伊藤さとりの映画で人間力UP!映画愛がいっぱい『デッドプール&ウルヴァリン』

ネタバレなし『デッドプール&ウルヴァリン』少しだけ知っとくと理解できる小ネタ

『デッドプール&ウルヴァリン』

2019年、ディズニーがFOXを買収したというニュースを見て、すぐにあることがよぎりました。“『デッドプール』がマイルドになってしまうのでは”。そう『デッドプール』(2016)、『デッドプール2』(2018)は、R-15指定で下ネタ満載、残虐性高く、ブラックジョークで人を楽しませてくれるマーベルヒーロー映画、そんな映画がいくら『アベンジャーズ』(2012)などMCUシリーズを持つディズニーと言えども、ファミリー層を意識して別次元の物語にしてしまうのではと懸念したのです。

もちろん、ディズニーに『デッドプール』が入ることで、アイアンマンを始めとする「アベンジャーズ」と共演することも出来るわけですが、やはり不安は拭えない。まぁ『デッドプール2』のラストにチラ見せで現れたウルヴァリンと今回、手を繋いでタッグを組むのだからまた新たなデップーキャラになるのかなと映画館へ足を運びました。

さて、ここでネタバレせずに書くと決めると何を書いて良いのやら。

だからストーリーは何も書かずに、感じたことを伝えていこうと思います。

まず、『デッドプール』はそもそも「X-MEN」に登場するキャラクター。だって元X-MENなので、『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』(2009)でもライアン・レイノルズはデップー役で登場しています。ということで、“ディズニーがFOXを買収した”“デッドプールはX-MEN一派”と覚えておいて映画を見ると、この映画がやりたかったことが見えてくるのです。

そうよ、ディズニーに連れてこられたのは、『デッドプール』や『ウルヴァリン』だけじゃない。『M-MEN』(2000~)や『ファンタスティック・フォー』(2015〜)シリーズもよ。なんなら、他にもマーベル出身のヒーロー映画作られてたでしょ?とディズニーの「アベンジャーズ」以外の過去作のマーベルヒーローも忘れないでね、と紹介してくれちゃう!?

そして忘れてはならないのが、俳優さんは、他の映画でもある役をやっているということを。

(C)2024 20th Century Studios / (C) and TM 2024 MARVEL.

あのマーベルヒーローが演じていた大ヒットアクション映画、はたまたあのマーベルヒーローが出演する超有名なSF作品、そしてあの俳優の大ヒット映画の主題歌も流しちゃえ。そんな他の作品のオマージュ的シーンや、セリフ、曲、仕草まであるという大渋滞映画なのだけど、俳優だって映画のユニバースで生きているから他作品も見てね、と伝えているみたい!?

しかも相変わらず、サントラが楽しい!このシリーズは毎回、ド真ん中ヒット曲を使用するのだけど、今回は名シーンにマドンナ様の「Like a Prayer」が使われているとだけ記します。歌詞と動きが見事にマッチしているからお見逃しなく。そんなわけでマーベル作品だけじゃなく、映画はみんな仲間です、と伝える映画愛いっぱいの本作『デッドプール&ウルヴァリン』、もちろん、マーベル・コミックの原作者、故スタン・リーへの敬意を忘れずに。

そして不安だったマイルドさですが、R-15印もしっかり着いていて安定のお下品、エッチで大人向けのコメディで一安心。

あ、まさかデッドプールが、ドラマ「不適切にもほどがある!」の一郎と同じ考えだったことを知り、世代差問題は世界共通なのだと苦笑したのでした。

                     (C)2024 20th Century Studios / (C) and TM 2024 MARVEL.

2024年製作/128分/R15+/アメリカ
原題:Deadpool & Wolverine
配給:ディズニー
劇場公開日:2024年7月24日

伊藤さとり

伊藤さとり(映画パーソナリティ・映画評論家)

映画コメンテーターとして「ひるおび」(TBS)「めざまし8」(CX)で月2回の生放送での映画解説、「ぴあ」他で映画評や連載を持つ。「新・伊藤さとりと映画な仲間たち」俳優対談番組。映画台詞本「愛の告白100選 映画のセリフでココロをチャージ」、映画心理本「2分で距離を縮める魔法の話術 人に好かれる秘密のテク」執筆。

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