伊藤さとりの映画で人間力UP!=『エクソシスト 信じる者』×『トーク・トゥ・ミー』ホラー映画から見るオカルト論=

霊を信じるか信じないかで映画の見方は変わる

 

『エクソシスト』(1973)は絶大なるファンを持つホラー映画の金字塔だ。そもそもは1949年にメリーランドで起こった悪魔憑依事件をベースにした小説が原作となる。

それをウィリアム・フリードキン監督が、誰もが想像をし得なかったポルターガイスト現象を随所に折り込み、おどろおどろしい演出とサウンド、耳に残るマイク・オールドフィールドの「Tubular Bells」の曲によってインパクトある映画として完成。その年、興行的にも大ヒットを記録し、第46回アカデミー賞脚色賞と音響賞を受賞した。

そこからシリーズ化もされたのだが、12/1日本公開となる新作『エクソシスト 信じる者』(2023)は、1作目を見ていれば十分に理解できる作品だ。あの時、憑依された少女リーガンと歳の近い少女が憑依され、今作では2人になっているのも新たな試みだった。ひとりはシングルファーザーの元で育ち、亡くなった母恋しさから親友と降霊術を試してしまう。そこからはお決まりの怪現象が二人に降りかかるのだが、特徴として「精神疾患の疑い」、「キリスト教会による悪魔祓いの評議」、「エクソシスト(悪魔祓い)は世界中に存在する」という骨組みで、精神疾患(解離性同一性障害)と憑依の違いについて父親の視点で検証していく過程が描かれている点だ。なので主人公は憑依されたひとりの無神論者の父親となる

 

 

 

 

これに関しては『ヴァチカンのエクソシスト』(2023)のモデルとなるチーフエクソシストのアモルト神父の記述にもあるが、“悪魔憑きと思われるクライアントの98%は精神疾患か脳の問題、残りの2%は説明出来ない”というものにも裏付けられている。これは『エミリー・ローズ』(2005)のモデルとなった1976年のアンネリーゼ・ミシェル事件でも裁判になったことで、憑依なのか精神疾患なのかは永遠のテーマなのだ。

興味深いのは憑依したと思われるもうひとりの少女が、教会で奇怪な行動を起こすシーンがある。

果たして悪魔や悪霊は神の家と言われる教会に入ることが出来るのか?こんな疑問が生まれるが、本来、教会は祈り場であり、祓う場ではない。となれば悪魔だろうが悪霊だろうが入ることは可能なのだろう。そしてもうひとつ特徴的なのは、エクソシストという仕事は、日本で言えば祈祷や怨霊退治をする陰陽師であり、世界各国に存在することを伝えている点だった。確かに悪魔と言ってしまうとキリスト教のイメージだが、日本は自然宗教が主なので、悪魔は悪霊に値するのかもしれない。このように実はとても検証し尽くした作品が『エクソシスト 信じる者』だった。

『エクソシスト 信じる者』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こう考えると12/22公開の『トーク・トゥ・ミー』(2023)は無宗教だと公言する人や宗教の話は難しいと考える人にはハードルが低く見やすい作品なのかもしれない。何故ならば、本作は日本人にお馴染みの「コックリさん」の変形型降霊ゲームであり、霊を90秒間体内に入れて楽しむ若者の惨劇を描いており、神や悪魔という言葉は登場しない。そんな物語の主人公は高校生の女の子だ。特に彼女の精神状態について説明はされていないが、人にくっつくクセがあり、やや不安定というか、どこか危うい雰囲気を醸している。彼女の母親は謎の死を遂げており、父親はそれについて詳しく説明をしていないことで、彼女はその危険なゲームに囚われていく。やがて悲劇が起こるのだが、『エクソシスト』シリーズと違い、大袈裟なポルターガイスト現象は起こさず、目つきや行動で“憑依されている”ことを衝撃的に表現していく演出であり、何よりも若者たちが信じきっているので精神疾患を疑うエピソードは出てこない。

 

 

 

 

 

けれど、本作で描かれることは“憑依”なのか?映画は答えを出していないが、あくまでも主人公の女の子の視点で描かれているので彼女からしたら“憑依”なのだ。もしこの作品を『エクソシスト 信じる者』のように大人の視点から描いたらどんな展開を迎えるのか想像して欲しい。そうなれば精神疾患を疑うエピソードが具体的に描かれるかもしれない。

しかも偶然にも、両作品とも“女の子”が憑依され、母親が他界して不在の状況下。これに関して個人的に思うのは、先に挙げた3作(旧作『エクソシスト』も含む)の“女の子”や、『オーメン』(1976)や『ヴァチカンのエクソシスト』のような“子供”は、純粋さと共感能力が高いからではないだろうか。“信じやすさ”と“何かが入り込みやすい”純度や寂しさが鍵となる。

『トーク・トゥ・ミー』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こう読み解くとホラー映画は驚かせてくれる映画というだけでなく、宗教観や自身の体験や思想により見方も変わるし、角度を変えれば違う視点で物語を味わえるだろう。

 

『エクソシスト 信じる者』

<スタッフ&キャスト>

監督・脚本:デヴィッド・ゴードン・グリーン

製作:ジェイソン・ブラム 製作総指揮:ダニー・マクブライド

出演:レスリー・オドム・Jr、アン・ダウド、ジェニファー・ネトルズ、ノーバート・レオ・バッツ、リディア・ジュエット、オリヴィア・マーカム、エレン・バースティン

配給:東宝東和

© Universal Studios. All Rights Reserved.

公式サイト:exorcist-believer.jp 公式Twitter:https://twitter.com/uni_horror

※北米公開日:10月13日(金)

<ストーリー>

12年前にハイチの地震で身重の妻を亡くして以来、ヴィクターは一人娘のアンジェラを育ててきた。ある日、アンジェラとその友人キャサリンが森の中で姿を消し、3日後に何が起こったのかまったく覚えてない状態で戻ってきた時、2人の少女とその家族はかつてない恐怖と対峙することになる…。

『トーク・トゥ・ミー』

<スタッフ&キャスト>

監督:ダニー・フィリッポウ&マイケル・フィリッポウ

出演:ソフィー・ワイルド,ジョー・バード,アレクサンドラ・ジェンセン

北米配給:A24 ★北米でA24ホラー最高の興行収入を達成

製作:オーストラリア(2022年10月30日公開)

本編尺:95分

<STORY>

母親を亡くした女子高生のミアは、友人と一緒にSNSで流行りのある“ゲーム”に参加する。ルールは簡単で、①“手”を握り、②「トーク・トゥ・ミー」と語りかけると、③自分の身体に霊が憑依する。ただし、必ず90秒以内に手を離すこと。最高に危険で、最高にハイになれるそのゲームのスリルと快感にのめり込んでいたある日、いつものように手を握り、語りかけると、そこに現れたのはミアの母親だった——。

 

伊藤さとり

 

映画パーソナリティ(映画評論・映画解説/心理カウンセラー) 

ハリウッドスターから日本の演技派俳優まで、記者会見や舞台挨拶MCも担当する。全国のTSUTAYA店舗で流れる店内放送wave−C3「シネマmagDJ、俳優対談番組『新・伊藤さとりと映画な仲間たち』(YouTubeでも配信)、東映チャンネル×シネマクエスト、映画人対談番組『シネマの世界』など。NTVZIP!」、CX「めざまし土曜日」TOKYO-FMJFN、インターFMにもゲスト出演。雑誌「ブルータス」「Pen」「anan」「AERA」にて映画寄稿。日刊スポーツ映画大賞審査員、日本映画プロフェッショナル大賞審査員。

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