婚約者にフラれて落ち込む青年・民夫と、ワンと鳴けない保護犬・ハウ。
1人と一匹の温かな絆の物語…ではあるけれど、『ジョゼと虎と魚たち』『グーグーだって猫である』シリーズを手掛けた監督・犬童一心と、『キセキーあの日のソビトー』の脚本家・斉藤ひろしは、それだけでは終わらせない。
不幸なアクシンデントで離れ離れになった民夫の元を目指すハウが、旅の途中で出会うのは、悲しい顔をした女子高生、亡き夫が遺した傘屋を営む老婦人、暴力をふるう彼から逃げた女性。
ハウを通して震災の風評被害、シャッター通りと化した商店街、DV被害などの社会問題が垣間見え、それぞれの悩みや痛みが伝わってくる。
そして傷付いた人たちにそっと寄り添うハウの無垢な優しさにウルウル。
ラストも安易な方向に持っていかないところがミソ。
感じ方はそれぞれだけど、ハウの物語として見るとこの結末も自然な流れなのかな。
そして何よりハウが可愛い!
それがこの映画最大の魅力。
ハウ役のベックは、有名なドックトレーナー・宮忠臣のトレーニングを受けて撮影に挑んだそうで、演技(?)は完璧。
振り回されキャラを演じさせたらピカイチの田中圭との相性もバッチリ。
ハウと民夫の日常を見ているだけで自然と笑顔に。
癒し犬ハウが観ているこちらも、優しい気持ちにさせてくれる。
柔らかい空気感を醸す池田エライザをはじめ、キャストもいいし、石田ゆり子のナレーションも心地いい。
さて今回のアイテムはボール。
映画にも出てくるけど。投げたボールをワンちゃんに取ってきてもらうって、憧れちゃうわ〜。
映画ライター 尾鍋栄里子(おなべえりこ)
映画館バイト→雑誌映画担当→映画ライターと、人生の半分を映画業界の片隅で生きる名古屋人。 朝日新聞、中日新聞、フリーペーパーなどで映画紹介記事を執筆中。 映画フリーペーパー C2【シーツー】web版ブログ〝オー!ナイス!”不定期掲
作品紹介
婚約者にあっさりフラれ、人生最悪な時を迎えていた市役所職員・赤西民夫(田中圭)。横浜で一人空虚な日々を送る彼は、上司からの勧めで、飼い主に捨てられて保護犬になってしまった真っ白な大型犬を飼うことに。
ワンと鳴けず「ハウッ」というかすれた声しか出せない、とびっきり人懐っこいこの犬を、民夫は“ハウ”と名付け、1人と1匹の優しくて温かい日々が始まります。
民夫にとって最初は戸惑うことも多かったハウとの暮らしも、何をするにもいつも一緒な“ふたり”の絆は次第に深まり、いつしかかけがえのない存在となっていきます。ハウと民夫の最高に幸せな時間はこのままずっと続くと思っていたのですが…。
『ハウ』 監督・脚本:犬童一心 原作・脚本:斉藤ひろし 出演:田中圭 池田エライザ 野間口徹 渡辺真起子 モトーラ世理奈 深川麻衣 長澤樹 田中要次 利重剛 伊勢志摩 市川実和子 田畑智子 石橋蓮司 宮本信子 配給:東映 公式サイト: https://haw-movie.com/ 公式Twitter: @haw_movie2022 ©2022「ハウ」製作委員会
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