エリコのフォトdeシネマ♪ Vol.27 『トゥルー・ヒストリー・オブ・ザ・ケリー・ギャング 』⁣

オーストラリアの英雄を新解釈で描く
『トゥルー・ヒストリー・オブ・ザ・ケリー・ギャング』

19世紀のオーストラリアで権力と差別に立ち向かい、英雄として語られてきた反逆者ネッド・ケリーを、1人の若者として描いたピーター・ケアリーのブッカー賞受賞作を映画化。

恥ずかしながらネッド・ケリーについての知識がなく原作も未読なので、オリジナルの要素がどの程度入っているのかわからないけれど、冒頭「この物語に真実は含まれていない」とテロップが出るので、ジャスティン・カーゼル監督の解釈だと理解。

アイルランド移民の家庭に生まれ、貧しさと差別に苦しめられる中で、国中にその名を轟かすおたずね者となるネッド・ケリー。

映画で描かれるネッド・ケリーは強烈な母親の呪縛から逃れられず、自らのルーツと運命に囚われた哀しい若者で、破滅へと突き進む後半は見ているのが辛かった。

ドレスを着た男が馬で駆ける冒頭から、荒凉とした風景、光の点滅など印象的なシーンが多く、警官隊と対決するクライマックスをネッド目線で見せ、壮絶な状況を体感させる映像が凄まじい。

主演は「1917 命をかけた伝令」のジョージ・マッケイ、そして「アオラレ」では巨大化して観客を驚かせたラッセル・クロウが本作でも誰だかわからない容貌で登場。
またしても貫禄の演技を見せてくれる。

さて今回の写真はドレスをイメージ。
ネッド・ケリーが兄弟や仲間たちと結成した〝ケリー・ギャング”は闘う時に全員がドレスを着用。自作の鎧を着ていたのは事実だけどドレスの真偽は不明。
でも映画ではドレスを着ることはアイデンティティの象徴で、ドレスと強盗という行為のコントラストが鮮烈だった。

「トゥルー・ヒストリー・オブ・ザ・ケリー・ギャング」

2019年製作/125分/PG12/オーストラリア・イギリス・フランス合作
原題:True History of the Kelly Gang
配給:アットエンタテインメント

(C)PUNK SPIRIT HOLDINGS PTY LTD, CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION, ASIA FILM INVESTMENT GROUP LTD AND SCREEN AUSTRALIA 2019

フォトdeシネマ

映画ライター 尾鍋栄里子(おなべえりこ)
映画館バイト雑誌映画担当映画ライターと、人生の半分を映画業界の片隅で生きる名古屋人。
朝日新聞、中日新聞、フリーペーパーなどで映画紹介記事を執筆中。
映画フリーペーパー C2【シーツー】web版ブログ〝オー!ナイス!不定期掲載

 

 

 

 

 

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