6／28（金）より公開中

『ふたごのユーとミー 忘れられない夏』

アジアで大旋風を巻き起こした『バッド・ジーニアス　危険な天才たち』
高い共感を呼んだ断捨離ムービー『ハッピー・オールド・イヤー』などを製作、
タイのA24と言われるスタジオ “GTH”の最新作。
何でもシェアしてきたふたご姉妹が初めて抱く
シェアできない感情とひと夏の成長を描く青春ムービー。

頬の小さなホクロ以外は見分けがつかないほどそっくりで、
ビュッフェや映画鑑賞も一人分の料金で楽しみ、
あらゆることをシェアしてきたふたごの姉妹ユーとミー。
でも中学生の夏休み、家庭の事情で祖母の家で過ごすことになったふたりは
生まれて初めてシェアできない感情を知ることに。

別々に出会ったハーフの男の子、マークに恋心を抱いたユーとミー。
同じ男の子を好きになるだけでも切ないのに、
マークがミーをユーだと勘違いして事態はより複雑に。
さらに両親の離婚問題も相まってふたりの関係はギクシャク。
自分の本当の気持ちが掴めないミー、
誰からも愛されるミーにコンプレックスを抱くユー。
ふたりが抱えるモヤモヤした感情は誰にも覚えがあるものだけど、
はっきりとした自我の確立と成長は、ふたご設定だからこそより映えて。
変わりゆくふたりの関係と終わりゆく夏の侘しさがリンクして
ちょっぴり切なく、それでいて清々しい後味を残してくれるのだ。

監督は一卵性双生児のワンウェーウ＆ウェーウワンのホンウィワット姉妹。
これは実話ではないそうだけど、
ふたご監督だからこそ描ける物語であることは間違いなく。

さらにユーとミーは本物の双子が演じているのかと思ったら、
なんと、本作がデビューの新人女優ティティヤー・ジラポーンシンが一人二役！？
プロデューサーが知人のインスタに載せていた写真を偶然見つけ、
大抜擢したという彼女。
モデルとして活躍しているだけあって、
スラリと伸びた手足にキュートな笑顔が魅力的。
加えてユーとミーを演じ分けた繊細な感情表現も抜群！
今後の活躍も期待できそうな逸材なのだ。

そして個人的に惹かれたのは、舞台となった1999年という時代。
コンピューターが誤作動するかも！？と大騒ぎしたY2K問題や
人類が滅亡する！？とヒヤヒヤさせられたノストラダムスの大予言、
日本で大流行したたまごっちなどなど、
自分が青春を謳歌していた当時の出来事が描かれていて、
甘酸っぱい懐かしさが込み上げてきた。

さて、今回の写真のアイテムは鉛筆を。
ユーになりすまして受けた追試で、
うっかり鉛筆を忘れたミーに、自分の鉛筆を貸してくれたマーク。
何でも半分こしてきたユーとミーの関係を変えることになるマークが、
半分に折った鉛筆をミーに渡す…。
この意味深な行動、つい深読みしたくなりません？？

映画ライターー　尾鍋栄里子（おなべえりこ）

Twitter @onabe11
映画館バイト→雑誌映画担当→映画ライターと、人生の半分を映画業界の片隅で生きる名古屋人。
朝日新聞、中日新聞、フリーペーパーなどで映画紹介記事を執筆中。
映画フリーペーパー C2【シーツー】web版ブログ〝オー！ナイス！”不定期掲載