリコのフォトdeシネマ♪ Vol.124『月』

 観る側の覚悟も問われるヘヴィ級の作品『月』

10/13(金)より公開中

原作は相模原障害者施設殺傷事件に着想を得た辺見庸の小説。

スターサンズの故・河村光庸プロデューサーが、
「最も挑戦したかった題材」で、
オファーを受けた石井裕也監督が、
「撮らなければならない映画だと覚悟を決めた」と言うだけあって、
観る側の覚悟も問われる超ヘヴィ級の作品だった。

舞台となるのは重度障害者施設。
森の奥という立地と夜のシーンの多さ、
さらにそこで働く主人公の洋子も同僚の陽子も、
鬱屈した気持ちを抱えていて、
暗く重苦しい雰囲気が漂う。

そして、もう1人の同僚さとくん。
熱心に仕事に取り組む好青年のようでいて、
何気ない言動がどこか不可解。
その不気味な違和感が、
不穏な空気を増幅させていく。

そんなさとくんを自然体で演じる磯村勇斗が、
とにかく凄かった。
特に宮沢りえ演じる洋子との対話シーンは圧巻。
優生思想を振りかざし、
人間とは?心とは?命の価値とは?と、
強烈な問いを投げかけるさとくんの言葉に、
自分の矛盾を暴かれて、
反論する言葉が見つからず。
飲み込まれそうになって恐怖に震えた。

全体で見ると首を傾げる演出もあったけれど、
簡単に答えの出せない難題に向き合う、
きっかけをくれる映画であることは間違いなく。
尋常じゃないほど後を引く。

さて今回の写真。
ヘヴィな映画だけに迷ったけれど、
この映画の唯一の癒し、
オダギリジョー演じる昌平にまつわるアイテムを。
昌平と洋子が付き合うきっかけになった、
玉子のお寿司をピックアップしました。

 

 

映画ライター 尾鍋栄里子(おなべえりこ)

Twitter @onabe11
映画館バイト→雑誌映画担当→映画ライターと、人生の半分を映画業界の片隅で生きる名古屋人。
朝日新聞、中日新聞、フリーペーパーなどで映画紹介記事を執筆中。
映画フリーペーパー C2【シーツー】web版ブログ〝オー!ナイス!”不定期掲載

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