伊藤さとりの映画で人間力UP!女どころか男にも言える本音?『わたしは最悪。』

幼少期の記憶を失った少女の禁断の能力を描いた『テルマ』で才能に注目し、ラース・フォントリアーの遠縁であることでも印象に残った監督ヨアキム・トリアー。

そんな彼の新作は、今年のアカデミー賞で、国際長編映画賞と脚本賞にもノミネートされ、『ドライブ・マイ・カー』の対抗馬として話題になった『わたしは、最悪。』という作品。
見て驚いたのは、女心の虚いや迷い、そして強さをここまで理解しているヨアキム・トリアーの分析力であり、男女平等を意識するアカデミー賞が選んだだけある、女性の社会進出と立ちはだかる壁を爽快に描いた「今」の映画だってことでした。

 

 

 

 

主人公・ユリヤは聡明で医大へと進んだものの、「わたしが興味あるのは心よ」と心理学の道へと方向転換。
そこから写真家へと更にやりたいことを見つけ出し、将来が定まらない状態で、30歳のある日、人気漫画家アクセルと出会うわけです。しかも結構な年上。才能溢れる年上の男性って、
その年頃には魅力的に写るもので想像通り恋に落ち、アクセルはというと子どもを持ちたくなって彼女との結婚を考え始めます。けれどまだまだ家庭に納まりたくはないユリヤ。

 

 

 

アクセルと居たら“自分が主人公になれない”と嘆きながら、彼女は新たな逃げ場を見つけてしまうのですよ。
主演レナーテ・レインスヴェは、カンヌ国際映画祭コンペディション部門で最優秀女優賞を本作で受賞。恋を知って自信を持ち、輝き始める彼女の心情を見事に演じきり、
一見、自由奔放に思える主人公に私たち観客は魅せられてしまうんだからスゴイもんです!

“あの人に恋してる!”って気付いた瞬間、世界は薔薇色に見え、その人との時間はスローモーションのように感じて周囲が見えなくなる。
そんな人間の心理を映像で表現した名シーンは映画史に残るものになりそうな予感。それでも女は厄介で、好きな人と生きていきたくても“子どもを欲しい”と言われれば、
お腹に10ヶ月赤ちゃんを宿し、子育てにあくせくする人生を想像しなければいけない壁にぶち当たる。もっと自由を満喫したくない?もっと仕事で成功して社会に認められたくない?
子ども中心の世界ではなく、自分の人生の主人公に立ちたくない?と胸に手を当てて考えるのが「結婚」という大きな門。いくら相手が子育てを手伝うといえども、人生が一変する未来を受け入れる覚悟はあるか?

そんな心の声が詰まった傑作は、きっとアナタの心の声であり、男女ともに人に言いづらい本音も混じっているのです。だ、か、ら、大好きな映画。

映画パーソナリティ 伊藤さとり

 

 

 

 

ハリウッドスターから日本の演技派俳優まで、記者会見や舞台挨拶MCも担当する。全国のTSUTAYA店舗で流れる店内放送wave−C3「シネマmagDJ、俳優対談番組『新・伊藤さとりと映画な仲間たち』(YouTubeでも配信)、東映チャンネル×シネマクエスト、映画人対談番組『シネマの世界』など。NTVZIP!」、CX「めざまし土曜日」TOKYO-FMJFN、インターFMにもゲスト出演。雑誌「ブルータス」「Pen」「anan」「AERA」にて映画寄稿。日刊スポーツ映画大賞審査員、日本映画プロフェッショナル大賞審査員。

『わたしは最悪。』

(英題:The Worst Person In The World)

7月1日(金)Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテ他全国順次ロードショー

© 2021 OSLO PICTURES - MK PRODUCTIONS - FILM I VÄST -  SNOWGLOBE -  B-Reel – ARTE FRANCE CINEMA

2021年 /ノルウェー、フランス、スウェーデン、デンマーク/カラー/ビスタ/5.1ch デジタル/128 分/字幕翻訳:吉川美奈子/後援:ノルウェー大使館  /R15+

◆監督:ヨアキム・トリアー 『テルマ』(17)、『母の残像』(15)

◆出演:レナーテ・レインスヴェ、アンデルシュ・ダニエルセン・リー


 

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