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モロッコの新星が描く孤独な女性たちの出逢いと変化
『モロッコ、彼女たちの朝』
女性の友情や生きづらさを描く良質な映画が、立て続けに公開されているけれど、これもそのひとつ。
女性監督初のアカデミー賞モロッコ代表に選出された作品で、
日本で初めて劇場公開されるモロッコの長編劇映画でもあるそう。
舞台はモロッコのカサブランカ。
メディナ(旧市街)でパン屋を営むシングルマザー、アブラと、仕事を探す未婚の妊婦サミア。
孤独を抱えた2人の出逢いが、それぞれに希望もたらしていく。
マリヤム・トゥザニ監督自身の思い出をもとにしたという物語は、目新しいものではない。
それなのにグッと引き込まれてしまう。
その理由のひとつは、今まであまり知る機会がなかったカサブランカの庶民の営みが垣間見られること。
メディナの猥雑な街の雰囲気やアブラの店に並ぶ食べ物、それを作る過程も興味深い。
その日常の中でふたりの心の触れ合いと変化を
描き出した繊細な演出、フェルメールやカラヴァッジョに影響を受けたという絵画のような映像もいい。
そして悲しみに囚われ、感情を殺して生きているようなアブラを演じた『灼熱の魂』のルブナ・アザバル、事情を抱えた妊婦サミアを演じたニスリン・エラディ。
醸し出す空気と表情でそれぞれの心情と変化を表現するふたりの演技が素晴らしく。
辛い過去に向き合い感情を解き放つアブラの姿、姉妹のように、母娘のように深まっていく
ふたりの関係に温かい気持ちに。
しかし、ただのいい話では終わらない。
観る人にその後を想像させるラストがいつまでも後を引く。
さて今回の写真はアブラの店で売られているムスンメン。
モロッコでは朝食によく食べられるクレープみたいなもので、ハチミツをたっぷりかけるのが定番だそう。
映画でもアブラが娘にハチミツかチョコか、どちらをつけるか聞いてたな。
食べてみたいと思ったら、映画公式の作り方動画が!
https://m.youtube.com/watch?v=eK7bWviwpgw
早速トライしてみたけど、薄く伸ばすのが難しくてキレイに焼けず…
ま、見た目は悪いけどモチモチして美味しかったです。
2019年製作/101分/G/モロッコ・フランス・ベルギー合作
原題:Adam
配給:ロングライド