伊藤さとりの映画で人間力UP!今年の米アカデミー賞®で考える映画賞

 

日本時間1/23(火)22時半、第96回米アカデミー賞ノミネートが発表されました。

日本勢はというとゴールデングローブ賞アニメーション部門受賞の宮﨑駿監督の『君たちはどう生きるか』が予想通りノミネート(これは確実に受賞するでしょう)。そして注目の『ゴジラ-1.0』が日本初の視覚効果賞に名を連ね、ヴィム・ヴェンダース監督と組んだ役所広司主演の日本映画『PERFECT DAYS』が、国際長編映画賞の最終5作に残りました。

ではどの作品が審査員の胸に刺さったのか?

最多ノミネートはクリストファー・ノーラン監督の『オッペンハイマー』で13部門、続いてヨルゴス・ランティモス監督の『哀れなるものたち』が11部門、そしてマーティン・スコセッシ監督の『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』が10部門、『バービー』はライアン・ゴズリングが助演男優賞含む7部門8ノミネートで、主演のマーゴット・ロビーとグレタ・ガーウィグ監督が漏れるというまさかの展開。

 

そんな監督賞を見てみるとノーラン、スコセッシ、ランティモス、国際長編映画賞にノミネートもされている『関心領域』のジョナサン・グレイザー、紅一点となったジュスティーヌ・トリエという並び。スコセッシは『ディパーテッド』で作品賞、監督賞受賞経験あり。ノーランは技術部門の受賞はあるけれど自身は驚きの無冠。ランティモスは『女王陛下のお気に入り』で9部門10ノミネートされたものの主演女優賞のみ受賞。グレイザーもトリエもアカデミー賞初ノミネート。こう考えると、監督賞はノーランなのかもしれません。

となれば作品賞は?

ちなみにここ数年は作品賞と監督賞がセットになっていましたが、2022年の『コーダ あいのうた』や2019年『グリーンブック』、2017年『ムーンライト』の年など、作品賞と監督賞は違う作品です。特に忘れてはならないのが、来年から作品賞は主要キャストに多様性を用いることや制作サイドに女性、LGBTQ +、障がい者の起用、テーマも女性や少数民族、マイノリティなど、という規定の中から二つを満たすことで適用とされます。

その為、徐々にノミネート作品にも変化が現れているのですが、そう考えると、あれ?!『バービー』が作品賞受賞というのもない話ではない。だって女性の地位確立をテーマに、女性監督、女性主演、バービーやケンには様々な民族の俳優を起用、プロデューサーの中に主演のマーゴット・ロビーの名があるのだから。

そもそも米アカデミー賞は映画の祭典であり、世界に発信する映画賞なので、映画のクオリティを意識しつつも映画から社会に変化を、も大事にしています。映画から偏見を減らし、平和を願うからこそダイバーシティ(多様性)を目指す米アカデミー賞。

ちなみに『関心領域』には『落下の解剖学』で主演女優賞にノミネートされたザンドラ・ヒュラーも出演。ホロコーストの人間ドラマで、カンヌ国際映画祭グランプリとなった『関心領域』は、米アカデミー賞で国際長編映画賞含む5部門ノミネートなので、日本の『PERFECT DAYS』の強敵ということになりますね。さぁ、今年はどんな結果に?第96回アカデミー賞授賞式は日本時間の3月11日です。

 

伊藤さとり

 

映画パーソナリティ(映画評論・映画解説/心理カウンセラー) 

ハリウッドスターから日本の演技派俳優まで、記者会見や舞台挨拶MCも担当する。全国のTSUTAYA店舗で流れる店内放送wave−C3「シネマmagDJ、俳優対談番組『新・伊藤さとりと映画な仲間たち』(YouTubeでも配信)、東映チャンネル×シネマクエスト、映画人対談番組『シネマの世界』など。NTVZIP!」、CX「めざまし土曜日」TOKYO-FMJFN、インターFMにもゲスト出演。雑誌「ブルータス」「Pen」「anan」「AERA」にて映画寄稿。日刊スポーツ映画大賞審査員、日本映画プロフェッショナル大賞審査員。

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