伊藤さとりの映画で人間力UP!『イノセンツ』

今、子供が主人公の映画が増えています。是枝裕和監督の『怪物』を筆頭に、公開中のルーカス・ドン監督の『CLOSE クロース』もそうであり、カンヌ映画祭で前者は脚本賞とクィア・パルム賞、後者はグランプリを受賞。そして本作『イノセンツ』もカンヌに出品された作品であり、ノルウェーのアカデミー賞といわれるアマンダ賞で、監督賞、撮影賞、音響賞、編集賞を受賞しました。

では、どうして子供が主人公の映画がここまで評価されるのか?それには、まだはっきりと性自認がしづらい11歳以下の子供の好奇心や、多感さ、物事の良し悪しを学んでいる最中ならではの発想や行動が未知数であること、更には大人の言動や対応が子供の精神状況に影響を与えるので注意すべき、というメッセージを伝えるには最適な世代なのかも知れません。

 

 

 

 

 

 

 

 

本作に登場する子供たちもそういった意味で7歳から11歳というセンシティブな年頃の少年少女。しかも「面白い子」を重視しキャスティングされた4人の子供たちが性別も違えば人種も違った点が、偶然とはいえ幼少期の子供は外見などあまり気にせず仲良くなれるという事実を含んでいるようにも見えました。更に子役4人の凄まじいほど自然な演技は圧巻。ここは監督がとことんワークショップで子供たちと「その時の感情」について話し合ったことから生まれた成果であり、それにより全員がアマンダ賞で最優秀俳優賞にノミネートされたのは納得です。

 

 

 

なにより大友克洋ファンであれば、気づく「童夢」と類似する団地と超能力、「いたずら」から始まるという設定。ここはエスキル・フォクト監督が「童夢」からインスピレーションを得たと公言しているので日本人としても好感が持ててしまう点。けれど、アニメで表現しそうなテーマをCGに頼りすぎずに、大人には気づかれない水面下でのエスパーバトルとしてテレパシーや念動力を使った怪我として見せたことで、現実とファンタジーの境界線のような作品に。そこから見えるのは超能力ではなく、子供たちの「繊細な感情」を監督が描きたかったのだろうということでした。

 

 

 

さすが、カンヌ映画祭最優秀女優賞受賞、アカデミー賞国際長編映画賞、脚本賞にノミネートされた『わたしは最悪。』の脚本家であるエスキル・フォクト監督のオリジナル脚本作品。子供を観察し尽くしたことから生まれた友情と孤独の物語は、夜22時に陽が沈むノルウェーならではの暗がりではないホラーとしても大満足の作品でした。

 

2021年製作/117分/PG12/ノルウェー・デンマーク・フィンランド・スウェーデン合作
原題:De uskyldige
配給:ロングライド

(C)Mer Film

 

 

伊藤さとり

映画パーソナリティ(映画評論・映画解説/心理カウンセラー) 

ハリウッドスターから日本の演技派俳優まで、記者会見や舞台挨拶MCも担当する。全国のTSUTAYA店舗で流れる店内放送wave−C3「シネマmagDJ、俳優対談番組『新・伊藤さとりと映画な仲間たち』(YouTubeでも配信)、東映チャンネル×シネマクエスト、映画人対談番組『シネマの世界』など。NTVZIP!」、CX「めざまし土曜日」TOKYO-FMJFN、インターFMにもゲスト出演。雑誌「ブルータス」「Pen」「anan」「AERA」にて映画寄稿。日刊スポーツ映画大賞審査員、日本映画プロフェッショナル大賞審査員。

 

 

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