12月12日(金)から、名古屋のミッドランドスクエアシネマほかで始まったあいち・なごやインターナショナル・アニメーション・フィルム・フェスティバル(ANIAFF/アニャァフ)。
2日目となる13日、会場のひとつ109シネマズ名古屋で上映されたのは、2009年の公開から16年経った今もなお、夏が来るたびに私たちの心を熱くする名作『サマーウォーズ』。
トークゲストに細田守監督が、そしてなんと、サプライズゲストとして主人公・小磯健二役に扮した神木隆之介さんが花束を持って登場!

監督ともに、当時の裏話などを明かしました。
「SF」が「現実」に
今、この映画が問いかけるもの
「16年前、OZ(オズ)の世界はSFでしたが、今は現実になっていますよね」とのフェスティバルディレクター井上さんの言葉に、深く頷いた細田監督。

公開当時は、まだ牧歌的だったインターネットの世界。しかし今、AIや仮想空間は私たちの生活に深く入り込んでいます。
「あの頃は、インターネットの世界にすごく希望を持って描くことができた時代でした。AIが社会に占める割合がこれほど大きくなるとは思わなかったけれど、大家族が世界の危機と戦って勝つという、大らかで明るい、健全な作品だと改めて思います」
技術は進化しても、この映画の根底にある「家族の絆」や「希望」は、AI時代を迎えた今だからこそ、より強く響くのかもしれません。
栄おばあちゃんのモデルは、監督の「祖母」
『サマーウォーズ』といえば、陣内家を率いる栄おばあちゃんの存在感が圧倒的です。
そのモデルについて、監督から意外なエピソードが明かされました。
「モデルは僕の母方の祖母、『橋本カツヨ』です。実は僕、以前その名前をペンネームとして使っていたこともあるんですよ」
あの力強さと包容力は、監督自身のおばあさま譲りだったのですね。作り手のルーツがキャラクターに命を吹き込んでいる。そう知ると、栄おばあちゃんの言葉一つひとつが、より温かく感じられます。
「声変わり直後」の神木隆之介という才能
「実は今日、シークレットゲストをお呼びしています!」
監督の紹介で登場したのは、神木隆之介さん。「大きくなったね」「2倍(の年齢)になりました(笑)」と笑い合う二人の姿に、会場の空気も一気に和みます。

当時16歳、高校1年生だった神木さん。実はキャスティングの裏には、細田監督の鋭い直感がありました。
「当時、神木くんは声変わりした直後で、誰もその新しい声を聞いたことがなかった。でも、一番最初にその声でお願いしたかったんです」
まだ誰も知らない「新しい才能」を信じて託す。それは作中で、栄おばあちゃんが若い世代に未来を託した姿とも重なります。
神木さんも当時を振り返り、「一番最初に声を聞かせてくれないかと言われたのが嬉しかった」と語ってくれました。
1本のマイクを囲んだ「家族」の絆
話題はアフレコ当時の裏話へ

大家族の賑やかなシーンは、なんと1本のマイクを4〜5人のキャストで囲み、入れ替わり立ち替わり収録していたそうです。
「細田さんが『実際に家族が集まっている空気感を撮りたい』とおっしゃって。台本を持って、喋ったらスッと引く。テンポ感が重要で、先輩たちの足を引っ張らないよう必死でした」(神木さん)
あの一体感は、物理的にも「密」な環境から生まれていたのです。技術的な上手さだけでなく、その場の「空気」ごとフィルムに焼き付ける。
細田作品のリアリティの秘密を垣間見た気がしました。

プロフェッショナルたちの「表現」の凄み
お互いの「好きなシーン」についてのトークでは、二人のプロフェッショナルな視点が光りました。
神木さんが挙げたのは、現実世界とアバター(OZの世界)での演じ分け。
「みなさん、アバターになると若干キャラクターっぽい声のトーンになるんです。その違いが細かく描かれているのが好きですね」
一方、細田監督は、神木さんの「吸収力」を絶賛。
「コミカルなシーンで、何度もテイクを重ねるたびに、どんどん上手い作画の動きに神木くんの芝居が近づいていく。すぐに自分のものにしていく才能がすごかった」
30年という芸歴(なんと32歳にして芸歴30年!)を持つ神木さんと、それを見守る監督の温かな眼差し。二人の信頼関係が伝わってくるようなトークセッションでした。
そして伝説のセリフ。
「よろしくお願いしまーーーす!!」へ
イベントの最後、神木さんからファンへのサプライズが。
「音量は保証できないんですけど……」と前置きしつつ、マイクを握りしめ、深呼吸。
「よろしくお願いしまーーーす!!」
会場中に響き渡った、あの名セリフ。
時を超えても色褪せない、叫び。鳥肌が立つと同時に、明日への活力が湧いてくるような瞬間でした。
「映画って不思議なもので、作った後もこうして長く愛され、続いていく。それこそが映画の、アニメーションの魅力ですね」と細田監督。
『サマーウォーズ』が描いた「つながり」は、スクリーンの中だけでなく、こうして作り手と私たち観客の間にも確かに存在しています。
アニャァフという新しい映画祭で、その絆を再確認。
さあ、私たちも。
自分の持ち場で、それぞれの戦いを、希望を持って。
「よろしくお願いしまーーーす!」

取材・文 にしおあおい(シネマピープルプレス編集部
)
開催概要
* 会期:2025年12月12日(金)~12月17日(水)
* 会場:
* ミッドランドスクエア シネマ 1&2
* 109シネマズ名古屋
* 名古屋コンベンションホール
* ウインクあいち 他
🎫 チケット料金(税込)
| 券種 | 大人 | 学生 | 高校生以下 |
| 上映のみ | 1,500円 | 1,000円 | 500円 |
| 上映+トークショー | 2,000円 | 1,500円 | 1,000円 |
| トークショーのみ | 1,000円 | 500円 | 100円 |
| オールナイト上映 | 3,500円 | 3,000円 | 2,500円 |
※18歳未満の方はオールナイト上映をご覧になれません。





