エリコのフォトdeシネマ♪ Vol.151『ぼくの家族と祖国の戦争』

ナチス・ドイツの時代を今までにない視点で描く 『ぼくの家族と祖国の戦争』

8/16(金)より絶賛公開中!

戦後80年となる現在も、
何本も公開されているナチス・ドイツ映画。

本作もその1本ではあるけれど、
今までにない視点から、
ナチス・ドイツ時代にスポットが当てられている。

舞台は第二次世界大戦末期、ナチス・ドイツの
占領下に置かれていたデンマーク。
当時、敗色が濃くなったドイツから多くの難民が脱出、
デンマークにも大量の難民が押し寄せた。
この映画はデンマークの人にもあまり知られていない、
当時の実話にインスパイアされているそう。

主人公はフュン島にある市民大学の学長ヤコブ。
彼の大学もドイツ軍からの命令で、
キャパを超える難民を押し付けられる。

やって来た難民の数は約束を大幅に上回り、
管理するはずのドイツ軍は何もしない。
難民たちは劣悪な環境で飢えと感染症に苦しみ、
命を落とす者が続出。
それでも手助けすれば、
町中から裏切り者と責められ、
家族まで危険にさらすことになる…

ナチスとレジスタンス、
難民と住民の板挟みに苦しみながらも、
正義を貫こうとするヤコブと妻、
そしてドイツ人を敵と憎みつつ、
自分なりの正しさを見つける息子。

ナチスへの怒りや憎しみを超えて、
人として大切なものを守ろうと戦う
ヤコブ一家の姿に胸が熱くなった。

もし自分が同じ状況に陥ったとき、
彼らのように、正義と信念を失わずにいられるだろうか?
世界各国で紛争が続き、難民問題も起こっている
現在の私たちに、そんな問いを投げかける
良質なヒューマンドラマだ。

本国デンマークのアカデミー賞では、
観客賞、プロダクションデザイン賞、
衣裳デザイン賞、メイクアップ賞、視覚効果賞と、
5部門にノミネートされたというのも納得!

 

さて、今回の写真のアイテムはミルクをピックアップ。
飢えに苦しむ難民たちを誰も助けようとしない中で、
子供たちにミルクを与えるヤコブの妻リス。
相手が誰であれ、目の前の命に手を差し伸べる。
その優しさと強さに心打たれた。

 

『ぼくの家族と祖国の戦争』

公開日:8月16日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、YEBISU GARDEN CINEMA他全国公開作品

コピーライト:©2023 NORDISK FILM PRODUCTION A/S

監督・脚本:アンダース・ウォルター

出演:ピルー・アスベック、ラッセ・ピーター・ラーセン、カトリーヌ・グライス=ローゼンタール

公式サイト:https://cinema.starcat.co.jp/bokuno/2023年/デンマーク/デンマーク語・ドイツ語/101分/カラー/シネスコ/5.1ch/英題:BEFOREIT ENDS/日本語字幕:吉川美奈子

配給:スターキャット

宣伝:ロングライド

 

映画ライターー 尾鍋栄里子(おなべえりこ)

Twitter @onabe11
映画館バイト→雑誌映画担当→映画ライターと、人生の半分を映画業界の片隅で生きる名古屋人。
朝日新聞、中日新聞、フリーペーパーなどで映画紹介記事を執筆中。
映画フリーペーパー C2【シーツー】web版ブログ〝オー!ナイス!”不定期掲載

おいしい映画祭

アーカイブ