5/26(金)より公開中
『彼らが本気で編むときは』『川っぺりムコリッタ』で、深い人間ドラマを描いてきた荻上直子監督。
自身が「私の中の意地悪で邪悪な部分を全部投入したような映画になった」と言うだけあって、本作で描かれるのは人間の黒い感情。
新興宗教にすがり、降りかかる苦難を乗り越えようともがく主人公・須藤依子。
彼女の心に湧き上がる黒い感情が、波紋のように広がっていく様にゾクゾク。
とはいえ、どんな話でもユーモアを忘れないのが荻上監督。
今回もクスクス笑が込み上げるブラックなユーモアがたっぷり。
中でも新興宗教”緑命会”の信者のダンスはサイコー!
新興宗教にハマって心を浄化?している割に
あからさまに人を差別する依子、家族を捨てて出て行き病気になって帰ってくる夫、愛想はいいけど嫌味な隣人、タチの悪いスーパーの客、さらに九州のあの娘さえ、可憐そうに見えてなかなかの腹黒さで(笑)
一筋縄ではいかない嫌なヤツばかりが出てくるのも面白く。
クセものキャラクターに監督の意地悪で邪悪な部分を感じるけれど、表からではわからない、人間の悲しみにも想いを馳せるところに隠しきれない優しさが滲む。
依子を演じる筒井真理子をはじめ、キャストも通好みの実力派がズラリ。
ほとんど顔が映らないムロツヨシのチョイ役使いも贅沢。
さて今回の写真のアイテムは、らっきょうとおまんじゅう。
須藤家の食卓に出されるのが依子が漬けたらっきょう。
らっきょうを家で漬けてるところに依子の生真面目さが出ている気が。
そして親しくなった依子と清掃員が食べるおまんじゅう。
絶望の中にある依子にとって、木野花演じる清掃員との関係は唯一の希望。
毒を吐いて一緒に笑い、お互いの弱さもダメさも受け入れて助け合える。
そんな相手と繋がることは宗教よりも救いになる…と個人的には思ってる。
ここからはラストに触れてますので、まだ観ていない方はご注意を!
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劇中で何度も流れるリズムがフラメンコみたいだなと思っていたら、ラストシーンで依子がまさかのフラメンコ!
フラメンコを習っている身としてはかなり衝撃的でした(笑)
筒井真理子は2ヶ月ぐらいレッスンしてあのシーンに挑んだそうで。決して上手い踊りではないけれど、2ヶ月であの表現ができるなんて俳優って本当にすごい!
心震える快心のフラメンコでした。
2023年製作/120分/G/日本
配給:ショウゲート
映画ライター 尾鍋栄里子(おなべえりこ)
映画館バイト→雑誌映画担当→映画ライターと、人生の半分を映画業界の片隅で生きる名古屋人。 朝日新聞、中日新聞、フリーペーパーなどで映画紹介記事を執筆中。 映画フリーペーパー C2【シーツー】web版ブログ〝オー!ナイス!”不定期掲