エリコのフォトdeシネマ♪ Vol.148『若武者』

好き嫌いを超えて心掴まれる異色の青春映画 『若武者』

6/14(金)より公開中

「若武者」

光石研の主演映画『逃げきれた夢』、
石井岳龍監督、横浜聡子監督らによるオムニバス映画
『almost people』を手掛けた映画制作プロダクション「コギトワークス」が設立した
新映画レーベル「New Counter Films(ニューカウンターフィルムズ)」。
その第一弾作品が二ノ宮隆太郎監督・脚本による『若武者』。
人生に疑問を抱きながら生きる3人の若者を描く青春群像劇だ。

メガホンを取ったのは俳優としても活躍し、
監督として『枝葉のこと』『お嬢ちゃん』『逃げきれた夢』を手がけた二ノ宮隆太郎。

これが二ノ宮作品、初鑑賞だった私。
鬱屈した日常を送る若者を描く青春映画…ぐらいの知識で観たら、
スクリーンにみなぎるエネルギーと特異な世界観に驚愕した。

主人公は工場で働き、全てを諦めたように漫然と生きる渉、
施設の老人には優しいのに、同僚に毒気たっぷりの言葉をぶつける介護士の光則、
そして” 世直し” と称して道行く人に無差別に絡む居酒屋店員の英治。
この幼なじみ3人のグダグダしたやり取りが描かれているんだけど、
どのキャラクターにも共感できず、好きにもなれない。
一見、優しい青年のようでサラリと毒を表出させる食えない光則に、
自信過剰で好戦的で絶対に関わりたくないと思わせる英治。
特に英治は最悪で、容赦ない口撃を友だちの渉にも向け、ほぼ感情を出さない渉を怒らすほど。
けれど、訳のわからない屁理屈の中にグサッと刺さる言葉があって。
負の感情も容赦なく曝け出す毒々しいセリフに加えて、人物を隅に据えた構図も印象的。

正直、好きとは言い難いのに、なぜだか惹きつけられてしまう。
久しく出会えなかったタイプの映画。
まさに「誰もが観たい映画でなく、誰かが観たい映画をつくる」を掲げる
「New Counter Films」の第一弾にぴったり!

さて、今回の写真ではビール瓶をピックアップ。
3人の中で一番感情が読めない渉が狂気を爆発させるシーンに出てくる重要なアイテム。

STORY

工場に勤める寡黙な渉(坂東龍汰)、飲食店員の血の気の多い英治(髙橋里恩)、 介護士の一見温厚そうに見える光則(清水尚弥)は、互いに幼馴染の若者である。「不幸はドラマになるからよ」
ある晩秋の昼下がり、3 人は首切り地蔵が見下ろす墓地を目指して歩いていく。 そこには数年前に事故で亡くなった 4 人目の幼馴染が眠っていた。「嫌気、恐れ、怒り、悲しみ。その全てのドラマを” 楽しみ” に変えて生きていけたら、 そんなことできたら、最高の人生になると思えねえ?」「革命だよ。革命。革命起こそうぜ」そうして彼らは” 世直し” と称して 街の人間たちの些細な違反や差別に対して無軌道に牙を剥いていく。 その” 世直し” は、徐々に” 暴力” へと変化してしまうのだった。これは、寄る辺ない日常の中で、人生への疑問を問い続けながら、 未来に抵抗する若者たちの物語

 『若武者』 

監督・脚本 二ノ宮隆太郎

製作 制作プロダクション・配給 配信

出演 坂東龍汰/髙橋里恩/清水尚弥 木越明/冴木柚葉/大友律/坂口征夫/宮下今日子 純乃あみ/土屋陽翔/新名基浩/小林リュージュ/須森隆文 島津志織/大河内健太郎/五頭岳夫/矢野陽子/矢島康美 鶴田翔/秋田ようこ

木野花/豊原功補/岩松了

製作 コギトワークス U-NEXT
制作プロダクション・ 配給 コギトワークス
配信 U-NEXT
2024 年 / 日本 / DCP / カラー / スタンダード (1.33:1) / 5.1ch / 103 分 Copyright 2023 “ 若武者 ” New Counter Films LLC. ALL RIGHTS RESERVED

映画ライターー 尾鍋栄里子(おなべえりこ)

Twitter @onabe11
映画館バイト→雑誌映画担当→映画ライターと、人生の半分を映画業界の片隅で生きる名古屋人。
朝日新聞、中日新聞、フリーペーパーなどで映画紹介記事を執筆中。
映画フリーペーパー C2【シーツー】web版ブログ〝オー!ナイス!”不定期掲載

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