2019年に起きた新宿ホスト殺人未遂事件に
インスパイアされたこの映画。
愛する男を刺し殺そうとした過去を持ち、かりそめの今を生きている沙苗、そんな彼女に振り回され、
感情を爆発させていく夫の健太、2人の前に現れる謎の女、足立。それぞれの愛にもがく男女の行く末が描かれる。
愛する男を刺した後、血を流して倒れる男の傍で、タバコを吹かし笑い出す沙苗の行動も、
愛について語る言葉も理解不能。
ただ、わからないから興味を引かれる部分も。
あれも愛、これも愛、
たぶん愛、きっと愛‥
愛ってなんなんだろう?と
考えずにはいられなかった。
劇中のセリフにもあるように、人は簡単に変わらない。けれど、人の気持ちは変わっていく。
それを感じられるラストに救われた。
これほど激烈な愛の物語は、邦画にしてはめずらしく。韓国映画っぽさを感じるなと思ったら、山本英監督と構想を練ったのは、
脚本家はイ・ナウォンという方とのこと。監督は京藝術大学大学院で諏訪敦彦、黒沢清らに師事した新鋭で、
これが商業デビュー作だそう。今後どんな作品を撮るのか気になるところ。
過去の愛にすがる沙苗の空っぽな心を、死んだ目に映した橋本愛、
素直で無骨で人間臭さあふれる仲野太賀、一言もセリフがない中でも、しっかり存在感を示す水上恒司もさすが。一方で、今回の足立という役では、
木竜麻生のよさがいまいち感じられず。個人的にちょっと残念だったかな。
さて、写真ではホームセンターで、沙苗と足立が出会うシーンで沙苗が手にしているレンチとプライヤー?を。
結末への流れにも関わるアイテムをピックアップしました。
『熱のあとに』
©2024 Nekojarashi/BittersEnd/Hitsukisha
2月2日(金)、新宿武蔵野館、渋谷シネクイントほか全国ロードショー!
【キャスト】
橋本 愛 仲野太賀 木竜麻生 坂井真紀 木野 花 鳴海 唯/水上恒司
監督:山本 英
脚本:イ・ナウォン
プロデューサー:山本晃久
製作:ねこじゃらし、ビターズ・エンド、日月舎
制作プロダクション:日月舎
英題:After the Fever
配給:ビターズ・エンド
2024/日本/カラー/5.1ch/ヨーロピアンビスタ/DCP/127分【PG12】
【公式リンク】
サイト:https://after-the-fever.com/
X(旧Twitter): https://twitter.com/seiyoku_movie
映画ライター 尾鍋栄里子(おなべえりこ)
Twitter @onabe11
映画館バイト→雑誌映画担当→映画ライターと、人生の半分を映画業界の片隅で生きる名古屋人。
朝日新聞、中日新聞、フリーペーパーなどで映画紹介記事を執筆中。
映画フリーペーパー C2【シーツー】web版ブログ〝オー!ナイス!”不定期掲載