潜水服は蝶の夢をみる

「ELLE」といえば、二十数カ国で各国語版がでている人気雑誌。ファッション界にも強い影響力がありますね。パリコレなどは
ELLEの編集長があらわれないとどれだけ時間がおしていてもファッションショーが始まらないとか。最前列の特別席に編集長が席に着くとショーがはじまる。

そんな華やかな世界を飛び回っていた、本家本元パリのELLE元編集長。働き盛りの43歳ジャン=ドミニク=ボービーはある日突然、脳梗塞で倒れてしまう。昏睡状態に陥り、20日間生死を彷徨った後、こちらの世界に戻ってくるのですが、
左目以外は動かなくなってしまったのです。
意識や知力はそのままなのに身体の不自由をすべて奪われてしまった。
症状は「ロットト・インシンドローム」。

自分から意思を伝えることも出来ない。
テレビがみたい、本が読みたい、家族や友達に何かをつたえたい・・でも何もできないの。
このもどかしさ・・いっそ死んでしまいたいと思うだろう、でも死ぬことも出来ない。
私だったら精神的に病んでしまうにちがいない。

ジャンはちがった。もちろん彼も死にたいとおもったのですが、
彼の心を、言語療法士のアンリエットが救ってくれた。
E,S,A,R,I,N,T・・使用頻度に基づいてアルファベッドを読み上げてもらって、瞬きで合図をしていくというコミュニケーションをとる方法を考えたのです。

彼は未来に向かっていく。
それから編集者であるクロードと一緒に、まばたきで自伝を綴りはじめます。

そのまばたきの回数は、二十万回以上。
まばたきだけで執筆ができるなんてすごいよね。

感動したのは、周りの人たちの優しさだ。
20万回の瞬きという気の遠くなるような作業を毎日おこなっていたクロードの忍耐力にもおどろく。

これはジャン=ドミニクの人柄なんでしょうね。

ファッションの先端にいたというこで、患者とはおもえない粋な着こなし。
上質なカシミアセーターにアスコットタイ、ストライプのドレスシャツなど、
誰かが用意したのだろう。この気遣いもジャンに生きる希望を与えた一つだとおもう。

映像が面白い。前半はジョン=ドミニクが左目にうつるものがスクリーンに映し出されるという手法だ。様々な趣向を凝らしたジャンの主観ショットは興味ぶかい。
たまに、映像がぼけることもあるのでおどろいたのですが、
たしかに瞬きをしたあと少し、ぼやけることもある。だから
観る物は自然に彼の中に取り込まれていくのです。

体は潜水服を着ているように自由はきかなくても、蝶のようにはばたく記憶力と想像力で綴った自伝。本が出版されてすぐに肺炎にかかり亡くなってしまいました。

ジャン=ドミニクは体が動かなくなった代わりに生きることに目覚めていくのです。
生きると言うことが胸に響いた感動作。
受賞式はなかったけど、ゴールデングローブ賞の監督賞に輝いた。
納得の受賞だ。080107_sensuifuku_chou_main

やはりお正月第二弾は秀作ぞろいですな。

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