エリコのフォトdeシネマ♪ Vol.128『PERFECT DAYS』

静かで温かな余韻がいつまでも続く傑作!

2023年もあと少しのこの時期に個人的本年度NO.1の傑作に遭遇!

ドイツの巨匠ヴィム・ヴェンダースと日本が誇る名優・役所広司がタッグ。カンヌ国際映画祭最優秀男優賞に輝いた『PERFECT DAYS』。

主人公は東京・渋谷の公共トイレの清掃員・平山。

毎朝同じ時間に起きて仕事をこなしいつもの銭湯と居酒屋で疲れを癒し古本を読みながら眠りに落ちる。

樹木の間から漏れる光やトイレの壁に映った影に目を細め刹那の出会い、思わぬ再会に心浮き立ち、無邪気な戯れあいを前に優しく微笑む。

淡々と繰り返される日常の中で平山の心の揺らぎが鮮やかに浮かび上がってくる。

とにかく演じる役所広司が素晴らしすぎる!観る人を引き込む存在感に加えて目線、表情、些細な仕草に平山の人となりが滲み出る滋味深い演技に魅せられた。

内容は全く違うけれど主人公の暮らしぶりやロケーション、タイトルも含めて『素晴らしき世界』と重なるところがあるのも面白く。

余計なものは持たず毎日を慈しみながらささやかな幸せを心に留めていく。
シンプルに生きるってなんて美しいんだろう。平山を見ていると濁った私の心も浄化されていくようで。観た後もずっと静かで温かな余韻が続く紛れもない傑作だった!

ヴィム・ヴェンダース作品はいつもサントラが欲しくなるけど今回もほんっとにいい!
仕事に向かう車の中で平山が聴く曲がどれも最高でそれだけで何度も泣きそうに。

なかでも沁みたのはニーナ・シモンの「Feeling Good」。

マイケル・ブーブレの楽曲を使った『嫌われ松子の一生』もよかったけど、本作では役所広司の名演技との相乗効果がハンパなく。
映画を観てからはこの曲を聴くだけで泣けるようになってしまった(笑)

さて、今回の写真は映画で印象的に使われている木漏れ日のイメージで、モノクロ写真をピックアップ。
テレビもパソコンもスマホも持たず、音楽はカセットテープで聴く。アナログ生活をしている平山。
写真もフィルムカメラでモノクロ撮影。焼き上がった写真を選別して大切に缶にしまうのも心に残った。

『PERFECT DAYS』

 12 月 22 日(金) より TOHO シネマズ シャンテほか全国ロ ードショー!

■配給:ビターズ・エンド
監督:ヴィム・ヴェンダース
脚本:ヴィム・ヴェンダース、 高崎卓馬
製作:柳井康治

出演:役所広司、柄本時生、中野有紗、アオイヤマダ、麻生祐未、石川さゆり、田中泯、三浦友和 製作:MASTER MIND 配給:ビターズ・エンド 2023/日本/カラー/DCP/5.1ch/スタンダード/124 分

c 2023 MASTER MIND Ltd.

 

映画ライター 尾鍋栄里子(おなべえりこ)

Twitter @onabe11
映画館バイト→雑誌映画担当→映画ライターと、人生の半分を映画業界の片隅で生きる名古屋人。
朝日新聞、中日新聞、フリーペーパーなどで映画紹介記事を執筆中。
映画フリーペーパー C2【シーツー】web版ブログ〝オー!ナイス!”不定期掲載

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