9/8(金)より公開中
長編映画デビュー作『わたし達はおとな』では、
20代の恋人のすれ違っていく心情を、
ドキュメンタリーのようなリアルさで描いた加藤拓也監督。
本作では、夫と恋人の間で揺れる
女性の心の機微を描いた。
前作のように壮絶なバトルで
感情をスパークさせるのではなく、
突然の不幸によって激しく揺れ動く女性の内面を、
静かに繊細に炙り出していく監督の手腕に唸った。
一緒に暮らしながら心の距離は誰よりも遠く、
空々しい空気が流れる夫との関係の描き方なんて、もう絶品。
関係の冷え切った夫と向き合わず、
優しい恋人に逃げるなんて、すごく自分勝手。
すごくズルい。
けれど、心地のいい曖昧さに浸ってしまったり、
それによってなんとか平静を保つ気持ちはわかって。
逃げていた現実に向き合わざるを得なくなった、彼女の心の向かう先を、ジリジリしながら見届けた。
複雑な感情を自然なトーンで表現した門脇麦をはじめ、
染谷将太、黒木華とキャストもいい。
主人公の夫を演じた田村健太郎が素晴らしく。
当たりは柔らかいのに、
じっとり嫌な感じのさじ加減が絶妙!
監督の演出力もさすが。
さて、今回の写真のアイテムは、
主人公にとって恋人との大切な思い出のアイテムであり、
映画を動かすキーにもなっているペアリングをチョイス。
ラストに触れますので、
ここからは観た方のみお読みください。
↓ネタバレ注意
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主人公が恋人への依存を断ち切り、
大人になったように感じさせてくれた
『わたし達はおとな』のラスト。
本作でも主人公が目を背けていた現実に向き合い、
区切りをつけて新たな道に踏み出していく。
私にはタイトルの『ほつれる』が、
主人公を縛っていた自身の心や、
関係からの解放だと思えた。
2023年製作/84分/G/日本
配給:ビターズ・エンド
劇場公開日:2023年9月8日
予告編
映画ライター 尾鍋栄里子(おなべえりこ)
Twitter @onabe11
映画館バイト→雑誌映画担当→映画ライターと、人生の半分を映画業界の片隅で生きる名古屋人。
朝日新聞、中日新聞、フリーペーパーなどで映画紹介記事を執筆中。
映画フリーペーパー C2【シーツー】web版ブログ〝オー!ナイス!”不定期掲載