2021年の12月、随分と遅れて私は話題の映画を拝見いたしました。その名は『ベイビーわるきゅーれ』。
実はこの映画、2021年7月31日に劇場公開され、うっかり先延ばしにしていたらあれよあれよと口コミでロングランヒットを記録。映画でご飯を食べさせていただいている身としては観ねばならんと劇場へ入ると、なんと時間を忘れる面白さ!
まずは主人公の元JK(女子高生)殺し屋を演じる高石あかりさんと現役スタントマン伊澤沙織さんがスクリーンに登場した途端、「このキャラクター好き!」と確信。伊澤さん演じる真広が、店長にブツブツ、フワフワと答えた後に、キレて殺戮を犯すところからの機敏な本物のアクションにハートを撃ち抜かれ、その後、酔っ払いなのか?と思う口調と不思議なテンションで現れるちひろ演じる高石さんの演技の面白さに二度目のバキュン。
あぁ、こんな映画を待っていたのよ、吹き替えなしのスタントウーマンによる映画を。男の理想ではない強くて面白い女性が拳銃ぶっ放す映画を。そうよ、小さい頃に興奮した志穂美悦子さんの本人による本物アクションは今やメジャー映画ではなかなかお見受けしない。大人しく慎ましやかな女の子のキャラクターに違和感を覚えずにいられなかった幼少期から現在に至るまで、幼き私の理想の女性像だった「うる星やつら」のラムちゃんも「ルパン三世」の峰不二子も「キャッツアイ」の三人姉妹も、“セクシー”が頭にくっついている女性キャラクターだったので、自分とは遠い存在でもあったしね。なんなら「強い女はセクシーでなければならない」とまで一時錯覚してしまった。
いやいや、高石さんも伊澤さんも魅力的、そうキャラが魅力的なのです。だから二人のダラダラした日常シーンに笑い、たあいもないセリフに笑い、アクションシーンに見惚れてため息を漏らし、女のアクションはなんて華やかなんでしょうか!と力説したくなる映画に仕上がっているわけですよ!だから脚本力とキャスティング力の妙で決まった「キャラ確立」による続編決定ニュース。
そんな映画を作り上げた坂元裕吾監督は、2022年には26歳になるのですが、『ツレがうつになりまして。』などの脚本を手がける青島武さんの下でみっちり学び、ディズニーやジャンプのようなキャラクターの魅力を勉強し尽くして『ベイビーわるきゅーれ』を完成させたそうな。
海外の映画は、すでにアクションコメディを多く生み出していて、アメコミ映画であるマーベルやDCでも女性ヒーローが活躍するアクション映画作りが盛んな昨今。アクション映画は男が見るもの語るものという概念を捨て、性別関係なく娯楽は楽しむもので、女性の華麗なアクションの魅力も知り、彼女たちの姿を見て将来スタントウーマンになりたいと思う子ども達の願いが叶いやすい現場と映画製作を日本もして欲しいなぁ、と思うのでした。
2022年の映画界の変化を楽しみしている今年の幕開けです。
2021年製作/95分/PG12/日本 配給:渋谷プロダクション (C)2021「ベイビーわるきゅーれ」製作委員
映画パーソナリティ 伊藤さとり
ハリウッドスターから日本の演技派俳優まで、記者会見や舞台挨拶MCも担当する。全国のTSUTAYA店舗で流れる店内放送wave−C3「シネマmag」DJ、俳優対談番組『新・伊藤さとりと映画な仲間たち』(YouTubeでも配信)、東映チャンネル×シネマクエスト、映画人対談番組『シネマの世界』など。NTV「ZIP!」、CX「めざまし土曜日」TOKYO-FM、JFN、インターFMにもゲスト出演。雑誌「ブルータス」「Pen」「anan」「AERA」にて映画寄稿。日刊スポーツ映画大賞審査員、日本映画プロフェッショナル大賞審査員。