愛知県名古屋市や犬山市を舞台にした映画『80年後のあなたへ』が16日公開初日を迎え、ミッドランドスクエアシネマで行われた初日舞台挨拶に、渡邉このみさん、向井怜衣さん、岩崎碧さん、滝口芽里衣さん、皆瀬翔さん、村上なずなさんら主要キャストと脚本、プロデュースを手がけた髙石明彦さんが登壇。
撮影の日々を振り返るとともに、作品にこめた想いや作品のテーマでもある「未来に残したいもの」について熱く語りました。
本作は、若手俳優の発掘・育成と地方創生を目的とした「私の卒業」プロジェクトの第6期作品として制作された青春群像劇。愛知の高校生たちが、実際に市長に掛け合い制定された「なごや平和の日」の実話から生まれたオリジナルストーリーです。
キャストが語る役作りと撮影秘話
オーディションで約1300人の中から選び抜かれた気鋭のキャストたち。この日も名古屋駅前でのPRを終え、舞台挨拶に登壇した彼らは、自身が演じた役柄への深い想いや、試行錯誤を重ねた役作りを振り返りました。
生徒会長・山川ひまり役を演じた渡邉このみさんは、自身も高校時代に生徒会長を務めていた経験から役と自身がリンクする部分も多かったとコメント。「平和の日」を制定したものの、その後の未来についえ思い悩むひまりを演じるにあたり「名古屋の空襲や戦争について深く学んで役作りに臨みました。だから、すごく思い入れがあります」と語りました。これには、髙石プロデューサーも「さすが元生徒会長」と称賛。
また、過去にトラウマを抱える富田依子役の向井怜衣さんは、自身とはかけ離れた重い過去を持つ役どころに苦心したと吐露。「根は明るいけれど言葉に重みを持たせるのが難しく、たくさん研究しました」と明かすと「夜中の気持ちを落としやすい時間帯に、彼女の経験を想像して、自分の気持ちを落とし込むこともあった」と役作りの一端を明かしました。
元野球部員で進路と恋愛に悩む戸村隆彦役の岩崎碧さんは、自身と役柄の「ポンコツな部分」が似ていると会場を和ませつつ、「役のポンコツではなく、自分のポンコツが出てしまわないように演じるのが大変だった」と語りました。
そして、おばあちゃんからもらった眼鏡を大切にしている前島優里役の滝口芽里衣さんは、普段演じることが多い暗めの役とは異なる明るい役に苦戦しつつも「優里ちゃんが持つ柔らかい雰囲気を意識して表情を作ったり、髙石さんや北川監督のアドバイスを受けながら撮影していました」と振り返ります。
続けてラジオ局のディレクター・髙橋芳人役の皆瀬翔さんは、役作りのために毎日10時間以上ラジオを聴き込んだエピソードを披露。「ずっと生活のそばにあったので、いまでもふと聞きたくなります」と、その魅力を語りました。
そのラジオ局でアルバイトする大学生・山中あゆみ役の村上なずなさんは、本作が演技初挑戦。「不安と緊張でいっぱいいっぱいだったんですけど、現役大学生として役と重なる部分もたくさんあって」と、共通点が役へのヒントになったことを明かしました。
みんな大好き矢場とん生活
撮影中のエピソードとして、劇中にも登場するトンカツ屋の話題に。岩崎さんが「撮影終わった時に『よかったら食べて下さい!』とお店の方が差し入れして下さって、それが本当に美味しかったです」と、笑顔を見せると、向井さんは「私は食べるシーンも多かったので、何テイクも重ねて、たくさん食べられました。めちゃくちゃ美味しいですよね?」と明かし、渡邉さんも「3日に1回ぐらい食べに行ってました!」と振り返るなど、キャストの活動源になっていた様子でした。
撮影のない日は撮影現場をよく見に行っていたという滝口さん「年上の方が多い撮影現場だったんですけど、いろんな世代の方のお芝居をこんなに間近で見られたのは初めてで、いろんなことをたくさん吸収させていただきました。学びにもなったんですけど、見学するのがとにかく楽しくて、撮影のない日はよく見学に行ってました」と目を輝かせると、髙石プロデューサーも「自主的に見学してもらった方が勉強になると思って」と、「私の卒業」プロジェクトが目指す若手育成の成果にもなったことを語り、満足げな表情をみせました。
平和に対する意識の変化に…
今年は戦後80年という節目の年。名古屋もたくさんの空襲を受け、名古屋城の天守閣が炎上するなど大きな被害に見舞われた。渡邉さんも、役を通して意識に変化があったという。「劇中にも、戦争遺構(せんそういこう)と言って、空襲で燃えなかったものを探しに行くというパートがあるんです。それを見ると、昔のことですけど、とても近いところに戦争があったんだなあということを深く実感します」と語った渡邉さんは「だからといって身構えて欲しくはない」とも。「この物語を通して、平和に繋いでいくというポジティブなメッセージを伝えていきたいと、共演した中川翼くんと一緒にふたりのシーンを作っていきました」と力強く語りました。
