エリコのフォトdeシネマ♪ Vol.10『BLUE/ブルー』⁣

静かな情熱が立ち上る青春映画『BLUE/ブルー』

𠮷田恵輔監督が30年以上続けてきたボクシングを題材にオリジナル脚本を執筆。
「流した涙や汗、すべての報われなかった努力に花束を渡したい気持ちで作った」という『BLUE/ブルー』。

主人公はボクシング愛は誰より強いのに才能がなく負けてばかりの瓜田、
瓜田の後輩で、抜群の才能とセンスで日本チャンピオンを目指す小川、
そして好きな娘の気を引くために軽い気持ちでジムに入会した楢崎。
挑戦者として青コーナーで戦う男たちだ。

努力が必ず報われるとは限らず、
例え才能があっても勝利や成功の保証はない。
𠮷田監督はそんな厳しい現実に抗い、
敗れても傷付いても挑み続ける男たちの背中を見つめ、静かな情熱を立ち上らせていく。

𠮷田監督の『ヒメアノ~ル』『愛しのアイリーン』が、人間の狂気やどす黒い感情を噴出させ、観客の脳と心をぐらぐら揺らすアッパーカットだとしたら、本作は男たちの痛みや切なさがじわじわと胸を締め付けるボディブローのような映画。

監督自らが殺陣指導を務めたボクシングシーンは、リアルなゆえにショー的な派手さはないけれど、生々しい痛みがしっかり伝わってくる。

ボクシングシーンも演じたキャストも素晴らしい。
瓜田を演じた松山ケンイチは、2年間ジムに通ったというだけあって完璧なボクサー体型で、自分への怒りや嫉妬心を内に秘めた哀切滲む佇まいがいい。
ライバルで後輩の小川役の東出昌大も、ダメなのに憎めない楢崎役の柄本時生もよかった。
3人が『聖の青春』以来となる共演っていうのも感慨深いね。

さて写真は、ボクシング以外には興味がない小川のキャラクターがよくわかる〝甘栗むいちゃいました“のエピソードから。
小川みたいな人って付き合うのは大変そう(苦笑)

(C)2021「BLUE ブルー」製作委員会

2021年製作/107分/G/日本
配給:ファントム・フィルム

https://phantom-film.com/blue/

フォトdeシネマ
映画ライター 尾鍋栄里子(おなべえりこ)
映画館バイト→雑誌映画担当→映画ライターと、人生の半分を映画業界の片隅で生きる名古屋人。
朝日新聞、中日新聞、フリーペーパーなどで映画紹介記事を執筆中。
映画フリーペーパー C2【シーツー】web版ブログ〝オー!ナイス!”不定期掲載

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