小さなエッラの可愛い嫉妬がとまらない!北欧発『リトル・エッラ』の魅力

こんにちは!今日から5月。新緑眩しいゴールデンウィーク真っ只中ですが、いかがお過ごしでしょうか?

エッラは面白くて優しいトミー叔父さんが大好き

エッラは面白くて優しいトミー叔父さんが大好き!

今年のゴールデンウィークもテンションあがる作品が盛りだくさんですね。そして、5月5日は「こどもの日」ということで、子どもが主人公の映画『リトル・エッラ』を紹介します。両親不在の休暇を大親友のトミー叔父さんと楽しもうとした矢先に、彼の恋人スティーブが現れ、そこから始まる主人公エッラの「叔父さん奪還大作戦!」を描いた物語です。

主人公のエッラは、ちょっぴりわがままで人付き合いが苦手な少女です。サッカーが大好きで、トミーからは憧れのスウェーデン元代表選手、ズラタン・イブラヒモヴィッチに例えられ「ミニズラタン」と呼ばれています。

両親が休暇で出かけている間、大親友のトミーと過ごすことを楽しみにしていたエッラの前に、オランダから来たトミーの恋人スティーブが現れます。

予期せぬ突然の訪問者に動揺を隠せないエッラ

予期せぬ訪問者に戸惑うエッラ。スティーブは仲良くしようとするのですが、彼とトミーの会話(英語を使っている)を全く理解できず、置いてけぼりにされた気分を味わいます。

このままでは、スティーブにトミーが取られてしまう…。

イライラMAXなエッラは、転校生オットーの協力を得て、スティーブ追い出し作戦を開始しますが…。

原作はスウェーデン出身の絵本作家ピア・リンデンバウムによる『リトル・ザラタンと大好きなおじさん(未訳)』。監督は、ロックフェスティバル出場を目指して奔走する若者たちを描いた青春ロードムービー『ロスバンド』で高い評価を得たクリスティアン・ロー。

本作でも、子どもたちが感じる嫉妬や友情の物語を、温かな眼差しで丁寧に紡ぎあげてます。

エッラを演じるアグネス・コリアンデルのチャーミングな魅力!

エッラを演じるのは、アグネス・コリアンデル※。自分の計画(プラン)で頭がいっぱいの彼女は、ショーの準備で忙しいトミー(シーモン・J・ベリエル)の事情などお構いなし。ましてや、彼の恋人のスティーブなど「邪魔」でしかないとばかりに、追い出し作戦を決行していきます。

いたずらを決行する時の悪い顔も、ふてくされ顔や嫌悪感あらわにするところも、作戦が裏目に出た時のショック顔も、喜怒哀楽にみちててチャーミング。なんといっても、トミーと過ごしている時の喜びに満ちた表情やケラケラ爆笑する姿が、絵本から飛び出してきたようなフレッシュな魅力でいっぱいです。

そして、そんな「自分」のためだけに行動してきた彼女が「誰か」のために行動する姿に、胸が熱くなります。

※現在は、ビリー・コリアンデルに改名し俳優活動を続けているそう。

大好きな叔父さんは渡さない!その作戦結構エグイです!

エッラにとってスティーブは憎きライバル。大好きなトミーを取られまいと必死の彼女は「手段選ばず」次々といたずらを仕掛けていきます。靴に砂糖をふりかけたり、砂糖の容器に塩を入れて渡すという可愛いモノから、彼のかばんの中にある動物を仕込んだり、そ…それはさすがにやりすぎ…と思うモノまで様々。それに対するトミーとスティーブの態度が、あたまごなしではないところも本作の魅力のひとつ。特にスティーブが…ちゃんとエッラの気持ちに寄り添ってみせる優しさにジンとします。

北欧の景色とポップでカラフルなインテリアや小物にキュン

エッラに協力するオットーは花屋の息子。いつも自転車にはたくさんの花が積まれています。また、ヘアショーの準備に追われるトミーのお店やトミーが暮らしている家も素敵なインテリアや小物が並び、観る者を楽しませてくれます。そして本作には、寿司とカラオケが楽しめるレストランが登場。ふたりが仲良くThe Wannadiesの「YOU AND ME SONG」を歌うシーンも見どころ。