愛知県出身で、朝の情報番組にも出演している村上さんは、役を通してたくさんの気づきがあったという「『名古屋の魅力ってこんなにあるんだ!』と、新しい発見が多くて楽しかったです。この作品と出会って、ワークショップを通じて見聞きする中で、戦争の悲惨さを自分の体で感じましたし、平和って当たり前じゃないんだという思いが改めて芽生えました。」
皆瀬さんも、自身の戦争に対する認識について「小さい頃から勉強してきたつもりでしたが、いかに浅かったかを痛感しました」と、率直な言葉で明かす。「戦争をイメージした時、他の都道府県のことを思い浮かべる人も多いと思うんです。調べてみると教科書に載ってないようなことも多くて、改めて自分の目で見て、周りに伝える大切さに気づきました。」
主題歌「透明の楽譜」乃紫さんからのビデオメッセージ
この度、映画『80年後のあなたへ』の主題歌を担当させていただきました、シンガーソングライターの乃紫です。主題歌の「透明の楽譜」という曲は、映画と同じく、この先の未来に何を残すか?ということをテーマに書き下ろさせていただきました。曲の歌詞の一節で、「今この瞬間だけは未来を疑えない」という歌詞があります。思春期の頃に出会う大切な仲間や自分を取り巻く環境に常に感謝して、どんな大人になっていくのか、大人になって何が残るのかっていうことを考える、そういうきっかけになればいいなと思って歌詞を書きました。この映画作品や「透明の楽譜」という曲が、皆さんにとって大切な作品になることを願っています。以上、乃紫でした。
髙石さんは「彼女の歌詞の、若者のモヤモヤした感情を言葉にする力に惹かれ、平和というテーマで曲を書いてほしいとお願いした」と、その起用理由を語りました。
そして未来に残したいもの…
最後に、作品のテーマにもなっている「未来に残したいもの」を登壇者それぞれが語りました。
渡邉このみさん: 「食べることが大好きなので、日本の食文化を残していきたい」
向井怜衣さん: 「犬や猫の殺処分をなくす活動を広げ、たくさんの命が幸せになれる未来」
岩崎碧さん: 「自分自身も救われたエンターテイメント。次は自分が勇気を与えられる存在になりたい」
滝口芽里衣さん: 「家族や友達との大切な思い出を形として残したい。そして大好きなトマトを食べ続けたいので、トマトを残したいな(笑)」
皆瀬翔さん: 「僕はスポーツ。武器や戦争ではなく、スポーツで各国が競い合う文化が平和に繋がる」
村上なずなさん: 「15年一緒にいる愛犬バニラとの思い出。辛い時に寄り添ってくれる心の温かさ、それを残していきたい!」
髙石プロデューサー: 「人を認める心。AIが進化する未来だからこそ、人と人との絆や人間らしい心を残したい」
最後にキャストを代表して渡邉さんからメッセージ「戦後80年という記念の年にこの作品に携われて光栄です。若い人たちを中心に、とてもポジティブで前向きなメッセージがある作品なので、明日を前向きに過ごせるきっかけになれば嬉しいです。」
映画『80年後のあなたへ』は、ミッドランドスクエアシネマほか、全国の劇場で公開中です。あなたが未来に残したいものはなんですか?
ぜひ映画館で見つけてみて下さい。
取材・文 にしおあおい(シネマピープルプレス編集部)
作品紹介
【あらすじ】「平和の日」が制定されたけど、これで本当に終わりで良いのだろうか?と自問する生徒会長の女の子。そんな彼女に想いを寄せ、代々続く有松絞りの家業を継ぐ決意をする男の子。
また、戦争時には、疎開先として戦争の被害にあってない街・犬山に暮らし、心に壁を持つ少女と、名古屋名物「矢場とん」が大好きで陽気な元野球部員との恋物語。
高校入学時にお婆ちゃんからもらった大切なメガネをかけていた女の子が、自分を変えようと一歩踏み出す成長の物語や、夢を語れずにラジオ局でアルバイトする女子大生とディレクターの淡い恋模様。
7人の若者たちがそれぞれの日常の中で、戦後80年という節目を迎える今年、「未来に残したいもの」とは何かという問いに向き合います。
彼らが悩み、葛藤しながらも、未来に向けて一歩を踏み出していく姿を描いた青春群像劇です。
出演:岩崎碧、内山優花、川口飛雄我、國分瑠真、斎藤さらら、櫻井亜蓮、沢田京海、鈴木夢、滝口芽里衣、瀧澤僚太、千葉青八、寺島季咲、中川翼、野崎珠愛、Hitomi、平川丈、平田風果、松岡拳紀介、皆瀬翔、向井怜衣、村上なずな、山本藍、渡邉このみ
脚本・プロデュース:髙石明彦
監督:北川瞳 音楽:平野真奈
主題歌:乃紫「透明の楽譜」(MR8/MIJ Quality Records)
プロデューサー:宮﨑和明
撮影:小野貴宏 照明:後藤史兆
録音:金子徹 美術:小林大輔
企画・制作・配給:The icon
©2025 映画 『80年後のあなたへ』製作委員会
公式サイト https://watasotsu.com/