映画『カメラを止めるな!』で知られる上田慎一郎監督が16日、名古屋のミッドランドスクエアシネマ2で行われた1月14日公開の新作『ポプラン』の公開記念舞台挨拶に登壇。主演の皆川暢二とともに映画の撮影(制作)秘話などを明かした。
【動画】『ポプラン』上田慎一郎監督&皆川暢二シネピー独占インタビュー
本作は漫画配信で成功を収めた経営者の主人公・田上が、自身の失われたイチモツ(ポプラン)を探す旅に出る異色作。10年前にこの奇想天外なアイデアを思いついたという上田監督は、TwitterのDMで皆川に主演をオファー。それを受けた皆川は「(内容の説明を受け)上田監督ならではの設定と軸となるロードムービー的なものが合わさったらどういう映画になるのかが楽しみで、「えっ?」という戸惑いよりワクワクのほうが大きかった」と振り返る。
実際に劇中で「時速200キロで飛び回る」という新幹線級のスピードで移動するポプランを演出した上田監督は「編集に時間をかけられたので、色や速さ、大きさなどはかなり詰めた」と明かし「(動きが)速すぎて黒い何かに見えていると思うんですけど、ちょっとだけ肌色がかってるんです。色味を足したことですごい生き物感がでてきて…あと形も細長いだけじゃなくてちょっと真ん中を膨らませてみたり…、画面上でも違和感がないよう『この遠近でこの大きさは無茶苦茶すぎないか?』とかスタッフとも話し合って、リアルなところを探しました」と試行錯誤した日々を振り返った。
そのポプランに振り回されることとなる田上を演じた皆川は「ポプランに関するリアクションは追いかけるのもそうですけど、(ポプランが何かにぶつかった時の衝撃や)痛みを表現するのも大変でした。僕は野球をやっていたので、その時のボールが当たった時の痛みだったり、みぞおちのあたりにあがってくる声に出せないような、1ミリたりとも動かしたくない感じを意識して。それを客観的に見ると、まあ滑稽というか、ちょっと落ち着いてくると、切なさも出てくる。周囲の同情の目に、切なさがこみあげてきましたね」と男性陣の共感を誘う一面も。
撮影前から、監督と二人三脚で田上という役を作り上げてきた皆川。一緒に漫画配信アプリの社長に取材したり、子役のオーディションの相手役を自ら務めたそうで、上田監督も、アドリブで面白かった台詞は劇中に活かしたという。
映画について上田監督は「あらすじは極めてシンプルなんですけど、遊び心みたいなものはたくさん忍ばせております。例えば、登場人物の名前は漫画にちなんだ名前になっていたり、漫画の系譜みたいなものを作品全体で表現してたりします。田上が劇中で読んでいる漫画は、僕が中学生の時に実際に描いていた漫画を実家から取り寄せて使っているんですよ」と明かすと、皆川も「実際撮影前に(監督が描いた漫画を)読んだんですけど、中学生ならではの未完成具合が、懐かしさにもつながって照れ笑いなんかもしちゃったりしましたね」とインスピレーションを受けた様子だった。
実際に完成した作品を観た皆川は「現場になかったものが追加されて、自分の想像の範疇を超えてくるものもありました。不思議な感覚で、自分で演じといてなんですけど、最後のシーンの表情とかは、何やって…これなんの映画なんだろう?と宇宙にでも行くような気持ちになりました。みるたびに共感する場所や味わいが変わるスルメのような映画だし、入口と出口が違う不思議な体験を味わえるので、ぜひ楽しんで欲しいです」と魅力をアピールし、挨拶で締めくくった。
『ポプラン』は、1月14日(金)よりテアトル新宿、ミッドランドスクエアシネマほかで公開中
作品紹介
東京の上空を高速で横切る黒い影。ワイドショーでは「東京上空に未確認生物?」との特集が放送されている。そんな中、漫画配信で成功を収めた経営者、田上は仰天する。ある朝突然自分のイチモツが失くなっていることに気づいたから。そこで田上は自分と似た境遇の人たちが集まる「ポプランの会」という集会にたどり着く。そこではイチモツを失った人々が集い、取り戻すための説明を受けていた。「時速200キロで飛びまわる」「6日以内に捕まえねば元に戻らない」「居場所は自分自身が知っている」。田上は、疎遠だった友人や家族の元を訪ね始める。家出したイチモツを探す旅が今はじまる――。
『ポプラン』 監督・脚本・編集:上田慎一郎 出演:皆川暢二 アベラヒデノブ 徳永えり しゅはまはるみ 井関友香 永井秀樹 竹井洋介 鍵和田花 朔太郎 西本健太朗 佐藤旭 清瀬やえこ 上田耀介 茨城ヲデル 藤野優光 高木龍之介 原日出子 渡辺裕之 音楽:鈴木伸宏 Lee Ayur 宣伝デザイン:ふくだみゆき 配給:エイベックス・ピクチャーズ 上映時間:96分 公式サイト popran.jp 公式Twitter @cinemalab_jp ©映画「ポプラン」製作委員会