物語を彩る個性豊かなキャラクターたち
見逃しそうなシーンにも実は…

シーモン・J・ベリエル演じる叔父さんのトミーや、彼の恋人スティーブを演じるティボール・ルーカスをはじめ、本作には個性的すぎるキャラクターがいっぱい。エッラと友達になりたいオットーを演じるのは、ダニヤ・ゼイダニオグル。トミーの部下マイサンにウィリアム・スペッツ。また、エッラのおばあちゃんに扮するのは、インゲル・ニルセン。実は彼女、子役時代に『長くつ下のピッピ』の実写版でピッピ役を演じているんです。

ほかにも、エッラに興味もしめさない大人の三つ子(彼らは本物の三つ子で俳優ではなく大工さんなのだとか)や、やたらエッラに厳しい視線を送るおばあさんなどが登場します。この作品、うっかり見逃しそうなシーンにもラストへと繋がる伏線が散りばめられているので、二度、三度観ると、より味わいが深くなりますよ。

クライマックスに待ち受ける展開に
アドレナリンがとまらない


最後は、やっぱりトミーのヘアショーでクライマックスを迎えると思いきや、ちょっとしたハラハラドキドキする出来事が待っています。「そうきたか!」という展開に思わずニンマリ。「友とは人生の庭に咲く花」果たして、エッラはどんな花を咲かせるのでしょうか?その結末は、ぜひ映画館のスクリーンで楽しんで下さい。

【番外編】Fika(フィーカ)やスウェーデングルメも!

さて、スウェーデンの食事といえば、ニシンやIKEAのミートボールを思い浮かべますが、本作に登場するのはおばあちゃんが作るポークパンケーキ。豚肉(パンチェッタかな?)を使った、料理系パンケーキなのですが、エッラはこの食べ物があまり好きではないよう。

でも、味覚って変わるもの。大人になったら、無性に食べたくなる料理になっているかもしれません。

そして、Fika(フィーカ)と呼ばれるコーヒーと焼き菓子を食べながら家族や仲間と親睦を深めるお茶の時間も描かれています。劇中で、エッラとトミーが食べる「モンスターケーキ」として登場するのは「プリンセストータ」というスウェーデンを代表するケーキ。スポンジやバニラクリーム、生クリームを緑のマジパンで包み、コケモモから作られたリンゴンベリージャムがアクセントとして使われています。映画を見ると、このモンスターケーキが食べたくなります。また、エッラがオットーの家でふるまわれるハート型のおやつもなんだかおいしそう。

調べたところ「バニラハート」というスウェーデンでは定番の焼き菓子なのだそう。

『リトル・エッラ』の素敵なところは、声高に「多様性」や「SDGs」を謳いあげるのではなく、ありのままをありのままに描き、それを肯定も否定もしないところ。それが、映画の舞台にもなったスウェーデンの空気とあいまって、とても心地がいいのです。

エッラは果たしてどんなゴールを決めるのか?

観終わったあと、心がホッコリ温かな気持ちになって、優しさの新芽が心に芽吹く一作。これからの季節にピッタリです。

映画『リトル・エッラ』は愛知県では刈谷日劇ほか、全国順次上映中

文 にしおあおい( シネマピープルプレス編集部 )

作品データ

人と仲良くするのが苦手な人もいる。特にエッラにとっては難しいことだった。
エッラが唯一仲良くできるのは、おじさんで“永遠の親友”であるトミーだけ。
両親が休暇で出かけている間、トミーと過ごすのを楽しみにしていたエッラだったが、夢の1週間は悪夢へと変わってしまう!
オランダからトミーの恋人スティーブがやってきたのだ。
トミーとスティーブは英語で話すため、何を話しているのか全く分からないエッラ。
のけ者にされたような気分になり、トミーを取られるのではないかと気が気でない。
親友を取り戻したいエッラは、彼女と友達になりたがっている転校生オットーの力を借りて
スティーブを追い出すための作戦を実行するのだが…。

監督:クリスティアン・ロー 
出演:アグネス・コリアンデル、シーモン・J・ベリエル、ティボール・ルーカス 他 
原題:LILL-ZLATAN OCH MORBROR RARING|スウェーデン・ノルウェー| 
2022|81分|カラー|スウェーデン語・英語|フラット|5.1ch|映倫G| 
配給:カルチュアルライフ
© 2022 Snowcloud Films AB & Filmbin AS
2024年4月5日より、新宿シネマカリテ、アップリンク吉祥寺、 シネマート心斎橋 他全国ロードショー 
公式サイト https://culturallife.co.jp/little-ella
公式X @LittleElla_jp

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