クィーン

チャールズ皇太子と正式に離婚した1年後にパリで恋人ともに事故死した
元プリンセス・ダイアナ。
生前からダイアナとの不仲説が噂されていたエリザベス女王はその死についてコメントを避けていました。国民は女王の態度に不信感を抱きエリザベスは孤立してしまいます。そのとき首相になったばかりのブレアは、いちはやくこの空気を読み、王室と民衆の橋渡し的な役割を担った。女王に対して「威厳」守り、国民の賛同を得るためにある行動にでたわけです。
映画「クィーン」はブレアとの関係、やりとりを中心にそれぞれの立場から考え、感情、行動を相手の威厳をもちつつ、どう行動するか。曖昧ではなく明晰に物語は進行していきます。

この映画はイギリス王室ものから一歩踏み出した新鮮な映画だと思います。
確かに主人公は女王だし、背景は王室なのですが、テイストが実に庶民的。その大きな理由は女王を母親としてきちんと描いていること。
尊大さも気配りも、孤独も確かに女王の地位にあるひとなんですが、それがとても身近に思えるんですね。事故の少し前に首相に就任したばかりのトニー・ブレアが絶妙なポジションで映画を盛り上げていくんです。女王とは息子ほどの年の差があるのですがそれが身近に感じた理由なのかも。
童顔のブレアはものおじしない息子のように女王に接し、女王は母親のようにそれをたしなめる。どんなシーンにおいてもこのふたりのやりとりがほほえましく、そこには母と息子のようなつながりを感じるのです。

ダイアナ報道が過熱する中、社会背景とそれをどう切り抜いていくかを画策するふたりですが、皇室の威厳を守ろうとする、女王と国民の皇室批判をかわそうとするブレアがいかに歩み寄っていったかの課程がドキュメンタリー映画を観るようで楽しかった。
あとはこの二人の仲を嫉妬しているようなブレアの妻の描き方やブレアが首相にもかかわらず狭い家にすんでいるな〜とか、朝食はパンと目玉焼き等
とても生活感を感じさせるのです。まあ、ブレアの妻がおたんちんでね、王室に反発する国民に対して、ブレアの提言を聞き入れ声明を発表するのですが、その時ブレアの妻が、「短いコメント」としかめっ面で女王を小馬鹿にし吐き捨てるように言葉を発したのです。ブレアの妻こそ大衆の噂話に踊らされてはいけない公平な立場なのに完全に、週刊誌ネタを鵜呑みにしている。
でも、その時のブレアの言葉が印象的だった。
女王は国民のために青春もすべて捧げてきた。50年も威厳をたもってきた。
そんな女王が後ろ足で王室に泥をかけた女性を弔うために努力したんだ!
と涙目で言うのよ。その通り!
ちゃめっけたっぷりに演じるブレア役のマイケル・シーンにも注目です。

ヘレンミレンは数多くの映画賞を受賞している大ベテランですが、以前、
テレビドラマでエリザベス1世を演じています。
そして今回はエリザベス二世。
カレンダーガールズという映画で底抜けのヌードを披露したり、ゴスフォード・パークで満たされない貴族の役を演じている大ベテラン。
眼鏡のずらしかたも歩き方もそっくりだけど、実際写真をならべてみるとヘレンのほうがずっと美人だ。でも、実物を見たことのない多くの人々に、ほらそっくりでしょ。これがエリザベス女王よ。と思わせた演技は素晴らしいね。

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