ゆーと。のピースオブシネマVol.29『渇水』

 

不快な夏の暑さと渇きを感じるフィルム映像で繰り広げられる

それぞれのストーリーに胸が苦しくいっぱいになりました。

ゆーと
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こんにちは! 優斗です!

渇水

今回は、とある水道局員の葛藤を絶妙に描いた傑作ヒューマンドラマ、「渇水」の感想です。

蒸し暑い夏、活発な2人の子供の夏の1ページから、かわいらしい雰囲気のシーンから始まった今作ですが、だんだんとシリアスになっていき、のめり込んでしまいました。

 

 

 

 

 

生田斗真さん演じる水道局員の岩切は、料金滞納が続く利用者に対し、水道事業者が給水停止処分を行う訪問活動を続ける中で、とある家庭に出会い、波乱に満ちた境遇に同情せざるを得なくなっていく姿を描く、、。

 

 

 

 

今作は、その“とある家族”に出会ってからの主人公の変化を単純に描くのではなく、岩切自身の背負っている境遇との絶妙なバランスの絡み具合から、物語全体に深みや人物の行動に至るまでの理由がしっかり伝わってきます。
ですが、全体的に説明的になりすぎておらず、映像や所作、等々で語りすぎないところに映画的な美しさを感じました。

 

 

 

 

そして、子役2人のお芝居が本当に素晴らしくて、とあるシーンでの悲壮感漂う目が忘れられません。水道も止められるか止められないかという、常にギリギリの生活を強いられ、幼いのに強く耐え続けている姿に、本当に心がいっぱいになり、苦しくなりました。
生田斗真さんのお芝居も、横顔のショットが多いのですが、全ショット違う顔のような印象があり、葛藤を背負っている引き攣った遠くの方を眺めたような表情も印象的でした。表現力の豊かさが素晴らしかったです。

困っている人は困っている者同士で、少しずつしか助け合うことができないのでしょうか。余裕のある人は気づいてあげられないものなのでしょうか。それとも現代は、みんな余裕がないのでしょうか。
観た後も何が正解の選択か分からないですが、言語化が難しい、何か他人事ではない課題を強く感じました。自分なりの向き合い方を模索したいと思います。

人間の匂いが、葛藤が、ドライに生々しく映し出され、社会にも力強い問題提起、メッセージを残しています。要所要所でホッコリもあり、強烈な作品でした。

ぜひ、映画館で色々な社会問題を考えるキッカケに、今作を観てみてください!

次回は、
「リトル・マーメイド」の感想です!
では、また次回!

作品概要

生田斗真

門脇麦 磯村勇斗

山﨑七海 柚穂/宮藤官九郎 池田成志

尾野真千子

 

原作:河林満「渇水」(角川文庫刊)

監督:髙橋正弥 脚本:及川章太郎

音楽:向井秀徳

企画プロデュース:白石和彌

©「渇水」製作委員会  2023/日本/カラー/ヨーロピアンビスタ/100分

ゆーと。

映画観賞:年間200本
将来は映像監督めざしています!初の短編映画製作しました。Twitter @yutomiyake

 

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