里奈のシネマコラム『あの場所で逢おう』Vol.4  「愛し合ってるかい?」映画にとじこめておく色褪せない音楽

■#4「愛し合ってるかい?」映画にとじこめておく色褪せない音楽

「世界は殺伐としているけど、みんなに聞きたいことがあるんだ。愛し合ってるかい?」 スクリーンの中の忌野清志郎は何度も観客に問いかけた。

ロックバンドRCサクセションのフロントマン、「トランジスタ・ラジオ」「雨上がりの夜空に」など多数のヒット曲を生み出し、 “KING OF ROCK”と呼ばれた男—忌野清志郎。日本ロック史に不滅の足跡を刻み、2009年惜しまれながらこの世を去った彼のデビュー55 周年を記念したドキュメンタリー映画 『愛し合ってるかい? 忌野清志郎が教えてくれた』が公開される。

私が清志郎を知ったのは幼少期。母は若い頃から音楽が好きで、家にたくさんのレコードとCDがあった。Queen、レッド・ツェッペリン、マイケル・ジャクソン、BON JOVI、KISS・・・洋楽中心の母のコレクションの中にあったのがRCサクセション。「清志郎にキティちゃんのハンカチにサインをもらった」という自慢話を何度も聞いた。そんな母の血か、私もバンドやらギタリストやらに傾倒するようになる。清志郎のライブは三度見ることができた。お馴染みの「イェーイって言えー!」というコール&レスポンスができたことは大切な思い出だ。

本作は「語り継ぐ」、「歌い継ぐ」、「創り継ぐ」をテーマに制作されたといい、清志郎にまつわる著名人たちの証言や、過去のアーカイブから貴重なライブ映像、本人のインタビューを中心に構成されている。三浦友和、竹中直人、泉谷しげるをはじめ彼らが思い出話を語るとき、一様に穏やかな笑顔になる。嬉しそうなその表情から、清志郎がどんな人間性であったか、そしてその生き様に対するリスペクトを感じずにはいられない。
闘病のため2年間の活動休止を余儀なくされたあと、武道館で開催された完全復活祭。頭髪が抜け落ちた闘病中の写真から始まり、その姿がみるみる回復してメイクを施した“忌野清志郎”に復活する姿を収めたスライドショーは有名。そして1曲目に披露される「JUMP」、待ちわびた観客の涙混じりの大歓声と清志郎の変わらない歌声は、何度見ても胸が熱くなる。

後半でもう一つの見せ場となるのが、2025年に野外音楽フェスの一部で行われた「忌野清志郎 55th & SWEET LOVE SHOWER 30th presents SWEET LOVER SOULS」の模様だ。清志郎を敬愛するアーティストが集い、奏でる。バンドマスターを務める33歳のギタリストReiを中心に、東京スカパラダイスオーケストラのホーンセクション、RC時代から長きにわたり清志郎と活動を共にしたサックスの梅津和時らが、世代を超えてこの日限りのスペシャルバンドを結成した。代わる代わる登板するヴォーカリストには、MAN WITH A MISSIONのJean-ken Johnny、スカパラのドラマー茂木欣一、jo0ji(個人的に2年前からすっかりハマっている)ら。なかでもアイナ・ジ・エンドが歌う「スローバラード」は観客の心をしっかりと掴み、梅津和時のサックスとReiのギター、アイナのシャウトが重なり合う瞬間は清志郎のソウルがこの先も歌い継がれることを確信できるハイライトだった。

私が好きなヴォーカリスト、フィッシュマンズの佐藤伸治やチバユウスケ、忌野清志郎はもう居ない。でも、彼らの色褪せない音楽や言葉は、映画という宝箱にとじこめておくことができる。ライブDVDともドキュメンタリー番組ともまた違う形で、映画館でその姿と声に逢える。THEE MICHELLE GUN ELEPHANTの映画が何度も再上映されるように、彼らを知らなかった次世代にも歌声とメッセージが届く。音楽映画には絶対に意義がある。

本作のキャッチコピーにはこう書かれている「ここには、今こそ耳を傾けるべき歌がある」と。世界はこれまでもきっとこれからも、殺伐とした混迷にある。『愛し合ってるかい? 忌野清志郎が教えてくれた』は世代を超えていつまでも響く音楽ドキュメンタリー映画になるだろう。


『愛し合ってるかい? 忌野清志郎が教えてくれた』 10月2日(金)全国公開
監督:相原裕美
出演:忌野清志郎
   三浦友和 竹中直人 三宅伸治 泉谷しげる 梅津和時
   角田光代 金平茂紀 百世
SWEET LOVER SOULS:Rei ジェットセイヤ(go!go!vanillas)休日課長(ゲスの極み乙女、DADARAY、ichikoro、礼賛)渡 和久(風味堂) 梅津和時
          Deu(PEOPLE1) Ito(PEOPLE1) Jean-Ken Johnny(MAN WITH A MISSION)アイナ・ジ・エンド jo0ji 
          茂木欣一(東京スカパラダイスオーケストラ)東京スカパラダイスオーケストラHorn Section
配給:東映ビデオ 🄫2026 Kiyoshiro Movie Project
公式HP🔗https://www.toei-video.co.jp/kiyoshiro-movie/

【里奈の徒然シネマコラム 『あの場所で逢おう』】 若林里奈
幼少期に両親がよく映画を観せてくれたことから映画に魅了され、「エンドロールに自分の名前を載せたい」という夢を抱くとともに映画宣伝マンの道を志す。名古屋の映画館・名鉄東宝で閉館までアルバイトしたのち、オープン直後の伏見ミリオン座へ。その後、名古屋と東京を拠点に宣伝会社やテレビ放送局で、映画・ドラマの宣伝と制作に携わる。最近は、恋愛リアリティーショーやバラエティにクレジットされることも。 CBCポッドキャスト『エンドロールの住人たち』に企画・ナビゲーターとして出演中。
『エンドロールの住人たち』公式X:https://x.com/Endrollcbc

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