一足お先にパッチギ!LOVE&PEACE

2005年の映画賞を総なめにした「パッチギ!」。

未だにレンタルショップで上位を君臨続ける怪物作品。
沢尻エリカの出世作でもある。  

偏見、差別、国籍を超えるピュアな愛、世の中の矛盾、胸迫る友情、家族との繋がり・・・。

これ以上ないほどど鮮烈に描ききった青春群像劇「パッチギ!」は私の映画生活の中で衝撃的な作品の一つとなった。

井筒監督の作家性はデビュー作島田紳助主演の「ガキ帝国」から
一貫して観る者の胸にずっしりとハートパンチを浴びPosterさせる。
その前作以上に「熱」を放ち、前作以上に「愛と平和」を本気で描いたのがパッチギ!LOVE&PEACEなのです。

骨の折れる音まで聞こえてくるような大乱闘は彼の魂とも言える活劇シーン。もちろんLOVE&PEACEにもたっぷりふくまれている。
不良達のアホなケンカと思ったら大間違い。
これには全身全霊で生きようとする人々の戦いの物語なのだ。

近年は「フラガール」という映画を成功させたリ・ボンウ
プロデューサー。彼があえてハードな物語設定を選んだのは、
「どんなボロボロになっても、生き抜くことが大切なんだ」という強いメッセージを、アジアだけでなく全世界の人に伝えたかったそうです。

若い俳優達を鍛え上げる「井筒学校」の効果はパート1で
実証済み。パート2は主要キャストを一新してオーデションから
選ばれた井坂俊也と中村ゆりが大抜擢。二人はなんども監督からパッチギられただろう。「困難を乗り越えること」。頭突きの意味の他にこの作品の本当のテーマがこのタイトルには隠されているのです。
兄妹役の二人は相当な努力をしたにちがいない。

キャストと一緒に泣いて笑って2時間ちょっと。
エンディングがはじまったことに気がつかず、「えっ?もう終わり?」と小声でついつい口走ってしまった。

張り詰めた空気の中、笑いの要素もたっぷり。
兄妹の妹キョンジャが甥の病気の治療費を稼ぐために
芸能界入りをする。その芸能界の人々を皮肉った数々のエピソードは笑いどころ。
「ザギンでシーメ」ってほんとに言ってたんだ(笑)。
また、現代劇に差し込まれてくるのはアンソンとキョンジャ兄妹の父のお話。1944年日本の支配下にあった南洋諸島で徴兵の招集を受けた父はなぜに日本軍として戦わなければいけないのか?

と、疑問に思い、逃亡を図る。ここに描かれていることはアンソン一家のルーツと、命をつなぐことの厳しさと喜びを描いた大河ドラマとしての要素ももっているのです。

この映画をみて、スクリーンから放出されているエネルギーを
出来るだけ多く受け止めて。
LOVE&PEACEで燃えて燃えて燃え上がろう。

おいしい映画祭

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