11/10(金)より公開中
朝井リョウのベストセラー小説を、稲垣吾郎×新垣結衣×磯村勇斗という豪華キャストの共演で映画化。
タイトルからわかるように、性欲が関係する作品ではあるけれど、想像とは全く違ってた。
自身の性的指向のために全てを諦め、「明日生きていたい」気持ちを持てない人たち。
今まで「多様性」の意味を深く考えたことはなかったけど、そこからこぼれ落ちる人の存在を、
想像すらしなかった自分の浅さに気付かされ。
他人から「ありえない」と片付けられる道を歩む人たちの繋がりを求める切実な思いに胸が苦しくなった。
原作の評価が高かったので、映画を観てから読んでみたら、映画では掴みきれなかったところが、
ストンと腹に落ちてきた。映画は基本的に原作に忠実。でも構成を変えて登場人物を削り、
世間とのズレに苦しむ人たちに優しい眼差しを向け、繋がりの温かさを強調している感じがした。
映画オリジナルの「ありがとう」というセリフにも、岸善幸監督の想いが表れていれるよう。
さらにキャスト。
複雑な感情を抱え、頑なに心を閉ざした人物を、いつもとは全く違う顔で演じた新垣結衣、
そしてどんなキャラクターでもナチュラルになりきる磯村勇斗。
そもそも2人とも性的な匂いが薄くて(あくまで個人的に)嫌味がない。
あることを試すシーンの2人なんて、ホントに可愛いらしく愛おしく。ずっと見守っていたくなる。
硬質な空気感を醸し出す稲垣吾郎も新鮮で、若手俳優の佐藤寛太、東野絢香もよかった。
さて今回の写真のアイテムは、水とカニクリームコロッケ。水については触れません。
カニクリームコロッケは、原作では会話に登場、そして映画では分かり合える人との暮らしの象徴のように使われてた。
映画ライター 尾鍋栄里子(おなべえりこ)
Twitter @onabe11
映画館バイト→雑誌映画担当→映画ライターと、人生の半分を映画業界の片隅で生きる名古屋人。
朝日新聞、中日新聞、フリーペーパーなどで映画紹介記事を執筆中。
映画フリーペーパー C2【シーツー】web版ブログ〝オー!ナイス!”不定期掲載