第1回ANIAFF閉幕『エンドレス・クッキー』が初代金鯱賞に!作り手ファーストな理念、名古屋から世界へ

名古屋発となる、新たな国際アニメーションの祭典「第1回あいち・なごやインターナショナル・アニメーション・フィルム・フェスティバル(ANIAFF/略してアニャフ)」が12月17日、6日間の会期を終えてフィナーレを迎えました。

クロージングセレモニーは、名古屋市のウインクあいちで開催され、会場にはフェスティバル・ディレクターの井上伸一郎氏をはじめ、審査員のオーブリー・ミンツ氏、ペネロープ・バジュー氏、塩田周三氏ら、世界のアニメーション界を牽引するキーパーソンらに加え、愛知県の大村秀章知事、名古屋市の広沢一郎市長らも集結しました。

大村知事は本映画祭について「言葉を超えた表現が持つアニメーションに、人と人と、文化と文化を繋ぐ力があると、改めて感じ、伝統文化を継承するとともに、新しい表現や創造活動の発展にも取り組み国際的飛躍へと繋げていきたい」と未来への期待をよせました。

また、広沢市長は「アニメーションを通じた表現は、言葉や国境を越えて、人々の心をつなぐ力を持っております。その力を、ここ名古屋で皆様と共有できたことは、私たちにとって大きな誇りとなりました。」と感謝の言葉を口にしました。

そして、まずはクリエイターやスタジオの功績を称える独自のアワードの三賞を発表。

■ハナノキ賞(スタジオ賞):株式会社ピーエーワークス
富山県南砺市に本社を構え、今年で設立25周年を迎えた「P.A.WORKS」が、記念すべき初代ハナノキ賞を受賞しました。『true tears』『SHIROBAKO』『花咲くいろは』など、オリジナル作品にこだわり、「未来を照らす、灯りをつくる」という理念のもと、数々の名作を世に送り出してきたスタジオです。

【選考理由】
単に良質な作品を作るだけでなく、地方都市(富山)にスタジオを構えながらグローバルな作品を生み出すという「スタジオの在り方」そのものが評価されました。特に『花咲くいろは』に登場する「ぼんぼり祭り」が現実の祭りとして地域に定着するなど、アニメによる地域活性化のモデルケースを築き上げた功績は、アニメ史に残るものです。

■カキツバタ賞(個人賞):岩井澤健治 監督

ほぼ独力で制作した『音楽』で世界を驚かせた岩井澤監督。2025年公開の最新作『ひゃくえむ。』では、その表現をさらに進化させました。

【選考理由】
個人制作の限界を押し広げ続けるその姿勢と、商業アニメーションとは一線を画す圧倒的な表現力。日本アニメの多様性を象徴する存在としての受賞です。

■ユリ賞(個人賞):廣瀬清志氏(編集)
「ダンダダン」『ルックバック』『BLUE GIANT』。近年のヒット作のクレジットで、この名前を見ない日はありません。

【選考理由】
アニメーションにおける「編集」という工程の重要性を、その卓越した技術で世に知らしめました。作品のテンポと感情の設計図を描く、影の立役者への賛辞が贈られました。

そして、緊張感に包まれる中、世界29ヶ国からのエントリーがあったコンペティション部門の最高賞【金鯱賞(グランプリ)】には、セス・スクライヴァー監督の『エンドレス・クッキー』(カナダ)が選ばれました。

授賞作品は以下の通りです。

▼【金鯱賞(グランプリ)】

『エンドレス・クッキー』(カナダ)
監督:セス・スクライヴァー

▼【銀鯱賞(審査員賞)】

『燃比娃(ランビーワ) -炎の物語-』(中国)
監督:ウェンユー・リー

▼【赤鯱賞(観客賞)】


『ひゃくえむ。』(日本)
監督:岩井澤健治

観客の投票で決まるこの「赤鯱賞」が発表された瞬間、会場からはこの日一番の大きな歓声と、「自分たちが選んだ」という納得と共感の温かい拍手が沸き起こりました。

岩井澤監督は個人賞である「カキツバタ賞」とのダブル受賞となります。


審査員を代表し、塩田周三氏が日本語と英語で総評。「世界中から集まった作品群は、どれも既存の枠に収まらない挑戦的なものばかりでした。すべての作品が深い示唆に富み、既視感のある物語に陥ることのない、強いオリジナリティを放っていました。

受賞作は、鑑賞後もなお審査員の心に強く残り、深い感情の余韻を持っていました。アニメーション表現の可能性を最大限に活かし、新鮮で新しいビジュアルを提示し、同時に伝統的なアニメーション技法の普遍的な力強さと美しさを体現していました。

今回のコンペティション作品によって示された高い品位と芸術的水準は、今後のアニアフにとって確かな指標、そして礎となっていくことと確信しています」と述べ、参加したすべてのクリエイターへの敬意を示しました。

■祭典の余韻、そして未来へ

クロージング作品として最後に上映されたのは、グランプリに輝いたセス・スクライヴァー監督の『エンドレス・クッキー』(カナダ)。

フェスティバル・ディレクターの井上伸一郎氏は閉会の挨拶で、「上映作品もさることながら、数々のトークセッションが行われたことは大きな収穫でした。コンペティション部門ではアニメーションの多様性や力強いテーマ性、現代的なメッセージにあふれた作品がたくさん上映されました」と今年の手応えを語り、「来年もこの名古屋の地でアニャフを開催したいと思います」と力強く次回の開催を宣言しました。

第1回ANIAFFでは、上映作品50本超、上映回数80回を記録。新設されたピッチマーケット「ANIMART」では企画者とプロデューサーらが直接交流するなど、ビジネスと文化の両面で「つくり手」に寄り添う姿勢が際立ちました。

つくり手たちへのリスペクトと、新しい才能への期待に満ちた6日間。名古屋から始まったこの新しい「波(ニューウェーブ)」は、きっと来年以降も世界中のアニメーションファンを繋ぐ架け橋となるはずです。

取材・文 にしおあおい(シネマピープルプレス編集部)

映画祭公式 https://aniaff.com/

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