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映画『パフィンの小さな島』
『ブレンダンとケルズの秘密』(2009)、『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』(2014)、『ブレッドウィナー』(2017)、『ウルフウォーカー』(2020)と、今まで4作がアカデミー賞長編アニメーション賞にノミネートされているアイルランドのアニメーションスタジオ「カートゥーン・サルーン」。彼らが更に小さな子供たちに向けて製作したTVシリーズはアニー賞やエミー賞といった数々の賞にノミネートされ、キッズ・スクリーン賞を二度受賞しました。これをもとに長編映画として製作されたのが5月30日に日本公開となる『パフィンの小さな島』です。
物語は、アイルランド西部の小さな島(トンガリ島)に暮らす海鳥パフィン(ニシツノメドリ)の女の子ウーナと弟のババが、新しい環境に馴染めないエトピリカ(鳥)のイザベルを見守りながら、色んな動物と手を取り合ってある事件を解決しようと奔走します。
上映時間は幼児から小学校低学年が対象なので80分と程良い長さ。しかもパフィンと呼ばれるニシツノメドリ、ツノメドリ、エトピリカは、絶滅危惧種に指定されている鳥たちです。そんな鳥たちが何故、危機的状況なのかを分かりやすく理解してもらえるように、嵐などを物語に取り入れているのも「カートゥーン・サルーン」の製作理念。それは今までの作品にも描かれている「自然保護」について世界の子供たちに知ってほしいという思いもあってのことなんです。
実は『パフィンの小さな島』の舞台であるトンガリ島のモデルは、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(2015年)、『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』(2017年)、『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』(2019年)の惑星オク=トーの撮影に使われたアイルランドのスケリッグ・マイケル島です。ここは世界遺産に登録され、自然保護区にも指定されている島なのですが、そこに生息するツノメドリが、『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』に登場する鳥類・ポーグのモデルと言われています。
そんな実在する場所をモデルにすることで世界に興味を持ってもらうのが、「カートゥーン・サルーン」の子供への思い。それだけでなく、『パフィンの小さな島』に登場する子供の鳥やその他の動物たちの性格も、様々な性格の子供たちを投影させたキャラクターの集まりなんです。「好奇心旺盛な子から引っ込み思案だったり、臆病だったり、新しい環境に馴染める子、馴染めない子など、いろんな子供たちの性格をリサーチして反映させています」と監督であるジェレミー・パーセルさんと助監督のロレイン・ローダンさんは、インタビューした際に教えてくれました。「この映画を作りながら願っていたのは、観たら親子で話し合って欲しいということ。小さな子には少し難しいテーマだからこそ、学校生活や気候変動などについて子供と親が話し合って欲しいのです」と語った両監督から、「カートゥーン・サルーン」が多くの映画賞で評価され、世界中で愛される理由がしっかりと見えたのでした。
『パフィンの小さな島』
原案:トム・ムーア(「ウルフウォーカー」)/リリー・バーナード、ポール・ヤング
脚本:サラ・ダディ 監督:ジェレミー・パーセル
声の出演:上野樹里/新田恵海/田所あずさ/チョー
配給:チャイルド・フィルム
アイルランド・イギリス/2023/1時間20分
5月30日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー
https://child-film.com/puffin/
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伊藤さとり
伊藤さとり(映画パーソナリティ・映画評論家)
映画コメンテーターとして「ひるおび」(TBS)「めざまし8」(CX)で月2回の生放送での映画解説、「ぴあ」他で映画評や連載を持つ。「新・伊藤さとりと映画な仲間たち」俳優対談番組。映画台詞本「愛の告白100選 映画のセリフでココロをチャージ」、映画心理本「2分で距離を縮める魔法の話術 人に好かれる秘密のテク」執筆。