エリコのフォトdeシネマ♪ Vol.6 『ノマドランド』

スクリーンで観るべき圧巻のロードムービー『ノマドランド』

キャンピングカーで旅に出る主人公のファーンをひたすら追いかけ、孤独で自由な車上生活の厳しさと豊かさ、行く先々で出会う人との触れ合い、そして果てしない荒野や岩山、澄んだ河など大自然との融和を、エモーショナルな映像と音楽で描いていく。

ベネチア&トロント国際映画祭の最高賞、ゴールデン・グローブ賞の作品賞、監督賞を受賞。
さらにアカデミー賞では作品賞を含む主要6部門にノミネート。
とにかく世界中で賞賛されているけれど、それも納得の驚くべき映画だった!

私は原作のノンフィクション「ノマド: 漂流する 高齢労働者たち」すら知らなかったので、車で寝泊まりしながら季節労働の現場を渡り歩くノマド(遊牧民)の存在も、白人の高齢者が多いことにも驚かされた。

そして2つ目の驚きが、主人公のファーンを名女優フランシス・マクドーマンドが演じるフィクションだとわかっているのに、ドキュメンタリーを観ているような不思議な感覚になったこと。
それもそのはず、マクドーマンドは実際にノマドのコミュニティで暮らし、本物のノマドたちと共演しているのだ。
ノマドが生まれる背景には社会の問題もあるのかも知れないけれど、ファーンが「ホームレスではなくハウスレス。別物よ」と言う様に、自らが選び誇りを持って自由に生きているんだと感じた。

さらに嬉しい驚きは、この素晴らしい映画を撮ったのが中国出身の女性監督クロエ・ジャオだということ。前作の『ザ・ライダー』では映画賞43ノミネート24受賞。マーベル・スタジオの『エターナルズ』にも抜擢された新鋭の今後の活躍に期待は高まるばかり。

さて映画を観ていたらピーナッツバターらしきものを塗ったパンがチラッと映って(見間違いかも知れないけど…)、なんだか無性に食べたくなってしまった。
ピーナッツバターってすごくアメリカ的な感じしませんか?
ちなみに私はクランチタイプが好みです。

2020年製作/108分/G/アメリカ
原題:Nomadland
配給:ディズニー

 

(C)2021 20th Century Studios. All rights reserved.

フォトdeシネマ
映画ライター 尾鍋栄里子(おなべえりこ)
映画館バイト雑誌映画担当映画ライターと、人生の半分を映画業界の片隅で生きる名古屋人。
朝日新聞、中日新聞、フリーペーパーなどで映画紹介記事を執筆中。
映画フリーペーパー C2【シーツー】web版ブログ〝オー!ナイス!不定期掲載

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