エリコのフォトdeシネマ♪ Vol.147『かくしごと』

父と娘、母と息子の愛と絆に涙する!
『かくしごと』

映画「かくしごと」

6/7(金)より公開中

ミステリー作家・北國浩二の小説「噓」を杏 主演で映画化。
杏が演じるのは認知症の父の介護のため、田舎に戻った絵本作家の千紗子。
ある日、事故で記憶喪失になった少年を助けた千紗子は、身体の痣から虐待を悟り、少年を守るため自分の子どもだと嘘をついて一緒に暮らし始める。

過去の辛い記憶を忘れることができない千紗子、日に日に記憶を失っていく父・孝蔵、千紗子の息子・拓未として新しい記憶を与えられた少年。
記憶にまつわる痛みを抱えた3人が、生活を共にするうちに心を近づけ家族になっていく。
畑から採ったばかりの野菜を食べたり、川で魚釣りをしたり、陶芸の土をこねたり。
豊かな自然に囲まれた田舎の家で、3人が過ごす時間の尊さに温かな感情が込み上げる。
そして明かされる、嘘に隠された千紗子と拓未の想い、嘘から生まれた家族が迎える結末に泣いた。

老人介護や児童虐待といった社会問題を扱ってはいるけれど、描かれているのは親と子の愛と絆。
子どものためならどんな犠牲もいとわない、母としての千紗子の強い愛情、
そして介護をするうちに、父へのわだかまりと憎しみがとけていく娘としての千紗子の心情の変化にグッときた。
孝蔵が千紗子への想いを吐露するシーンや2人が縁側で並んで座るカットは心震える名シーン。

監督は『生きてるだけで、愛。』の関根光才監督。
前作で主演の趣里のエモーショナルな演技を引き出した新鋭が本作でも手腕を発揮。
母としての愛情と、娘としての葛藤を繊細かつナチュラルな演技で表現した杏。
実際にグループホームを訪ね、認知症の方々とコミュニケーションを取って研究を重ね、孝蔵を演じた奥田瑛二。
名優2人を相手に臆することなく、ピュアな存在感で魅せた拓未役の中須翔真。
さらに千紗子の友人・久江の佐津川愛美、医者・酒向芳、拓未の親・安藤政信と木竜麻生、久江の息子役の子どもまでとにかく全員が素晴らしい!
キャストたちの迫真の演技を観るだけでも価値ある1本。

さて今回の写真のアイテムはトマト。
孝蔵が畑で育てたトマトを毎朝採って食卓に並べる家族。
千紗子が初めてトマトを食べた時の驚き、そして拓未を迎えた初めての朝。
ささやかな日常の中で美味しそうなトマトが大きな役割を果たしていた。

作品概要

「かくしごと」

■公開日・公開情報
6月7日(金) TOHOシネマズ 日比谷、テアトル新宿他全国ロードショー

出演・杏

中須翔真 佐津川愛美 酒向 芳

木竜麻生 和田聰宏 丸山智己 河井青葉

安藤政信 / 奥田瑛二

脚本・監督:関根光才

原作:北國浩二「噓」(PHP 文芸文庫刊) 音楽:Aska Matsumiya

主題歌:羊文学「tears」F.C.L.S.(Sony Music Labels Inc.)

©2024「かくしごと」製作委員会


映画ライターー 尾鍋栄里子(おなべえりこ)

Twitter @onabe11
映画館バイト→雑誌映画担当→映画ライターと、人生の半分を映画業界の片隅で生きる名古屋人。
朝日新聞、中日新聞、フリーペーパーなどで映画紹介記事を執筆中。
映画フリーペーパー C2【シーツー】web版ブログ〝オー!ナイス!”不定期掲載

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