エリコのフォトdeシネマ♪ Vol.130『カラオケ行こ!』

「紅」の破壊力に驚愕!笑いと涙の青春ドラマ

『カラオケ行こ!』

歌に悩むヤクザが、合唱部部長の中学生に歌のレッスンをお願いする!?

和山やまのコミックを原作にしたいかにも漫画的なありえない設定のストーリーを、『1秒先の彼』の監督:山下敦弘×「アンナチュラル」や「逃げ恥」の
脚本:野木亜紀子という意外な組み合わせで映画化。

どんな映画になるのか楽しみだったけど、めちゃくちゃ笑えてちょっぴり泣けて、過ぎゆく青春の儚さに切なさが込み上げる、愛すべき映画になっていた。

中学生に馴れ馴れしく絡む子供みたいなヤクザの狂児と、怯えながらもダメ出ししまくる大人びた毒舌中学生の聡実。

ミスマッチな2人のやり取りに、終始ニヤニヤが止まらない。

本気とギャグの境界がわからない、掴みどころのないヤクザの狂児を飄々と演じる綾野剛が抜群!
『花腐し』でも歌を披露していたけれど、今回は何曲もの歌を大サービス。なかでも「紅だー!」の連打には大笑い。

さらに監督、脚本家、綾野剛も参加したオーディションを勝ち抜き、思春期真っ只中の中学生・聡実を演じる齋藤潤もいい。

後から『正欲』で磯村勇斗の役の中学生時代を演じていた、あの少年だと知って驚愕。『正欲』では(確か)セリフがなかったけれど、
今回は胸アツものの歌声まで聴かせる大熱演。これからの活躍に期待したい!

狂児の仲間のヤクザに、合唱部のメンバー、聡実くんの両親に至るまで脇の脇のキャラクターにも味があり、
全編を貫く山下監督らしいオフビートなユーモアと、失われゆくものへの想いを滲ませる、野木脚本のバランスもハマってた。

さて、今回の写真のアイテム、ひとつはオレンジジュース。コワモテのヤクザが、聡実のためにオレンジジュースを用意するシーンが面白く。
そしてもうひとつは鮭の皮。愛とは与えるもの…の流れから鮭の皮が映し出される(しかもスローでw)くだりに笑ったわー。

カラオケ行こ! 現在公開中

2024年製作/107分/G/日本
配給:KADOKAWA
劇場公開日:2024年1月12日

映画ライター 尾鍋栄里子(おなべえりこ)

Twitter @onabe11
映画館バイト→雑誌映画担当→映画ライターと、人生の半分を映画業界の片隅で生きる名古屋人。
朝日新聞、中日新聞、フリーペーパーなどで映画紹介記事を執筆中。
映画フリーペーパー C2【シーツー】web版ブログ〝オー!ナイス!”不定期掲載

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