2022年12月初旬に開催予定の短編コンペティション「おいしい映画祭」との連動企画ではじまりました、
「おいしい映画」大人版。
このコラムは、映画の中に登場する「おいしい」シーン、つまり食事のシーンをピックアップして映画紹介をしていきます。
編集長が高校生のフリーペーパーChFILES東海版で寄港中の「おいしい映画」の大人版かな。
ちなみにChFILESは映画紹介だけじゃなく、お食事シーンにでてくる料理を再現してオリジナルレシピも掲載しています。
大人版も、料理の再現を目指します。首を長くしてお待ちください。(笑)
記念すべき最初の作品はフランス映画「デリシュ!」
美食の国フランスから届いたおいしい映画!フランスで初めてレストランを作った男の爽快な人間ドラマです。
1979年の革命直前のフランスが舞台で誇り高き宮廷料理人が主人公。この時代は「美食」は貴族だけのもので、庶民と貴族が一緒に食事をするなどは許されない時代。庶民はキッチンやダイニングなどなく、談話室でパンやスープを食べていたころ。庶民は外で食事なんてありえない。
また、料理人は宮廷が指示したものしかつくってはいけません。ひたすら料理を複製することだけを強いられて何も発明することができない。その頃の貴族達はカツラや指輪と同じ感覚で料理を装飾品とみなし彼らの富と優越性を満たすものだからです。
さて、映画の冒頭で料理人のたくましい手が小麦粉を練り上げて、伸ばしている姿が映し出されます。
これが、うっとりする美しさ。料理人が食べ物を作る所作を映し出すこの幕開けでじゅるるる〜と、作品に没入。
この映画の主人公の腕利き料理人マンスロンが仕切っている宮廷料理の厨房。鍋を洗い、野菜を切る者、フライパンを返す料理人が忙しく動いています。厨房内をぐるっと見渡したマンスロンが、「バターだ!精を出せ!バターを使え。」と叫ぶ。「魚介には氷を、肉には火を、鳩はレアに、野菜はカリカリ!」と、すべての料理に気を配ります。色とりどりの野菜、氷漬けの新鮮な魚介類、グリルで焼いた肉などの食材映像が次から次へと!思わず食欲をそそられます。「ただ作るんじゃない。うまい料理を作るんだ。喜ばせろ!」と、公爵の食事会に集った貴族たちに、極上の料理を提供しようとするマンスロンの姿は料理人としてのプライドが垣間見え、人物紹介をかねたキャッチーなはじまり。
物語は10分ほどで急展開!
マンスロンが冒頭で精魂込めて作った自慢の創作料理“デリシュ”がゲストたちに振る舞われますが、この食材は「ジャガイモとトリュフ」。
当時のフランスでは、ジャガイモとトリュフは豚のエサとして使われることが多く「二大悪魔の食べ物」と言われていて、貴族が口に入れる食材ではなかったことから、「不服従の罪」で職を解かれてしまいます。息子とともに故郷に戻り、あまりのショックで料理を封印していた彼のもとに、あるとき、謎の女性ルイーズが「弟子にしてほしい」と訪ねてきます。
この時代、城の厨房に女性料理人はいない。女性は料理をすることが禁止されていたので当然、彼は断りますが、彼女の強い 願いを聞き入れ弟子にすることに。
マンスロンの実家は、馬車の中継所、つまりサービスエリアか道の駅ですね。そこでルイーズの助力もあって、彼はこの場所で、旅人や隣人を相手に、前菜からメイン・ディッシュ、そしてデザートまでという斬新なメニューで食事を提供するんです。そうです、これがレストランの始まりです。ルイーズと息子は、いまでいうホールスタッフ。このレストランが評判をよび、ついに、公爵の耳にも届きます。
フランス革命とフランス初のレストランの誕生秘話という食革命がうまく連動する構成もお見事ですが、レストランのあるべき基本姿勢が台詞に散りばめられているので、食べる側だけじゃなく、提供する側、飲食業界のみなさんにもぜひ観ていただきたい作品です。料理人だけでなくホールスタッフの存在が重要なのだと改めて感心するシーンもありましたよ。
おいしい料理を食べたときのような幸福感にあふれる物語。
地方の郊外にある隠れ家的レストランが大流行りですがそんな田舎の食卓を映し出すエンディングも素敵ですぞ
(C)2020 NORD-OUEST FILMS-SND GROUE M6-FRANCE 3 CINEMA-AUVERGNE-RHONE-ALPES CINEMA-ALTEMIS PRODUCTIONS
マンスロンの自慢の創作料理“デリシュ”
レシピです!作ってみよう〜
■生地
・小麦粉 300g
・ジャガイモのでんぷん粉 35g
・バター 250g
・塩 5g
・砂糖 15g
・全乳 7cl(70ml)
・卵黄 2個
■フィリング
・大きめのジャガイモ 600g
・生のトリュフ 50g
・カモの脂 120g
・すりおろしたカンタルチーズ 90g
・塩、コショウ 少々
■生地の準備
小麦粉にでんぷん粉、塩、砂糖を加えて混ぜる。
あらかじめ柔らかくしておいたバターを指の先で混ぜ合わせる。最後に全乳と卵黄を加え、なめらかになるまで混ぜ合わせ、生地をまとめる。生地は涼しい場所に置いておく。
■フィリング
ジャガイモは皮をむき、厚さ0.5㎝幅に薄切りする。大きめのフライパンにカモの脂を熱し、薄切りしたジャガイモを黄金色になるまで焼き、塩コショウで味を調える。火からおろしキッチンペーパーで水分を取り除き、保温する。
同時に、トリュフをスライスする。
打ち粉を振った作業台であらかじめ伸ばしておいた生地を、小さめの型に敷き詰める。薄切りしたジャガイモ、すりおろしチーズ、スライスしたトリュフを交互に重ねていく。
表面を生地でふたをするように覆い、余った生地でつくった三日月型を飾る。
180℃に予熱したオーブンで30分焼く。
オーブンから取り出し、温かいうちに召し上がれ。
2020年製作/112分/G/フランス・ベルギー合作
原題:Delicieux
配給:彩プロ
*ChFILEs東海版 https://www.ch-files.net/lineup/
*おいしい映画祭https://oiceiga.com/
おいしい映画祭は作品募集中です!