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すれ違う男女のリアルな想いが胸に突き刺さる
『わたし達はおとな』
『勝手にふるえてろ』『寝ても覚めても』『愛がなんだ』など、数々の良作を手がけてきた名古屋のテレビ局「メ〜テレ」プレゼンツ。
次世代の映画監督と俳優たちを組み合わせ、才能を輩出するプロジェクト〝(NOT) HEROINE MOVIES”の第一弾。
監督はこれが長編映画デビュー作となる演出家・劇作家の加藤拓也。
主演に木竜麻生、共演に藤原季節を迎え、20代の男女が共に過ごした時間を描く。
惹かれあって一緒にいたはずなのに、お互いを傷つけ追い詰めて。
すれ違っていく2人の感情の動きが、ドキュメンタリーのようなリアルさで映し出され、覗き見をしているみたいな妙な気分に。
出会った頃の幸せな過去と、予想外の出来事によって気持ちがずれていく現在を交錯させる、
名作『ブルーバレンタイン』のような構成も秀逸で、2人の感情がぶつかり合うケンカのシーンは、『マリッジストーリー』ばりにすごかった!
相手の言葉に素で反応しているような木竜麻生と藤原季節の演技も、それを引き出し長回しで捉えた加藤拓也監督の演出も素晴らしく。
感情の繊細な揺れ動きが生々しく伝わって、観ているのが苦しいほど。
そこで今回の写真。
ケンカシーンに登場するグリーンピース…にしようかと思ったけど、マーマレード(らしきもの)を塗ったトースト、スクランブルエッグ、ソーセージの朝食に。
詳細はネタバレになっちゃうので、ここから先は映画を観た人のみ読んでください。
↓ ネタバレ注意
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映画の冒頭。
つわりで気分がすぐれない主人公の優実。
自分は食べる気になれないのに、同棲中の恋人・直哉のためにトーストを焼き、朝食を用意する。
そして映画の最後。
直哉が部屋を出て行った後、何か吹っ切るようにキッチンに立ち、卵をかき混ぜ、トーストを焼き、朝食を作りはじめる優実。
直哉との一度目の別れの時は、友だちに電話しまくったり、どうでもいい男と寝ちゃったり、若気の至りで色々しでかしてたけど、自分で別れを決断して、自分のために作った朝食を食べる。
エンドロールのその顔は、少しだけ大人になったように見えた。
エンドロールに流れる主題歌the engyの「Sugar & Cigarettes」も最高だった!
木竜麻生さんインタビューはこちら
[フォトdeシネマ]
映画ライター 尾鍋栄里子(おなべえりこ)
映画館バイト→雑誌映画担当→映画ライターと、人生の半分を映画業界の片隅で生きる名古屋人。
朝日新聞、中日新聞、フリーペーパーなどで映画紹介記事を執筆中。
映画フリーペーパー C2【シーツー】web版ブログ〝オー!ナイス!”不定期掲