伊藤さとりの映画で人間力UP!マイノリティの人達の感情に寄り添うような韓国映画『君と僕の5分』

かつて韓国では日本の大衆文化が禁止や制限されている時代がありました。それは日本が朝鮮半島を統治していた植民地支配で根付いた反日感情と自国の文化保護によるものと言われ、日本の曲や映画は放送や上映もされず、1998年の日韓共同宣言により、戦後初めて韓国で公開された日本映画が『HANA-BI』になりました。確かに日韓の関係が良好ではなかったのは覚えており、2002年のFIFA World Cupでの試合が両国の関係をほぐしたように記憶しています。そんな韓国にとっても激動の時代、2001年に高校生だったひとりの少年の視点から、心を通わせたと思っていた同級生に秘密を打ち明けた途端に、社会の風潮に呑まれていく関係を綴った作品が、韓国映画『君と僕の5分』です。

主人公のギョンファンは日本の漫画やアニメ、そしてJ-POPが好きな高校生。CDウォークマンを鞄に入れ、通学中は特にお気に入りの日本人アーティスト・globeの曲を聴いて自分の世界に入るギョンファンに声をかけたのは学級委員長のジェミン。実はジェミンもまだまだ一般化していないJ-POPが好きだったことから仲良くなるのですが、ギョンファンが自身の秘密を打ち明けた翌日から関係に変化が起こるのです。

近年、日本はBLブームが到来し、ドラマ化もされているのですが、果たしてそれらが当事者の気持ちに寄り添ったものなのかは疑問です。今作は、音楽の趣味や性的指向が社会的マイノリティである主人公が、社会のせいで生きづらさを抱えることになりながらも、たったひとりの心を開いた少年の苦しみや悲しみにまで気づいてしまう繊細な感情を綴った作品。愛情というのは、分かりやすい行動だけではなく、人を見つめることでもあり、言葉だけではなく、さりげない行動からも読み取れるのだと観客に伝えるような映画でした。

この映画の特徴は、約5分からなる一曲をじっくりと聴かせ、そこに親友を想う映像が映し出されるシーンもあり、歌詞が感情を伝えるような仕掛けにもなっている点です。やがてある出来事がふたりの感情を解き明かすことになるものの、それは観客が集中してスクリーンを見つめ、繊細なまでに少年達の感情に寄り添わないと気づけないような演出が施されています。「自分とは違う」で遮断せずに「相手を知ろうとすること」で世界は優しくなれるのだと伝えるような映画『君と僕の5分』。今の時代に必要な作品に出会えた気がします。

 

目次

『君と僕の5分

監督・脚本:オム・ハヌル

出演:シム・ヒョンソ ヒョン・ウソク コン・ミンジョン イ・ドンフィ

配給:SPOTTED PRODUCTIONS/TWIN

2025/韓国/104分/PG-12

6月5日(金)より全国順次公開

©2025, GOZIP STUDIO & AMOROSO FILM, All rights reserved.

http://youandme5minutes.com/

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伊藤さとり

伊藤さとり(映画パーソナリティ・映画評論家)

映画コメンテーターとして「ひるおび」(TBS)「めざまし8」(CX)で月2回の生放送での映画解説、「ぴあ」他で映画評や連載を持つ。「新・伊藤さとりと映画な仲間たち」俳優対談番組。映画台詞本「愛の告白100選 映画のセリフでココロをチャージ」、映画心理本「2分で距離を縮める魔法の話術 人に好かれる秘密のテク」執筆。

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