8/30(金)より公開中
「愛に乱暴」
原作は数々のベストセラー作品が映画化されている吉田修一、
主演は主役、脇役、シリアス、コメディとなんでもこなす江口のりこ。
この組み合わせだけで観たくなる!
本作で江口のりこが演じるのは、夫・真守と彼の実家のはなれで暮らす41歳の専業主婦、桃子。
結婚して8年になる夫の態度は素っ気なく、母屋に住む姑との関係はどこか空々しい。
それでも桃子は凝った料理を作ったり、お気に入りの食器を買ったりしながら、日々を充実させている。
そんな桃子の日常生活に、近所で起こる不審火、姿を見せない猫、
不倫を匂わせるSNSなど、いくつもの謎が散りばめられ、不穏なムードを漂わせる。
そして浮かび上がるのは、桃子の孤独感と床下に隠した悲しい秘密。
家庭も仕事も上手くいかず、本音を話せる相手もなく、誰からも必要とされていない。
たった1人で追い詰められていく桃子。
例え幸せじゃなくても、専業主婦が新しい道に踏み出すのは簡単じゃない。
年を重ねれば重ねるほど、行く宛がなくなり、心も体も重くなって、身動きが取れなくなっていく。
その辛さが痛いほどわかって苦しくなった。
何気ない日常のやり取りの中で、そんな桃子の置かれた状況や想いを浮かび上がらせた、
森ガキ侑大監督の演出が素晴らしい。
そしてなんと言っても江口のりこ!
心の内に隠した不安や怒りが少しずつ肥大し、爆発する。
桃子の揺れる感情と狂気を体現した演技は圧巻!俳優としての低力を見せつけられた。
さて、今回の写真はゴミ捨て場のイメージで。
映画はゴミが燃えるシーンで幕を開け、桃子がゴミを捨てに行くくだりが何度も映し出される。
さらに、桃子が救われるのもゴミ捨て場にまつわることだったりと、
ゴミ捨て場が重要な役割を果たしているのだ。
作品名:『愛に乱暴』 出演:江口のりこ 小泉孝太郎 馬場ふみか 水間ロン 青木柚 斉藤陽一郎 梅沢昌代 西本竜樹 堀井新太 岩瀬亮 風吹ジュン 原作:吉田修一『愛に乱暴』(新潮文庫刊) 監督・脚本:森ガキ侑大 脚本:山﨑佐保子、鈴木史子 音楽:岩代太郎 配給:東京テアトル ©2013 吉田修一/新潮社 ©2024 「愛に乱暴」製作委員会 公式サイト:www.ainiranbou.com 公式X: @ainiranbou
映画ライターー 尾鍋栄里子(おなべえりこ)
Twitter @onabe11
映画館バイト→雑誌映画担当→映画ライターと、人生の半分を映画業界の片隅で生きる名古屋人。
朝日新聞、中日新聞、フリーペーパーなどで映画紹介記事を執筆中。
映画フリーペーパー C2【シーツー】web版ブログ〝オー!ナイス!”不定期掲載