『サイド バイ サイド 隣にいる人』
先月『ひとりぼっちじゃない』が公開された企画プロデュース:行定勲×監督・脚本・原案:伊藤ちひろ コンビの第2作。
「観る人によって感じ方が変わる」と言われていた前作と同様に、本作も観る人の感性に委ねる部分の多い、考えるより感じろ(?)的な作品。
わかりやすい説明がないので、頭にたくさんの「?」浮かぶけれど、美しい緑と光、静かでゆったりとした時間の流れが生み出す不思議な世界が心地よかった。
主人公の未山は坂口健太郎を撮りたいという、伊藤ちひろ監督の想いから生まれたキャラクターだそうで、坂口健太郎はふわふわと掴みどころのない未山を柔らかな空気感で好演。
現実味の薄い未山に対して、地に足を着けて生きている恋人・詩織役の市川実日子もいい。
不思議な力を持つ恋人も、訳ありの元カノも全部まとめて引き受ける、強く大らかなキャラクターがチャーミング。
彼女の娘・美々役の磯村アメリも愛らしく見ているだけで頬がゆるんでしまう。
美山の元カノ・莉子役の齋藤飛鳥のミステリアスで儚げな佇まいも魅力的で。
今回の写真のアイテムは、白いモノしか食べない莉子の白いキャンディをピックアップ。
観る人に解釈を委ねる謎な部分が多いので、勝手に解釈してみました。
ネタバレになるのでご注意を。
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サイトのストーリーによると、未山は「目の前に存在しない“誰かの想い”が見える青年」
だそう。
だから未山が置き去りにした過去=元カノ莉子を引き受けていた後輩の生霊が見えても、目の前にいる病人の想いは読み取れない。その代わり、その人の死期は感じてた。未山は生と死、この世とあの世の狭間にいるのかも。
生の輪郭が曖昧な未山の存在が、詩織と美々 母娘や森の生き物も命の輝きを際立たせていた気がする。
そして劇中で未山が何度も訪れる湖のような場所。
ただのお気に入りの場所かと思ってたけど、未山が死んでしまったラストから考えると、この世とあの世の境、三途の川のような場所だったのかなと推測。
自分が死ぬことを知っていた未山が、置き去りにした元カノに対する罪を償い元気になるのを見届けて、思い残すことなく亡くなった、
ってことなのかな…
作品名:『サイド バイ サイド 隣にいる人』公開中 監督・脚本・原案:伊藤ちひろ 企画・プロデュース:行定勲 主題歌:「隣」クボタカイ 出演:坂口健太郎 齋藤飛鳥 浅香航大 磯村アメリ 茅島成美 不破万作 津田寛治 井口理(King Gnu) 市川実日子 上映時間:130分/2023年(日本) 配給:ハピネットファントム・スタジオ 公式:https://happinet-phantom.com/sidebyside/ 公式Twitter: @sidebyside_2023 ©2023「サイド バイ サイド」製作委員会
映画ライター 尾鍋栄里子(おなべえりこ)
映画館バイト→雑誌映画担当→映画ライターと、人生の半分を映画業界の片隅で生きる名古屋人。 朝日新聞、中日新聞、フリーペーパーなどで映画紹介記事を執筆中。 映画フリーペーパー C2【シーツー】web版ブログ〝オー!ナイス!”不定期掲